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コイカケ2の8
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「さすがに徒労感を覚えるわ」
静流は我ながら珍しく、弱音を吐いた。無論、ただ気弱になっているところを見せているのではない。
「負けそうになったら、そちらのマッチ棒に火を着けて、減らしてさしあげようかと思ってましたが、この調子ではそんな展開にまでなかなか辿り着けそうにありません」
「お願いだから、冗談でも火を着けるなんて言わないでちょうだい」
抗議しながら、手元のマッチ棒を静流から遠ざける野杁。
「分かったわ。とは言え、六枚の特殊カードが一度は使用されるっていう、ゲーム終了条件を満たす瞬間が、そろそろ訪れそう。三戦以内に終われば、トーナメントの準決勝開始に間に合うでしょうし、提案があるの」
「トーナメントの開始時刻なんて、静流さん、あなたの思う通りに変更できるでしょうが。でも、一応聞こうじゃないの」
不信感も露わに、野杁はじとっとした目付きで静流の顔を窺ってきた。
「これから決着までの間、降りるのは認めない。いかが?」
「……降りられない勝負は危険な匂いがして魅力的だけど、受け入れられないわ」
やや未練を残した様子ながら、拒否した野杁。これまでを振り返ると、対戦相手に降りられることで大魚を逃したと歯がみする思いを、野杁の方がより多く味わっていると言えそうだが、それでも拒んだ理由は。
「現時点では所有するマッチ棒が同じ本数だから忘れそうになってたけれども、下手したら全ての特殊カードが出揃う前に、0本になるかもしれない」
「それは降りるのを禁止するルールとは無関係に、必ずつきまとうことだわ」
「分かっているわよ。勝負をスピードアップさせたいのなら、マッチの下限を決めたらいい。一ゲームにつき二回、ベットする機会があるけれども、一回目は必ず七本を賭けねばならないとする。これでどう?」
逆提案に対し、静流は息をゆっくりと吐いた。
「まあいいわ。引き延ばしをはかるのであれば、確実に四回は勝負できるものね。手持ちのマッチが七本未満になったときは?」
「全部賭けて勝負でいいんじゃあないの。勝っている方は負けてる方に合わせる」
こうしてマッチの下限を定め、最終盤に向けてのリスタートを切ることになった。
現時点で、神田部静流から見た特殊カードの判明具合は以下の通りである。なお、☆マークは野杁竹子が把握済みのカードを表す。
1.(☆クラブの2)相手の手札の中で一番強い札をクラブの2に変える
2.(スペードの3)相手の手札に特殊札があれば、その中の一枚を指定して無効化
3.(☆クラブの2)自身の手札の中で一番強い札をダイヤの2に変える
野杁竹子
4.(☆クラブの5)ジョーカーの代わりになる
5.(☆ハートの6)ジョーカーの代わりになる
6.(☆?)相手の手札の中で一番強い札と交換
そして迎えた仕切り直しの第七戦。最初からマッチ棒七本を出した状態でカードが配られた。
ハートのA ハートの6 クラブの3 クラブの5 ハートの7
静流は最初、ハートのAを交換してストレート狙いはちょっと無謀かしら、などと考えていた。が、はたと気付く。
静流は我ながら珍しく、弱音を吐いた。無論、ただ気弱になっているところを見せているのではない。
「負けそうになったら、そちらのマッチ棒に火を着けて、減らしてさしあげようかと思ってましたが、この調子ではそんな展開にまでなかなか辿り着けそうにありません」
「お願いだから、冗談でも火を着けるなんて言わないでちょうだい」
抗議しながら、手元のマッチ棒を静流から遠ざける野杁。
「分かったわ。とは言え、六枚の特殊カードが一度は使用されるっていう、ゲーム終了条件を満たす瞬間が、そろそろ訪れそう。三戦以内に終われば、トーナメントの準決勝開始に間に合うでしょうし、提案があるの」
「トーナメントの開始時刻なんて、静流さん、あなたの思う通りに変更できるでしょうが。でも、一応聞こうじゃないの」
不信感も露わに、野杁はじとっとした目付きで静流の顔を窺ってきた。
「これから決着までの間、降りるのは認めない。いかが?」
「……降りられない勝負は危険な匂いがして魅力的だけど、受け入れられないわ」
やや未練を残した様子ながら、拒否した野杁。これまでを振り返ると、対戦相手に降りられることで大魚を逃したと歯がみする思いを、野杁の方がより多く味わっていると言えそうだが、それでも拒んだ理由は。
「現時点では所有するマッチ棒が同じ本数だから忘れそうになってたけれども、下手したら全ての特殊カードが出揃う前に、0本になるかもしれない」
「それは降りるのを禁止するルールとは無関係に、必ずつきまとうことだわ」
「分かっているわよ。勝負をスピードアップさせたいのなら、マッチの下限を決めたらいい。一ゲームにつき二回、ベットする機会があるけれども、一回目は必ず七本を賭けねばならないとする。これでどう?」
逆提案に対し、静流は息をゆっくりと吐いた。
「まあいいわ。引き延ばしをはかるのであれば、確実に四回は勝負できるものね。手持ちのマッチが七本未満になったときは?」
「全部賭けて勝負でいいんじゃあないの。勝っている方は負けてる方に合わせる」
こうしてマッチの下限を定め、最終盤に向けてのリスタートを切ることになった。
現時点で、神田部静流から見た特殊カードの判明具合は以下の通りである。なお、☆マークは野杁竹子が把握済みのカードを表す。
1.(☆クラブの2)相手の手札の中で一番強い札をクラブの2に変える
2.(スペードの3)相手の手札に特殊札があれば、その中の一枚を指定して無効化
3.(☆クラブの2)自身の手札の中で一番強い札をダイヤの2に変える
野杁竹子
4.(☆クラブの5)ジョーカーの代わりになる
5.(☆ハートの6)ジョーカーの代わりになる
6.(☆?)相手の手札の中で一番強い札と交換
そして迎えた仕切り直しの第七戦。最初からマッチ棒七本を出した状態でカードが配られた。
ハートのA ハートの6 クラブの3 クラブの5 ハートの7
静流は最初、ハートのAを交換してストレート狙いはちょっと無謀かしら、などと考えていた。が、はたと気付く。
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