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10.一人、秘密を抱えて
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「そうなるな。記憶が戻った時点で復讐の対象が存命かどうか分からねえし、別人なんだから復讐相手に接近するのすら苦労するのが普通だ。復讐はすっぱりやめて、人生やり直せたって前向きに捉えた方が、精神的にいいとは思うぜ。ま、当人が決めることだけどな」
「うーん……三つ目はどういうものですか?」
「最後の三つ目は、俺になるんだ」
「は?」
思わず頓狂に叫んで聞き返す。清原氏はにやりと笑ったようだ。
「いっぺん死んでもらうのは二つ目と一緒だが、転生先が違うってことさ。しかも記憶を維持したまま、今すぐにだ。俺としてこの国で動ける」
「……その姿形のまんまで?」
「ああ。変身能力は持ってないからな。言うまでもないが、服は着替えられるぞ」
「まだイメージしにくいんですけど、僕が清原さんとして活動している間、あなたはどうなるんですか」
「俺も俺の身体に残ってるよ。ていうか、出て行けと言われても無理なんだ。二人羽織みたいなもんと考えればいい。あ、二人羽織って言っても分からないか。基本的にはあんたの自由に動けるが、その行動はヤバいぜ!ってときは介入させてもらう」
「ヤバいっていうのはたとえばどんな場合が。僕が復讐相手に殴りかかった止める?」
「そんなのは放っておくさ。復讐するのもやり直しの一つではあるからな。原則として、俺のこの身体が元に戻せないくらい壊れるような事態は、回避させてもらう」
「……下手なやり方で復讐して、そのことで罪に問われて死刑になったり、警察官に撃たれて死んだりするのはどうでしょう?」
「あんた、極端な例を次から次へとよく思い付くな。ま、そうなっても避ける術を俺は持っている。あんただけ見殺しで死ぬってこともまあないと思うよ」
「それじゃ、僕と清原さんの間で会話することは可能?」
「できる。ついでに言っとくと、俺の方からはそっちが次に何をするつもりでいるか程度なら、前もって把握できる」
プライバシーを侵害される訳か。生理的な用を足したり、女性と肉体関係を持ったりするときも、ずっとこの清原氏を意識しながらってことになるのかな。ちょっと、ううん、だいぶ嫌だな。
「あと、僕はいつまで清原さんの身体を借りていられるんです? 復讐を果たしたら終わり?」
「それはない。別に俺は復讐のためだけに機会を与えるんじゃねえから。本来のあんたが持っていた寿命が尽きるまで、付き合うことができる」
「え、それって清原さんの拘束、きつすぎませんか。その上、本来の役目が果たせなくなるでしょう? 僕みたいなのを助けるっていう」
「あんたが合意してくれれば、たまに助けにいくことになるぞ。そのときはあんたは眺めているだけになる」
「……あれ? おかしくないですか」
「今度は何だよもう。探偵助手って面倒な人種なのな」
あきれ眼を寄越す清原氏だが、僕はかまわずに聞いた。
「僕が清原さんの身体を借りている間、清原さんが他の人の救済に行った場合、選べるルートは三つから二つに減るのかな?と思って。まさか、二人目も一つの身体でまとめて面倒見るとかはないだろうし」
「もちろんだ。さっきあんたに言った三番目はなくなる。元々、三番目を選ぶのって極稀なんだよ。変わった格好をした男と同じ肉体を共有して、私生活を垣間見られるってのが嫌なんだろう。それに、五体満足で死ぬ確証のある奴はたいてい一番目を選ぶ、という事情もある。だから問題ないのさ。気にするな」
「はあ」
「それよりか、早く選べよ。話が進まねえ。時間に余裕があるなんて言わなきゃよかったぜ」
苛立ちを隠そうとしない清原氏。ちっさいから怖さは感じないものの、目を凝らすとなかなか筋肉異質な身体付きをしているような……。もし仮に僕と同じサイズになったとしたら、腕っ節は強そうだ。
「三番目に惹かれているのですが、決定打がないというか、一番目とどちらにするか決めかねているのが本音でして」
「何が不満だ? 言ってくれ。ひょっとしたら善処できるかもしれないぞ」
「基本的なところの確認からになるんですが、清原さんの身体を借りていることを、第三者に打ち明けるのは、やっぱりなしですか」
「当たり前だ。お約束だろ」
やや鼻で笑う様子を見せた清原氏。
「俺達みたいな存在がいざとなったら助けてくれる、なんてことが世間に広まったら、それを当てにして刹那的に生きる輩が増えるかもしれない。自暴自棄になる奴や、簡単に復讐を果たそうとする奴なんかも増えるんじゃないか。こちとら、そんなのは望んじゃいねえからな」
「分かりました。その上での質問があるんです。僕が清原さんに相談することは可能ですか?」
「うん?」
首を傾げる清原氏。初めて困惑したように見受けられた。
「話のつながりが分かんねえぞ。それに相談と一口に言ったって、色々あるだろうが。俺は恋愛相談なんて無理だからな」
「それくらいは見れば分かります。相談したいと言ったのは、あなたの身体を借りて生きていく中で、何だかんだと問題が起きたり迷ったりすることがあるでしょうから、その相談に乗ってもらえたらありがたいなと。秘密を抱えて、誰にも打ち明けられずに日々を送るのは辛そうで」
「うーん……三つ目はどういうものですか?」
「最後の三つ目は、俺になるんだ」
「は?」
思わず頓狂に叫んで聞き返す。清原氏はにやりと笑ったようだ。
「いっぺん死んでもらうのは二つ目と一緒だが、転生先が違うってことさ。しかも記憶を維持したまま、今すぐにだ。俺としてこの国で動ける」
「……その姿形のまんまで?」
「ああ。変身能力は持ってないからな。言うまでもないが、服は着替えられるぞ」
「まだイメージしにくいんですけど、僕が清原さんとして活動している間、あなたはどうなるんですか」
「俺も俺の身体に残ってるよ。ていうか、出て行けと言われても無理なんだ。二人羽織みたいなもんと考えればいい。あ、二人羽織って言っても分からないか。基本的にはあんたの自由に動けるが、その行動はヤバいぜ!ってときは介入させてもらう」
「ヤバいっていうのはたとえばどんな場合が。僕が復讐相手に殴りかかった止める?」
「そんなのは放っておくさ。復讐するのもやり直しの一つではあるからな。原則として、俺のこの身体が元に戻せないくらい壊れるような事態は、回避させてもらう」
「……下手なやり方で復讐して、そのことで罪に問われて死刑になったり、警察官に撃たれて死んだりするのはどうでしょう?」
「あんた、極端な例を次から次へとよく思い付くな。ま、そうなっても避ける術を俺は持っている。あんただけ見殺しで死ぬってこともまあないと思うよ」
「それじゃ、僕と清原さんの間で会話することは可能?」
「できる。ついでに言っとくと、俺の方からはそっちが次に何をするつもりでいるか程度なら、前もって把握できる」
プライバシーを侵害される訳か。生理的な用を足したり、女性と肉体関係を持ったりするときも、ずっとこの清原氏を意識しながらってことになるのかな。ちょっと、ううん、だいぶ嫌だな。
「あと、僕はいつまで清原さんの身体を借りていられるんです? 復讐を果たしたら終わり?」
「それはない。別に俺は復讐のためだけに機会を与えるんじゃねえから。本来のあんたが持っていた寿命が尽きるまで、付き合うことができる」
「え、それって清原さんの拘束、きつすぎませんか。その上、本来の役目が果たせなくなるでしょう? 僕みたいなのを助けるっていう」
「あんたが合意してくれれば、たまに助けにいくことになるぞ。そのときはあんたは眺めているだけになる」
「……あれ? おかしくないですか」
「今度は何だよもう。探偵助手って面倒な人種なのな」
あきれ眼を寄越す清原氏だが、僕はかまわずに聞いた。
「僕が清原さんの身体を借りている間、清原さんが他の人の救済に行った場合、選べるルートは三つから二つに減るのかな?と思って。まさか、二人目も一つの身体でまとめて面倒見るとかはないだろうし」
「もちろんだ。さっきあんたに言った三番目はなくなる。元々、三番目を選ぶのって極稀なんだよ。変わった格好をした男と同じ肉体を共有して、私生活を垣間見られるってのが嫌なんだろう。それに、五体満足で死ぬ確証のある奴はたいてい一番目を選ぶ、という事情もある。だから問題ないのさ。気にするな」
「はあ」
「それよりか、早く選べよ。話が進まねえ。時間に余裕があるなんて言わなきゃよかったぜ」
苛立ちを隠そうとしない清原氏。ちっさいから怖さは感じないものの、目を凝らすとなかなか筋肉異質な身体付きをしているような……。もし仮に僕と同じサイズになったとしたら、腕っ節は強そうだ。
「三番目に惹かれているのですが、決定打がないというか、一番目とどちらにするか決めかねているのが本音でして」
「何が不満だ? 言ってくれ。ひょっとしたら善処できるかもしれないぞ」
「基本的なところの確認からになるんですが、清原さんの身体を借りていることを、第三者に打ち明けるのは、やっぱりなしですか」
「当たり前だ。お約束だろ」
やや鼻で笑う様子を見せた清原氏。
「俺達みたいな存在がいざとなったら助けてくれる、なんてことが世間に広まったら、それを当てにして刹那的に生きる輩が増えるかもしれない。自暴自棄になる奴や、簡単に復讐を果たそうとする奴なんかも増えるんじゃないか。こちとら、そんなのは望んじゃいねえからな」
「分かりました。その上での質問があるんです。僕が清原さんに相談することは可能ですか?」
「うん?」
首を傾げる清原氏。初めて困惑したように見受けられた。
「話のつながりが分かんねえぞ。それに相談と一口に言ったって、色々あるだろうが。俺は恋愛相談なんて無理だからな」
「それくらいは見れば分かります。相談したいと言ったのは、あなたの身体を借りて生きていく中で、何だかんだと問題が起きたり迷ったりすることがあるでしょうから、その相談に乗ってもらえたらありがたいなと。秘密を抱えて、誰にも打ち明けられずに日々を送るのは辛そうで」
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