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第1話: 人間は初めてですか?
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煌びやかなシャンデリアが天井から吊り下がり、豪華な装飾が施された広間。真っ赤なテーブルクロスがかけられ、見たこともない色とりどりの料理が並んでいる。
俺は、その20人がけくらいの大きなテーブルの真ん中に置かれた皿の上で、ぽかんと座っていた。
大事なことだからもう一度言うけど、皿の上に座っているのが、俺。
どんな状況だよ、これ。
「この珍妙な生き物なんですがね。ウマいらしいのですが、どう食べればいいのかわからず、とりあえず皿に乗せてみました……!」
聞き覚えのある声がして顔を上げると、公園で聞こえたあの声の主らしき姿が目に入った。
長い帽子に白い服を着た垂れ耳の獣人。まるで動物が二本足で立っているみたいで、尻尾が下に丸まっているところもなんだか可愛らしい。
妙にでかいし、見た目はガタイのいい大人の男って感じだけど、なんだろうな、この違和感。
獣人って、実在したっけ?物語とかでは見るけど、まさか本当にいるなんて。17年間、普通に高校生やってきたけど、日本にはいなかったはずだよな…?
俺が働かない頭でそんなことを考えていると、獣人たちの間でさらに話が進んでいく。
「うむ。見たことのない生物のようだな。とてもウマそうには見えん。服まで着ているし。まさか我々以外に服を作るほどの知能を持った生物が存在したのか!?」
今度は硬そうな鎧をつけた獣人が、俺の服をつまんで引っ張ってきた。そのもさもさした毛が服越しに伝わってきて、夢とは思えないほどリアルな感触。
いや、これ夢なのか?
「そんなものがいるなど聞いたこともありません。これを飼っている主が着せているのでは?」
「主がいるなら食するのはまずいだろう」
「しかし、それではパーティーのメインが!!」
俺を挟んで2人の獣人が困ったように話し合っている。毛がもさもさで表情はわからないけど、声のトーンはどことなく深刻そうだ。
でも、二人のやり取りを見てると真剣なのかふざけてるのか、笑いがこみ上げてきそうになる。
夢って、願望が出るって聞くけど、動物にペット扱いされたいなんて思ってたのか俺?
最近、勉強とバイトで疲れてたけど、ここまで癒しを求めてたとは思わなかった…。
「主がいるなら、どこかに所有の札が付いているはずだろう。服を脱がして確かめるか」
「それはいいですね。動かないように固定をお願いします」
そう言うなり、鎧の獣人が後ろから俺をがっちりホールド。白い服の獣人は青い手袋のようなものを装着して、どうやら二人がかりで俺の服を脱がせるつもりらしい。
…いや、これ、どんだけ特殊な願望なんだ俺。
背中に感じる鎧の冷たさと、横から回ってくるもふもふの手があったかい。そして不思議な香りまで漂ってきて、なんだか夢のはずなのにリアルすぎる。
「この服、随分精巧に作られていますね…。この留め具を外すのは難しいかもしれません」
留め具って…襟のボタンのこと?確かにその大きな手じゃ無理だろうけど、服の上から撫で回すのはやめてくれ。
ソフトタッチすぎて笑いが止まらなくなりそうだ。
「あっはは、ちょ、やめて、俺、こんなの望んでないからぁぁーーー!」
笑いと叫び声が室内に響いた。俺の声に驚いたのか、獣人たちは勢いよく離れていく。なんかもう、動物がびっくりして逃げるときのアレそのものだ。
「「しゃべった…!」」
どうやら驚いてるらしい。ていうか、なんで俺がしゃべれないと思われてたんだ?
「ど、どどどうなっている!?我々以外に言葉を話せるものなどいないはずだろう!?こいつは何者だ!?」
「わかりません!私はアイテムボックスから取り出しただけなので…」
その答えに、広い部屋の隅に逃げたままの二人がぷるぷる震えている。大きな身体してるのに、なんでこんなにビビりなんだろう。動物の怯える姿に似ていて、なんだか気の毒になってきた。
「あの…大丈」
「メインディッシュどころじゃない!すぐにこいつを隠すのだ!!」
あ、これ俺、隠蔽されるやつ?
まさか、このまま攻撃とかされないよなーー?
俺と獣人たちの間に、微妙な沈黙と睨み合いが始まった、その時。
「お前たち騒がしいぞ。何をしている?」
扉の前に立っているのは、どう見ても厨房が似合わない、いかつい風貌の男性だった。
自己紹介されなくてもわかる。この人たぶん魔王だーーー。
俺は、その20人がけくらいの大きなテーブルの真ん中に置かれた皿の上で、ぽかんと座っていた。
大事なことだからもう一度言うけど、皿の上に座っているのが、俺。
どんな状況だよ、これ。
「この珍妙な生き物なんですがね。ウマいらしいのですが、どう食べればいいのかわからず、とりあえず皿に乗せてみました……!」
聞き覚えのある声がして顔を上げると、公園で聞こえたあの声の主らしき姿が目に入った。
長い帽子に白い服を着た垂れ耳の獣人。まるで動物が二本足で立っているみたいで、尻尾が下に丸まっているところもなんだか可愛らしい。
妙にでかいし、見た目はガタイのいい大人の男って感じだけど、なんだろうな、この違和感。
獣人って、実在したっけ?物語とかでは見るけど、まさか本当にいるなんて。17年間、普通に高校生やってきたけど、日本にはいなかったはずだよな…?
俺が働かない頭でそんなことを考えていると、獣人たちの間でさらに話が進んでいく。
「うむ。見たことのない生物のようだな。とてもウマそうには見えん。服まで着ているし。まさか我々以外に服を作るほどの知能を持った生物が存在したのか!?」
今度は硬そうな鎧をつけた獣人が、俺の服をつまんで引っ張ってきた。そのもさもさした毛が服越しに伝わってきて、夢とは思えないほどリアルな感触。
いや、これ夢なのか?
「そんなものがいるなど聞いたこともありません。これを飼っている主が着せているのでは?」
「主がいるなら食するのはまずいだろう」
「しかし、それではパーティーのメインが!!」
俺を挟んで2人の獣人が困ったように話し合っている。毛がもさもさで表情はわからないけど、声のトーンはどことなく深刻そうだ。
でも、二人のやり取りを見てると真剣なのかふざけてるのか、笑いがこみ上げてきそうになる。
夢って、願望が出るって聞くけど、動物にペット扱いされたいなんて思ってたのか俺?
最近、勉強とバイトで疲れてたけど、ここまで癒しを求めてたとは思わなかった…。
「主がいるなら、どこかに所有の札が付いているはずだろう。服を脱がして確かめるか」
「それはいいですね。動かないように固定をお願いします」
そう言うなり、鎧の獣人が後ろから俺をがっちりホールド。白い服の獣人は青い手袋のようなものを装着して、どうやら二人がかりで俺の服を脱がせるつもりらしい。
…いや、これ、どんだけ特殊な願望なんだ俺。
背中に感じる鎧の冷たさと、横から回ってくるもふもふの手があったかい。そして不思議な香りまで漂ってきて、なんだか夢のはずなのにリアルすぎる。
「この服、随分精巧に作られていますね…。この留め具を外すのは難しいかもしれません」
留め具って…襟のボタンのこと?確かにその大きな手じゃ無理だろうけど、服の上から撫で回すのはやめてくれ。
ソフトタッチすぎて笑いが止まらなくなりそうだ。
「あっはは、ちょ、やめて、俺、こんなの望んでないからぁぁーーー!」
笑いと叫び声が室内に響いた。俺の声に驚いたのか、獣人たちは勢いよく離れていく。なんかもう、動物がびっくりして逃げるときのアレそのものだ。
「「しゃべった…!」」
どうやら驚いてるらしい。ていうか、なんで俺がしゃべれないと思われてたんだ?
「ど、どどどうなっている!?我々以外に言葉を話せるものなどいないはずだろう!?こいつは何者だ!?」
「わかりません!私はアイテムボックスから取り出しただけなので…」
その答えに、広い部屋の隅に逃げたままの二人がぷるぷる震えている。大きな身体してるのに、なんでこんなにビビりなんだろう。動物の怯える姿に似ていて、なんだか気の毒になってきた。
「あの…大丈」
「メインディッシュどころじゃない!すぐにこいつを隠すのだ!!」
あ、これ俺、隠蔽されるやつ?
まさか、このまま攻撃とかされないよなーー?
俺と獣人たちの間に、微妙な沈黙と睨み合いが始まった、その時。
「お前たち騒がしいぞ。何をしている?」
扉の前に立っているのは、どう見ても厨房が似合わない、いかつい風貌の男性だった。
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