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第12話: 魔王様のお気に入り(フェリス視点)
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私はダルク様の忠実な従者として、長い間、彼のおそばに仕えてきた。
これまでの彼は冷徹で、他者に心を開くことなど滅多になかった。
ただ人との距離をうまく取れない不器用さが招いたことだろうけれど。
そんな彼に変化がおきたのは、異界から来た陽太様と出会ってからだ。
陽太様が魔王城に来てからというもの、ダルク様はまるで別人のようだった。
彼らが会話するたびに、まるで子供のように互いに張り合い、時には喧嘩をしているようにさえ見える。
けれど、その喧嘩の中には、これまでのダルク様にはなかった「温かさ」が感じられるのだ。
ある日、陽太様が一度城を出たいと言い出し、ダルク様が珍しく声を荒げて反対していた。
「お前が外に出たら、何が起こるかわからん。ここにいろ」
「でもさ、ずっと城に閉じこもってるのは飽きるっていうか…もう少しぐらい自由にさせてくれ!」
陽太様は眉をひそめ、ダルク様に食い下がる。
その態度にダルク様はさらに不機嫌そうな顔をしていたが、内心では心配しているのが伝わってくる。私は思わず微笑んでしまった。
「ふふ、陽太様、ダルク様はただあなたを心配しているだけなのです」
私がそう口にすると、陽太様は一瞬驚いた表情を浮かべ、ダルク様をじっと見つめた。
「そっか…心配してくれてるのか。でも、そんな言い方されたら、素直に受け取れないって」
陽太様のぼやきに、ダルク様はさらに視線をそらしながら小さく「余計なことを言うな、フェリス」と呟いた。その不器用なやりとりが、微笑ましい。
二人は日々の小さなことをきっかけに喧嘩したり笑ったりしながら、共に過ごしている。ダルク様は、陽太様がどれだけ怒っても、絶対に彼をそばから離そうとしないし、陽太様もまた、そんなダルク様のことを心の底では信頼しているのがわかる。
それでも、ダルク様はまだ自分の気持ちをうまく言葉にできない様子だ。
陽太様が城の者たちと親しく話しているのを見るたび、どこか寂しそうな表情を浮かべることがある。そんな彼の姿を見て、二人の幸せのため行動せねばと心を新たにした。
夜になり、ふとした隙に二人が肩を並べて城内を歩いているのを見かけた。
小さな言い争いを続けながらも、いつの間にか言葉が途切れ、静かな沈黙が訪れている。
「…陽太」
ダルク様が小さく陽太様の名を呼ぶと、彼は振り返り、ダルク様をじっと見つめた。
その視線に、ダルク様の表情が少し和らいだ気がする。
「ずっと、俺のそばにいろ」
その言葉は、まるで告白のように響き、陽太様の顔が少し赤くなる。
彼もまた微笑みながら小さく頷いた。
二人の姿を見守る私は、心の底から幸せな気持ちで満たされた。
ダルク様がこんなにも誰かを大切に思い、守ろうとする姿を見られる日が来るとは思わなかった。
「本当に…良かったですね、ダルク様」
私はそう呟きながら、彼らの姿を最後まで見守ることを誓った。
これまでの彼は冷徹で、他者に心を開くことなど滅多になかった。
ただ人との距離をうまく取れない不器用さが招いたことだろうけれど。
そんな彼に変化がおきたのは、異界から来た陽太様と出会ってからだ。
陽太様が魔王城に来てからというもの、ダルク様はまるで別人のようだった。
彼らが会話するたびに、まるで子供のように互いに張り合い、時には喧嘩をしているようにさえ見える。
けれど、その喧嘩の中には、これまでのダルク様にはなかった「温かさ」が感じられるのだ。
ある日、陽太様が一度城を出たいと言い出し、ダルク様が珍しく声を荒げて反対していた。
「お前が外に出たら、何が起こるかわからん。ここにいろ」
「でもさ、ずっと城に閉じこもってるのは飽きるっていうか…もう少しぐらい自由にさせてくれ!」
陽太様は眉をひそめ、ダルク様に食い下がる。
その態度にダルク様はさらに不機嫌そうな顔をしていたが、内心では心配しているのが伝わってくる。私は思わず微笑んでしまった。
「ふふ、陽太様、ダルク様はただあなたを心配しているだけなのです」
私がそう口にすると、陽太様は一瞬驚いた表情を浮かべ、ダルク様をじっと見つめた。
「そっか…心配してくれてるのか。でも、そんな言い方されたら、素直に受け取れないって」
陽太様のぼやきに、ダルク様はさらに視線をそらしながら小さく「余計なことを言うな、フェリス」と呟いた。その不器用なやりとりが、微笑ましい。
二人は日々の小さなことをきっかけに喧嘩したり笑ったりしながら、共に過ごしている。ダルク様は、陽太様がどれだけ怒っても、絶対に彼をそばから離そうとしないし、陽太様もまた、そんなダルク様のことを心の底では信頼しているのがわかる。
それでも、ダルク様はまだ自分の気持ちをうまく言葉にできない様子だ。
陽太様が城の者たちと親しく話しているのを見るたび、どこか寂しそうな表情を浮かべることがある。そんな彼の姿を見て、二人の幸せのため行動せねばと心を新たにした。
夜になり、ふとした隙に二人が肩を並べて城内を歩いているのを見かけた。
小さな言い争いを続けながらも、いつの間にか言葉が途切れ、静かな沈黙が訪れている。
「…陽太」
ダルク様が小さく陽太様の名を呼ぶと、彼は振り返り、ダルク様をじっと見つめた。
その視線に、ダルク様の表情が少し和らいだ気がする。
「ずっと、俺のそばにいろ」
その言葉は、まるで告白のように響き、陽太様の顔が少し赤くなる。
彼もまた微笑みながら小さく頷いた。
二人の姿を見守る私は、心の底から幸せな気持ちで満たされた。
ダルク様がこんなにも誰かを大切に思い、守ろうとする姿を見られる日が来るとは思わなかった。
「本当に…良かったですね、ダルク様」
私はそう呟きながら、彼らの姿を最後まで見守ることを誓った。
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