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1.発端:家政婦は聞いた
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門扉のある方向から、ばたんという音が聞こえた。郵便受けの蓋が閉まる音だ。
住み込み家政婦の脇尾真礼は、変だなと感じつつも、洗い物の手を止めずにいた。済ませてから取りに行こう。
約三分後、最後の食器の汚れを長し終わり、食器乾燥機に置く。手を拭きながら、冷蔵庫の横の柱に吊された、ストップウォッチ機能付きのデジタル時計に目をやる。
午後一時十五分。やはり、いつもと違う。
平日に郵便配達があるとすれば、ほぼ百パーセント、午前十一時過ぎに来る。それも大抵、バイクのエンジン音を響かせて。
今日、朝の配達はなかったから何かの理由で送れていた可能性もあり得るが、でも、今の投函の前後に、バイクの音はしなかった。免許のない学生のアルバイトが自転車で来たのだろうか。
若干、訝しみながらも脇尾はつっかけを履いて、勝手口を出ると、郵便受けへと急いだ。明日はここ安生寺家の当主である安生寺洋の誕生日で、ちょっとしたパーティが予定されている。ぼちぼち人が集まり出すし、準備でこのあと忙しくなるのは間違いないだけに、脇尾は早く休憩を取っておきたかった。
脇尾は郵便受けの裏から投函物を取り出した。味も素っ気もない白い事務封筒一つが出て来た。
裏、表と見て、嫌な感覚がさーっと背筋を走った。宛名も差出人もない。ただ、普通なら宛名を書くところに、角張った線で「セイキュウショ」と直に書かれていた。さらに封がされてなくて、ベロが折られているだけであった。
まだ若い脇尾真礼は、安生寺家に仕え始めてから二年と少し過ぎた頃合いである。前任者が高齢を理由に辞めるに当たり、直に会って注意事項を色々と引き継いだ。その中の一つに、「安生寺家の成功を妬んでいる輩がいて、脅迫状めいた物が舞い込むことが希にあった。もう十年ぐらい来ていないし、来ても口先ばかりで、その次の段階に進んだ犯罪はなかったから、さほど気にする必要はない」という話があった。確かにこの二年あまり、怪しげな物が配達されることはなく、注意事項についても忘れかけていた。
いざ届いてみると、ここまで嫌な感じを受ける物だったなんて。素手で触るのも気味が悪くなり、前掛けに着いている大きめのポケットに滑り込ませて、邸宅の中に駆け戻った。
いつもであれば、主たる安生寺洋は出勤しているが、今日は在宅だ。誕生日を挟んで三日間の休みを取るのが通例となっている。なお、二人いる子供も今日が小学校の開校記念日で休みのため、安生寺家にとって団らんするのに都合がよい。
脇尾は彼がいるであろう書斎に向かって、ぱたぱたと小走りで急いだ。
閉ざされたドアの前で立ち止まり、一呼吸置いてから慎ましやかにノックする。そして彼女が名乗るよりも早く、中から「誰?」という声が返って来た。
「脇尾です。配達をお持ちしたのですが」
「真礼さんか。開いてるから入っていいよ」
年齢の割に気さくな言葉遣いの安生寺洋は、大きな黒いデスクに覆い被さるようにして、何かしていた。顔を起こすときにちらっと見えたところでは、時計を分解・修理している様子だった。
「動かなくなった懐中時計があったのを思い出してね。直せるかなと、とりあえず開けてみたんだが、なかなかの難物で」
「あの、旦那様」
「おっとすまない。郵便はどこかソファの上にでも放っておいてくれ。あとで見る」
「それが……」
「ん? 何か急ぎの物らしき手紙でもあったのかね?」
どう切り出していいのか考えあぐねる脇尾に、安生寺は察しよく応じた。
「急ぎといいますか、不気味なのが一通だけ」
「ああ、脅迫文か? 久しぶりだな。いいよ、無視で。そういや、真礼さんは初めてだったか、その手のを受け取るのって」
「は、はい。中はもちろん見ていませんが、嫌な予感がいたします。宛名のところに『セイキュウショ』と書いてあって」
「請求書か。脅し文句や恨み辛みなら今までたくさんあったが、即物的に請求書とは初めての手口だな。どれ、見せてごらん」
封筒をようやく手放すことができて、ほっとする脇尾。
受け取った安生寺は、封筒を顔からちょっと離し、「セイキュウショ」の文字に目を細めた。分解途中の時計を机の真ん中へ押しやると、封筒を開け、ふっと息を吹き込んでから、中身を取り出す。
出て来たのは、縦に幾度か織り込まれた、便せんだった。脇尾のいる位置からは、しかとは見えないものの、表書きと同様、角張った文字が連ねてあることは分かった。
「――何だと」
突然、凄みの宿った安生寺の声。脇尾はいきなりだったこともあり、ぞくりと身震いした。
「真礼さん。こいつを郵便受けに入れた奴を見なかったか?」
「は、はい。見ておりません。台所で炊事をしているときに、音が聞こえたものですから。洗い物を終わらせてから、取りに」
「それはいつのことだ?」
「は、だいたい一時十五分頃のことです」
安生寺は左袖をまくって腕時計に目線を落とす仕種をすると、わずかに唇を噛み、「念のため、近所を見てきてくれ。投函した奴がいるかもしれない。ただし、探していることは態度になるべく出すな。それと、くれぐれも注意するんだ」といつにない強い調子で命じてきた。
「一体何と」
文面が気になって思わず問い返した脇尾だったが、「早くしてくれ」と鋭く言われ、書斎を退散した。
投函が一時十五分だとして、今はすでに五分以上経過しているだろう。悪意のある手紙なら、投じてすぐに立ち去るのが常識。五分も経っていたら“犯人”を見付けるのはまず無理。
(それくらい、旦那様もご承知でしょうに……)
首を傾げつつ、外に出る。洗濯物を飛ばされた風を装って、額に手で庇を作り、時折立ち止まっては背伸びして、辺りを窺ってみた。
(もしかしたら旦那様、愉快犯だと考えたのかもしれない。だったら、どこかで見ている可能性があると考えても全然おかしくないわ)
脇尾は真剣に探したが、普段見掛けないような怪しい人物や車なんかは、まるでなかった。それどころか、近所の顔見知りの人さえ、見当たらない。
邸宅の前と後ろ、両サイドの道を見て回って、三分強。成果がないまま、脇尾は戻り、主の部屋に直行した。開け放たれたままのドアの隙間から姿を見せ、「だめでした。誰もいません」と報告する。
安生寺はびくりと肩を震わせてから、「そうか。いや、悪かったね」と一応のねぎらいの言葉を掛けてくれた。それからまた多少考える時間を取る。脇尾はいるべきか立ち去るべきか迷うのだが、安生寺が何やら物言いたげに見える。しばらく待ってみると、
「ドア、閉めて。君は中へ」
「あ、はい」
書斎に入り、ドアを閉めると、「鍵も掛けてくれ」と言われたのでその通りにする。
親子ほど年齢の離れた他人の男性と二人きりというシチュエーションは、これまでこの邸内でもよそでもなかったことだが、不思議と緊張はしない。それだけ、封筒の中身が気になっていた。
「真礼さん。今、この家にいるのは私と君と……?」
「奥様は午睡を取られています。他には坂藤様、星名様、千ヶ沼様と、あと、外園様が一旦、煙草をお吸いに出られましたが、時間から見てお戻りになっていると思います。他に、ご親戚筋の方が何名か、私の知らない内にお上がりになっていますが、正確なところは把握できていません」
「こ、子供達は。特に、琢馬はいるか?」
「お二人ともお昼のあと、遊びに出かけられて、お帰りになっていないと思います」
この段階で、脇尾は安生寺の表情が通常よりも白みがかっていると気付いた。そして子供の居場所を気にしている……想像が一つ浮かんだが、非常に悪い内容なのでおいそれと口にできない。
ところが。
「真礼さん。あなたもこの家の一員として、否応なしに巻き込まれる」
安生寺が厳しい表情で言い始めた。
「だから早めに知らせておこうと思う。さっきあなたが持って来た封筒の内容は、琢馬をさらったというものだった」
「え。そ、そうだったんですか」
浮かんだ想像の通りだったが、それでも驚いてしまう。近くにあった棚の側面に触れて気をしっかり持とうとする。
「誘拐だなんて、本当なのでしょうか。琢馬君の端末に電話を掛けるか、メールを送るかされましたか?」
「掛けてみた。さっき、真礼さんに外を見てもらっている間にな。だが、呼び出し音が鳴るばかりで、誰も出ない」
少なくとも、電話に出られない何かが起きている。それは単に携帯端末を落としただけかもしれないし、遊びに夢中で気付かないでいる可能性もゼロではない。だけど、誘拐を示唆する手紙が郵便受けに放り込まれたタイミングを考慮すれば、残念ながら誘拐は現実に起きていると見なさざるを得ない。
「……警察へは?」
「そこなんだが、手紙、いや、脅迫文には決まり文句が書かれていたのだ。警察には知らせるな、違えたときは琢馬の安全は保証しかねる、と」
問題の封筒は、机の真ん中に置かれている。便せんは元通りに折り畳んで、封筒に入れたようだ。
「旦那様は、通報しないおつもりなのですか」
「その通りだ」
父親は苦しげではあったが、言い切った。
続く
住み込み家政婦の脇尾真礼は、変だなと感じつつも、洗い物の手を止めずにいた。済ませてから取りに行こう。
約三分後、最後の食器の汚れを長し終わり、食器乾燥機に置く。手を拭きながら、冷蔵庫の横の柱に吊された、ストップウォッチ機能付きのデジタル時計に目をやる。
午後一時十五分。やはり、いつもと違う。
平日に郵便配達があるとすれば、ほぼ百パーセント、午前十一時過ぎに来る。それも大抵、バイクのエンジン音を響かせて。
今日、朝の配達はなかったから何かの理由で送れていた可能性もあり得るが、でも、今の投函の前後に、バイクの音はしなかった。免許のない学生のアルバイトが自転車で来たのだろうか。
若干、訝しみながらも脇尾はつっかけを履いて、勝手口を出ると、郵便受けへと急いだ。明日はここ安生寺家の当主である安生寺洋の誕生日で、ちょっとしたパーティが予定されている。ぼちぼち人が集まり出すし、準備でこのあと忙しくなるのは間違いないだけに、脇尾は早く休憩を取っておきたかった。
脇尾は郵便受けの裏から投函物を取り出した。味も素っ気もない白い事務封筒一つが出て来た。
裏、表と見て、嫌な感覚がさーっと背筋を走った。宛名も差出人もない。ただ、普通なら宛名を書くところに、角張った線で「セイキュウショ」と直に書かれていた。さらに封がされてなくて、ベロが折られているだけであった。
まだ若い脇尾真礼は、安生寺家に仕え始めてから二年と少し過ぎた頃合いである。前任者が高齢を理由に辞めるに当たり、直に会って注意事項を色々と引き継いだ。その中の一つに、「安生寺家の成功を妬んでいる輩がいて、脅迫状めいた物が舞い込むことが希にあった。もう十年ぐらい来ていないし、来ても口先ばかりで、その次の段階に進んだ犯罪はなかったから、さほど気にする必要はない」という話があった。確かにこの二年あまり、怪しげな物が配達されることはなく、注意事項についても忘れかけていた。
いざ届いてみると、ここまで嫌な感じを受ける物だったなんて。素手で触るのも気味が悪くなり、前掛けに着いている大きめのポケットに滑り込ませて、邸宅の中に駆け戻った。
いつもであれば、主たる安生寺洋は出勤しているが、今日は在宅だ。誕生日を挟んで三日間の休みを取るのが通例となっている。なお、二人いる子供も今日が小学校の開校記念日で休みのため、安生寺家にとって団らんするのに都合がよい。
脇尾は彼がいるであろう書斎に向かって、ぱたぱたと小走りで急いだ。
閉ざされたドアの前で立ち止まり、一呼吸置いてから慎ましやかにノックする。そして彼女が名乗るよりも早く、中から「誰?」という声が返って来た。
「脇尾です。配達をお持ちしたのですが」
「真礼さんか。開いてるから入っていいよ」
年齢の割に気さくな言葉遣いの安生寺洋は、大きな黒いデスクに覆い被さるようにして、何かしていた。顔を起こすときにちらっと見えたところでは、時計を分解・修理している様子だった。
「動かなくなった懐中時計があったのを思い出してね。直せるかなと、とりあえず開けてみたんだが、なかなかの難物で」
「あの、旦那様」
「おっとすまない。郵便はどこかソファの上にでも放っておいてくれ。あとで見る」
「それが……」
「ん? 何か急ぎの物らしき手紙でもあったのかね?」
どう切り出していいのか考えあぐねる脇尾に、安生寺は察しよく応じた。
「急ぎといいますか、不気味なのが一通だけ」
「ああ、脅迫文か? 久しぶりだな。いいよ、無視で。そういや、真礼さんは初めてだったか、その手のを受け取るのって」
「は、はい。中はもちろん見ていませんが、嫌な予感がいたします。宛名のところに『セイキュウショ』と書いてあって」
「請求書か。脅し文句や恨み辛みなら今までたくさんあったが、即物的に請求書とは初めての手口だな。どれ、見せてごらん」
封筒をようやく手放すことができて、ほっとする脇尾。
受け取った安生寺は、封筒を顔からちょっと離し、「セイキュウショ」の文字に目を細めた。分解途中の時計を机の真ん中へ押しやると、封筒を開け、ふっと息を吹き込んでから、中身を取り出す。
出て来たのは、縦に幾度か織り込まれた、便せんだった。脇尾のいる位置からは、しかとは見えないものの、表書きと同様、角張った文字が連ねてあることは分かった。
「――何だと」
突然、凄みの宿った安生寺の声。脇尾はいきなりだったこともあり、ぞくりと身震いした。
「真礼さん。こいつを郵便受けに入れた奴を見なかったか?」
「は、はい。見ておりません。台所で炊事をしているときに、音が聞こえたものですから。洗い物を終わらせてから、取りに」
「それはいつのことだ?」
「は、だいたい一時十五分頃のことです」
安生寺は左袖をまくって腕時計に目線を落とす仕種をすると、わずかに唇を噛み、「念のため、近所を見てきてくれ。投函した奴がいるかもしれない。ただし、探していることは態度になるべく出すな。それと、くれぐれも注意するんだ」といつにない強い調子で命じてきた。
「一体何と」
文面が気になって思わず問い返した脇尾だったが、「早くしてくれ」と鋭く言われ、書斎を退散した。
投函が一時十五分だとして、今はすでに五分以上経過しているだろう。悪意のある手紙なら、投じてすぐに立ち去るのが常識。五分も経っていたら“犯人”を見付けるのはまず無理。
(それくらい、旦那様もご承知でしょうに……)
首を傾げつつ、外に出る。洗濯物を飛ばされた風を装って、額に手で庇を作り、時折立ち止まっては背伸びして、辺りを窺ってみた。
(もしかしたら旦那様、愉快犯だと考えたのかもしれない。だったら、どこかで見ている可能性があると考えても全然おかしくないわ)
脇尾は真剣に探したが、普段見掛けないような怪しい人物や車なんかは、まるでなかった。それどころか、近所の顔見知りの人さえ、見当たらない。
邸宅の前と後ろ、両サイドの道を見て回って、三分強。成果がないまま、脇尾は戻り、主の部屋に直行した。開け放たれたままのドアの隙間から姿を見せ、「だめでした。誰もいません」と報告する。
安生寺はびくりと肩を震わせてから、「そうか。いや、悪かったね」と一応のねぎらいの言葉を掛けてくれた。それからまた多少考える時間を取る。脇尾はいるべきか立ち去るべきか迷うのだが、安生寺が何やら物言いたげに見える。しばらく待ってみると、
「ドア、閉めて。君は中へ」
「あ、はい」
書斎に入り、ドアを閉めると、「鍵も掛けてくれ」と言われたのでその通りにする。
親子ほど年齢の離れた他人の男性と二人きりというシチュエーションは、これまでこの邸内でもよそでもなかったことだが、不思議と緊張はしない。それだけ、封筒の中身が気になっていた。
「真礼さん。今、この家にいるのは私と君と……?」
「奥様は午睡を取られています。他には坂藤様、星名様、千ヶ沼様と、あと、外園様が一旦、煙草をお吸いに出られましたが、時間から見てお戻りになっていると思います。他に、ご親戚筋の方が何名か、私の知らない内にお上がりになっていますが、正確なところは把握できていません」
「こ、子供達は。特に、琢馬はいるか?」
「お二人ともお昼のあと、遊びに出かけられて、お帰りになっていないと思います」
この段階で、脇尾は安生寺の表情が通常よりも白みがかっていると気付いた。そして子供の居場所を気にしている……想像が一つ浮かんだが、非常に悪い内容なのでおいそれと口にできない。
ところが。
「真礼さん。あなたもこの家の一員として、否応なしに巻き込まれる」
安生寺が厳しい表情で言い始めた。
「だから早めに知らせておこうと思う。さっきあなたが持って来た封筒の内容は、琢馬をさらったというものだった」
「え。そ、そうだったんですか」
浮かんだ想像の通りだったが、それでも驚いてしまう。近くにあった棚の側面に触れて気をしっかり持とうとする。
「誘拐だなんて、本当なのでしょうか。琢馬君の端末に電話を掛けるか、メールを送るかされましたか?」
「掛けてみた。さっき、真礼さんに外を見てもらっている間にな。だが、呼び出し音が鳴るばかりで、誰も出ない」
少なくとも、電話に出られない何かが起きている。それは単に携帯端末を落としただけかもしれないし、遊びに夢中で気付かないでいる可能性もゼロではない。だけど、誘拐を示唆する手紙が郵便受けに放り込まれたタイミングを考慮すれば、残念ながら誘拐は現実に起きていると見なさざるを得ない。
「……警察へは?」
「そこなんだが、手紙、いや、脅迫文には決まり文句が書かれていたのだ。警察には知らせるな、違えたときは琢馬の安全は保証しかねる、と」
問題の封筒は、机の真ん中に置かれている。便せんは元通りに折り畳んで、封筒に入れたようだ。
「旦那様は、通報しないおつもりなのですか」
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続く
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