5 / 14
第4話: もしかして守られてる?
しおりを挟む
今日も部屋でぼんやりしていた。
こっちに来てもう何日経ったのかわからないが、俺は相変わらず部屋にいる。
外に出たくても出してもらえないし、あの冷たい魔王の監視の目がいつもあるせいで、だんだんやる気も気力も失われてくる。
募るのは何もできない焦燥感と、魔王への不信感だけだ。
俺はただ、普通に過ごしたいだけなのに、なんでこんな扱いをされなきゃいけないんだよ…。
モヤモヤした気持ちでクッションを抱きしめていると、ドアの向こうから控えめなノック音が聞こえた。
ノックがあるということは、魔王ではないだろう。
こんな判別方法ができるほど日常になったとはと苦笑いが込み上げる。
魔王以外の訪問者なんて珍しいので、少し不思議に思いながらも「どうぞ」と声をかけると、入ってきたのは小柄な獣人だった。
「陽太様、はじめまして!フェリスと申します!」
元気よく自己紹介してくるこの獣人は、耳としっぽが特徴的で、愛嬌のある笑顔を浮かべている。嬉しそうに尻尾をブンブン振る姿はまさに犬だ。獣人だけど。
ふわふわの茶色の毛に、優しそうな緑の瞳がなんとも庇護欲をそそる感じ。
最初の時に見たガタイのいい獣人たちとは対照的な可愛いタイプだった。
魔王城でもこんな可愛い子もいるんだな。
「ダルク様から、陽太様を見守るようにと命じられました!何かご不便があれば、私にお知らせいただければと」
フェリスはそう言い、こちらを伺いながら軽く頭を下げる。
「見守る…?ダルクさんって、俺のこと監視したいんじゃなかったの?」
腑におちなくて俺がぽつりと漏らすと、フェリスはにっこりと笑った。
「いえ監視なんて!……確かに今の状況では、そう感じられるかもしれませんよね。ダルク様は少々不器用なところがございますので、気持ちをうまく伝えられないのです」
フェリスが耳と尻尾を下げて申し訳なさそうにしている。
こんな反応されたら、なんだかこっちが悪い気がしてくるが、やはり納得はいかない。
あの冷たくて近寄りがたい魔王の態度が不器用なだけなの?にわかには信じがたい。
俺が表情を曇らせると、フェリスはすかさず「ダルク様はとても素晴らしい方なんですよ!」といった。
魔王のことを嬉しそうに話すフェリスの屈託ない笑顔を見ていると、ほんの少しだけ疑念が和らいでいくような気もする。
「もしかしてフェリスって、ダルクさんの…?」
「はい、ダルク様の従者をしております。彼が幼い頃からずっとお仕えしているので、ダルク様のことは誰よりも理解しているつもりですよ!」
そう言って、誇らしげに胸を張っている姿もまさに…。自信満々の仕草がどこか微笑ましく和む。
あれだけ冷酷で無表情な魔王でも、こんな慕っている部下がいるんだなと思うと、少しは彼に対する見方も変わってくるかもしれない。
「ダルク様、普段は少し言葉足らずですが、実はとてもお優しい方なのです」
フェリスは穏やかな笑みを浮かべて言った。
言わされてるとかじゃない。本当にそう思っていなければできない笑みだとは思う。
「優しいって…俺には全然そうは思えないけど」
「そう感じられるのも無理はありません。ダルク様はご自分の気持ちを表現するのが苦手で、誤解されることも多いのです。ただ、もう少しだけ嫌わずダルク様を観察してみていただけませんか?少しずつでも本当のお姿を知っていただけたら、私としても嬉しい限りです」
フェリスはきっと俺に魔王を好きになって欲しいのだろう。
魔王を信じて疑わない、そんな純粋な想いが痛いほど伝わってくる。
「フェリスって結構無茶言うね」
でも、フェリスの柔らかい言葉に、モヤモヤしていた気持ちが少しだけほぐれた気がした。
こっちに来てもう何日経ったのかわからないが、俺は相変わらず部屋にいる。
外に出たくても出してもらえないし、あの冷たい魔王の監視の目がいつもあるせいで、だんだんやる気も気力も失われてくる。
募るのは何もできない焦燥感と、魔王への不信感だけだ。
俺はただ、普通に過ごしたいだけなのに、なんでこんな扱いをされなきゃいけないんだよ…。
モヤモヤした気持ちでクッションを抱きしめていると、ドアの向こうから控えめなノック音が聞こえた。
ノックがあるということは、魔王ではないだろう。
こんな判別方法ができるほど日常になったとはと苦笑いが込み上げる。
魔王以外の訪問者なんて珍しいので、少し不思議に思いながらも「どうぞ」と声をかけると、入ってきたのは小柄な獣人だった。
「陽太様、はじめまして!フェリスと申します!」
元気よく自己紹介してくるこの獣人は、耳としっぽが特徴的で、愛嬌のある笑顔を浮かべている。嬉しそうに尻尾をブンブン振る姿はまさに犬だ。獣人だけど。
ふわふわの茶色の毛に、優しそうな緑の瞳がなんとも庇護欲をそそる感じ。
最初の時に見たガタイのいい獣人たちとは対照的な可愛いタイプだった。
魔王城でもこんな可愛い子もいるんだな。
「ダルク様から、陽太様を見守るようにと命じられました!何かご不便があれば、私にお知らせいただければと」
フェリスはそう言い、こちらを伺いながら軽く頭を下げる。
「見守る…?ダルクさんって、俺のこと監視したいんじゃなかったの?」
腑におちなくて俺がぽつりと漏らすと、フェリスはにっこりと笑った。
「いえ監視なんて!……確かに今の状況では、そう感じられるかもしれませんよね。ダルク様は少々不器用なところがございますので、気持ちをうまく伝えられないのです」
フェリスが耳と尻尾を下げて申し訳なさそうにしている。
こんな反応されたら、なんだかこっちが悪い気がしてくるが、やはり納得はいかない。
あの冷たくて近寄りがたい魔王の態度が不器用なだけなの?にわかには信じがたい。
俺が表情を曇らせると、フェリスはすかさず「ダルク様はとても素晴らしい方なんですよ!」といった。
魔王のことを嬉しそうに話すフェリスの屈託ない笑顔を見ていると、ほんの少しだけ疑念が和らいでいくような気もする。
「もしかしてフェリスって、ダルクさんの…?」
「はい、ダルク様の従者をしております。彼が幼い頃からずっとお仕えしているので、ダルク様のことは誰よりも理解しているつもりですよ!」
そう言って、誇らしげに胸を張っている姿もまさに…。自信満々の仕草がどこか微笑ましく和む。
あれだけ冷酷で無表情な魔王でも、こんな慕っている部下がいるんだなと思うと、少しは彼に対する見方も変わってくるかもしれない。
「ダルク様、普段は少し言葉足らずですが、実はとてもお優しい方なのです」
フェリスは穏やかな笑みを浮かべて言った。
言わされてるとかじゃない。本当にそう思っていなければできない笑みだとは思う。
「優しいって…俺には全然そうは思えないけど」
「そう感じられるのも無理はありません。ダルク様はご自分の気持ちを表現するのが苦手で、誤解されることも多いのです。ただ、もう少しだけ嫌わずダルク様を観察してみていただけませんか?少しずつでも本当のお姿を知っていただけたら、私としても嬉しい限りです」
フェリスはきっと俺に魔王を好きになって欲しいのだろう。
魔王を信じて疑わない、そんな純粋な想いが痛いほど伝わってくる。
「フェリスって結構無茶言うね」
でも、フェリスの柔らかい言葉に、モヤモヤしていた気持ちが少しだけほぐれた気がした。
1
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる