リゾートバイトに来たら『ゾンビ島』でした

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1章 始まり

12.『不審者』だ!!!

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ヘイデンが勢いよくドアを開けると、そこにはリビングが広がっていた。壁はコンクリート、地面はフローリングとなっており、左には洗濯機、右には壁に沿ってキッチン台や食料が置かれている。
そして、正面奥にはダイニングテーブルと椅子が四つ机を囲んでいる。なんともシンプルで整頓された部屋だった。


だがヘイデンは首を傾げながら、不思議そうな表情をしていた。
「おかしいな…あいつ今日の予定なら、もうとっくに帰って来てる時間なのにな…」

そのままヘイデンは他の部屋の扉をノックしたりしてみたが、どうやらいないようだ。
「仕方ない、ちょっと様子を見てくるから…」とヘイデンが言いかけたところで、「おい!!待て!!」と外から大きな叫び声が聞こえてきたと同時に、「ガシャガシャン!」と大きな音が聞こえた。


ヘイデンは、日向たちに荷物を置くように指示し、何をするのかと思っていると、
「一緒に来てくれ!」
と日向たちも一緒にくるように催促した。




急いで先ほど見た階段から1階まで駆け降りると、
正面にあるフェンスが上から押されたようにへし曲がっていた…

さっき「フェンスが壊れない限り大丈夫だ」と聞いたのに、こんなにもタイミングよくフェンスが壊れるのだろうか…紫郎先輩の言ったようにやっぱりバリケードが欲しくなった…


「おい!!どうした!!」
フェンスのことは置いといて、遠くから走ってきている男性にヘイデンは声をかけた。

「不審者が現れたんだ!!」
その男は叫んだ。


すると、その男の後ろからヨタヨタと走ってくるゾンビ・・・が……      5体もいる!!!!

「まずい…奴らに見つかったのか…!!」
ヘイデンはゾンビの方を見ながら目を細めている。

「早く片付けないとフェンスの中に入られるのではないか!?」
紫郎も心配そうにヘイデンに聞くと、

「あぁ…!あっ!」

と、ヘイデンは何かを思い出したように左の腰につけていたホルスターから銃を取り出した


「あっ!!」
日向は見覚えがあるその銃を見て声をあげた!
そう、その銃は先ほど日向が5発撃った、いかりの刻印がついた銃だったのだ!


「これをバリーさんから預かっていたんだ。君がこの銃でバリーを助けたんだろう?ありがとう!」
とヘイデンからお礼を言われ、日向は少し嬉しくなった。

「だから、この銃を君に託す!一緒に戦ってくれ!!」
と日向の意見は聞かずに、突然銃を押し付けるように渡され、「あっえっ…」と日向は困惑した。まぁお礼を言うためだけに銃を出すのもおかしい話だが、まさかまた銃を扱うとは思っていなかった。

「日向の戦ってるところを近くで見れるのか!!楽しみだ!」
と紫郎も期待の目でこちらを見ている…

「わ、わかりました!」と日向も迷いを捨てて頷くと、ヘイデンも真剣な表情ながらニコッと笑った。

「この銃は15発入ってる。さっきはバリーがスライドを引いた状態で渡したらしいな…怪我していて仕方がなかったとはいえ、リスキーなことするよな…」
ヘイデンが顔をしかめながら首をすくめた。
「スライドって?」
「あぁ、本来ならスライドを引いて弾を装弾しないと銃が撃てないんだ。」
確かに、さっきは引き金を引くだけで銃を撃つことができた。見ず知らずの人間に銃を渡すこと自体がリスクのあることだと日向も銃を扱ってから気づいた。


「だから、今からスライドの引き方を教える。今後この銃じゃなくとも、ハンドガンを使うなら知っておく必要があるからな」
と言うと、簡単にヘイデンは日向にスライドの引き方を教えた。

「右手で銃を持ったら、左手で上の金属の部分だけを引くんだ、少し重いかもしれないが、慣れたらすぐできるさ。」
言われた通りに、日向はガッチャンとスライドを引いた。別に難しくはないが、そういえばドラマなどでこういうシーンを見たことがあったなと思い出した。

ヘイデンと日向は、へし曲がってしまったフェンスから外に出ると、ヘイデンは右の腰につけているホルスターからスパイラル状のストラップがついた、四角いシンプルな銃を取り出し、構えた。


すると、先ほど走ってきていた男はへし曲がったフェンスの手前で立ち止まると、右の太ももについているホルスターから、タクティカルナイフを取り出した。
「アーサー!手前のをたのむ!」
とヘイデンが言うと、彼は返事もなく
「ちっ」
と舌打ちをしながら、右手でナイフをぶん投げた!

 〈ブンッ〉

ナイフは風を切り、まっすぐにゾンビの頭に向かって飛んでいくと、15mほどの距離があるのにも関わらず、見事に頭に突き刺さった。

「すごいな!」
紫郎も感激の声を漏らしていた
だが、威力が足りなかったのか、ゾンビはふらついたが、その時点ではまだ倒れなかった。

それを見越してのことか、ゾンビの頭に1本目のナイフが刺さった一秒後には2本目のナイフがゾンビの頭に突き刺さっていた。
流石に2本もの鋭いナイフを喰らったゾンビは動きが止まり、後ろにバッタリと倒れた。


アーサーのナイフをなげる威力と命中率、さらには鋭い判断能力まで、全てが正確だった。

そんなすごい技を目の当たりにして驚いていた日向だったが、
「きてるぞ!」とアーサーに言われ、はっと我に帰った。

そうだった、紫郎と同じように見ていたが、自分は紫郎とは違い、銃でゾンビを倒すという仕事が与えられていたのだ…



先ほどヘイデンに教えてもらった時に、銃に弾は装弾していたので、あとは撃つだけだった。
「よし」

本日2度目の銃に少しずつ愛着が湧いてきた日向は、心の中で「頑張ろうね!」と銃に話しかけた。
銃は相変わらず雨上がりの雲一つない太陽に照らされ、ピカピカしていた。

     「「パァン」」
日向が撃つ前に、ヘイデンが撃った。

「1番右端の、足が遅いやつなら多分君でも撃てる。」
そうヘイデンに言われ、右端のゾンビを見た。

そのゾンビは女性のようで、ボサボサの髪の毛は肩くらいの長さまで伸びていた。
1度目のゾンビとは違って、体が細く当てずらいかと思ったが、距離はもう20mほどだ。うかうかしてられない


日向は、先ほど言われたことを思い出しながら、ゾンビに向かって銃を撃った。


「「パァン」」


今回は早速ゾンビの頬あたりを掠めた!幸先がいい!
日向は先ほどの成功体験を思い出しながら、みるみるうちに自分の中に自信が湧きその興奮を落ち着かせるように深呼吸した。



「「パァン」」


やった!2発目でなんと顔に当てることができたのだ!
だがゾンビはまだ倒れない。やはり頭に当てないといけないようだ…

慎重に狙った…今回はヘイデンやアーサーもいることで、日向の中に余裕や銃を楽しむ心が生まれていた。


「「パァン」」

3発目が放たれた!
その弾は見事、ゾンビの頭にあたり、後ろにバッタリと倒れた!!


「すごいな!3発でしとめたのか!」
「えへへ」
ヘイデンに誉められ、日向はさらに嬉しくなった。

波に乗っていた日向は、次のゾンビを…と思っていたが、
日向が1体のゾンビを倒している間に、アーサーとヘイデンの2人で2体倒し、その後すぐにヘイデンにより最後の1体も倒されたので、日向が出る幕はなかった。さすが軍人だ…


2人は早々に武器をホルスターに戻すと、颯爽とフェンスを乗り越え、内側に入った。


「あぁ…私も早く銃を撃ってみたい!」
日向たちがフェンスの内側に戻って来ると、紫郎が羨ましそうに日向の銃を見ていたので、日向も微笑んだ。


「そういえば、アーサー、さっき叫んでた不審者・・・って…?」
とヘイデンが聞くと、アーサーははっと思い出したようだ
「そうだ!あいつ!どこ行きやがった!!」

アーサーがそう叫ぶと、上から「ガラガラッ」と扉を開ける音が聞こえた。

全員で上を見ると、なんと!男が3号棟の窓から侵入しているのが見えた!!しかもその部屋は先ほど入った私たちの生活部屋だ!!


「くっそ!逃がさねぇ…!」と言うと、アーサーは一目散に3号棟に向かい走った。

「あっ!私たちのカバン!!」
そうだ、さっきあの部屋の机の上に2人の荷物を置いたんだ!

「2人は先に行っててくれ!」とヘイデンが言うので、日向と紫郎は自分の荷物のために3号棟の3階へ向かった。



_________________________________________________________


アーサーは全速力で走った。

午後1時、いつも通り仕事をし終え帰宅しようかと思っていると、突然足音が聞こえた。
アーサーは急いで木の影に隠れると、廃墟になった家から男が飛び出してきたのだ!

この島でこんな廃墟にいるのはゾンビしかいない。ナイフを投げようと太もものホルスターに手をかけていたが、その姿はどう見ても生きている人間であった。


軍服を着ているわけではなく、ただの一般人の服装のその男は、ふらふらとそのあたりの廃墟を徘徊している…
こんなことは初めてだったアーサーは流石に戸惑ったが、一応男の跡をつけていると、男の前にゾンビが現れた。

驚いた彼は、そのまま一目散に走り出したのだ!!


アーサーはそのまま彼を追っているうちに、彼がまっすぐ南区に向かっていることがわかった。
迷い込んでいる様だったのに、なぜ南区の方向がわかるのかは分からなかったが、危機を感じたアーサーは後ろから「おい!待て!!」と叫んだ。

だがこちらを振り向かず、彼は走り続けていた。そんなことをしているうちに、アーサーは後ろにゾンビが2体…3体と増え、5体ものゾンビを連れてきてしまったのだ。

奴がフェンスに乗り込んだところまでは見たが、そこから見失っていた。まさか壁を登るような野蛮な奴だとは…




が逃げる前に捕まえてやる!!
そう思い、左手にナイフを構えながら、3号棟の3階の自身の部屋の扉をバンッ!!と勢いよく入った!!


「おい!不審者!とうとう追い詰めたぞ!!」

そう叫びながら中に入ると、
隠れることもなく、先ほどまで追いかけていたは、まるで何事もなかったかのように勝手にリビングの椅子に座り、手に持った大きなおにぎりにかぶりついていたのだ…






☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡

ご覧いただき、ありがとうございました!
今回で新キャラが1人出てきましたね!追いかけていた男は誰なんでしょうか…

ファンタジー大賞頑張っているので、よければお気に入りやコメント、webコンテンツ大賞にて「『ゾンビ島』でリゾートバイトします!」に投票いただけましたらとてもありがたいです!

アルファポリスさん、いつも小説の管理、サイトの運営をしてくださり、本当にありがとうございます。

読者の皆様、いつもご覧くださり、本当にありがとうございます!まだまだ物語あるので、みなさんに楽しんでいただけるように頑張ります!
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