コフィン・ウォーカー:疫病と棺桶

崎田毅駿

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「空。でも、どうして急に、腕輪なんて、難儀なものを」

「昔、家に来るおじさんが『親切にされたら、ちゃんと真心を返さなければ』って。ごめんね。これからいっぱい返すから………」

「返したら、空は何処かへ行ってしまうのか?」

「だって、そうにいちゃんは、だって………」

    瞳に涙をためた空は顔を背けた。青白い、いくら外で遊んでも焼けない肌。どちらかというと蒼も色白の方だが、比べ物にならない。青い静脈と透ける肌と首筋に、匂いたつほどの色気を感じた。

 無理矢理抱きしめて、次の間の布団に押し倒し、純潔を奪ってしまいたいと思った。組み敷いて「怖くないよ」とやさしく唇を奪って、肌を重ねたい。

 こんなもの、お伽噺だ。叶わない。空はそういう目で自分を見ていない。

「どうしたの?そうにいちゃん、悲しい顔してるよ」

「……空がこの村の約束の十五歳になったら、祝言をあげよう。そうにいちゃんの珠合わせの相手になってくれ」

「珠合わせって、結婚なんて出来ないよ。この家に、空は『身の程知らず』でそうにいちゃんを『籠絡』したって言われてる。籠絡は、間違いだと思うけど、身の程知らずっていうのは、空もそう思う。空じゃ、不相応だよ」

    蒼は、身をのりだし空の頬に口づけた。空の箸から甘く煮た黒豆がポトリと落ちた。蒼はじっと空の瞳を見つめて話を続けた。
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