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第4話: もしかして守られてる?

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 今日も部屋でぼんやりしていた。
 こっちに来てもう何日経ったのかわからないが、俺は相変わらず部屋にいる。
 外に出たくても出してもらえないし、あの冷たい魔王の監視の目がいつもあるせいで、だんだんやる気も気力も失われてくる。
 募るのは何もできない焦燥感と、魔王への不信感だけだ。

 俺はただ、普通に過ごしたいだけなのに、なんでこんな扱いをされなきゃいけないんだよ…。

 モヤモヤした気持ちでクッションを抱きしめていると、ドアの向こうから控えめなノック音が聞こえた。

 ノックがあるということは、魔王ではないだろう。
 こんな判別方法ができるほど日常になったとはと苦笑いが込み上げる。

 魔王以外の訪問者なんて珍しいので、少し不思議に思いながらも「どうぞ」と声をかけると、入ってきたのは小柄な獣人だった。

「陽太様、はじめまして!フェリスと申します!」

 元気よく自己紹介してくるこの獣人は、耳としっぽが特徴的で、愛嬌のある笑顔を浮かべている。嬉しそうに尻尾をブンブン振る姿はまさに犬だ。獣人だけど。
 ふわふわの茶色の毛に、優しそうな緑の瞳がなんとも庇護欲をそそる感じ。
 最初の時に見たガタイのいい獣人たちとは対照的な可愛いタイプだった。

 魔王城でもこんな可愛い子もいるんだな。

「ダルク様から、陽太様を見守るようにと命じられました!何かご不便があれば、私にお知らせいただければと」

 フェリスはそう言い、こちらを伺いながら軽く頭を下げる。

「見守る…?ダルクさんって、俺のこと監視したいんじゃなかったの?」

 腑におちなくて俺がぽつりと漏らすと、フェリスはにっこりと笑った。

「いえ監視なんて!……確かに今の状況では、そう感じられるかもしれませんよね。ダルク様は少々不器用なところがございますので、気持ちをうまく伝えられないのです」

 フェリスが耳と尻尾を下げて申し訳なさそうにしている。
 こんな反応されたら、なんだかこっちが悪い気がしてくるが、やはり納得はいかない。

 あの冷たくて近寄りがたい魔王の態度が不器用なだけなの?にわかには信じがたい。

 俺が表情を曇らせると、フェリスはすかさず「ダルク様はとても素晴らしい方なんですよ!」といった。

 魔王のことを嬉しそうに話すフェリスの屈託ない笑顔を見ていると、ほんの少しだけ疑念が和らいでいくような気もする。

「もしかしてフェリスって、ダルクさんの…?」

「はい、ダルク様の従者をしております。彼が幼い頃からずっとお仕えしているので、ダルク様のことは誰よりも理解しているつもりですよ!」

 そう言って、誇らしげに胸を張っている姿もまさに…。自信満々の仕草がどこか微笑ましく和む。
 あれだけ冷酷で無表情な魔王でも、こんな慕っている部下がいるんだなと思うと、少しは彼に対する見方も変わってくるかもしれない。

「ダルク様、普段は少し言葉足らずですが、実はとてもお優しい方なのです」

 フェリスは穏やかな笑みを浮かべて言った。
 言わされてるとかじゃない。本当にそう思っていなければできない笑みだとは思う。

「優しいって…俺には全然そうは思えないけど」

「そう感じられるのも無理はありません。ダルク様はご自分の気持ちを表現するのが苦手で、誤解されることも多いのです。ただ、もう少しだけ嫌わずダルク様を観察してみていただけませんか?少しずつでも本当のお姿を知っていただけたら、私としても嬉しい限りです」

 フェリスはきっと俺に魔王を好きになって欲しいのだろう。
 魔王を信じて疑わない、そんな純粋な想いが痛いほど伝わってくる。

「フェリスって結構無茶言うね」

 でも、フェリスの柔らかい言葉に、モヤモヤしていた気持ちが少しだけほぐれた気がした。
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