12 / 143
1ネジ
友人という名の side弥生+轟②
しおりを挟む「いい加減にしろ。過去は過去。今は今だ」
「へぇ」
「邦彦くんは甘いわよね」
互いに視線を外し、言い方や態度は別として仲介に入る形になった轟邦彦をちらりと見る。
だが、轟の言葉はどちらの意図にも沿うものではなかった。
「違う。現実についてだ。小野寺にとっての現実的な話として、もうすぐ動くと言ったがそれは別の話だ」
「だが、一つのターニングポイントだ」
「そう思うのは勝手だがそれは成果が伴った場合の話だ。そのためにも早く準備しろ。こっちはお前のために調整をしてるんだ。ここで手を抜いたら目的が遠のくぞ」
時計を見せ急かす轟に、時間を確認した小野寺はすぐに顔を引き締めた。
先ほどまで緩い顔をしていたとは思えない、出来る男風にきりりとする。
「わかった。五分待て」
「ああ」
轟は小野寺の背中を見送ると、にやにやする桜田をメガネ越しに眺め、軽く肩を竦めた。
小野寺が藤宮千幸を連れて来た時から、それはもう楽しそうだ。
「そんなに面白いか?」
「面白いわね。高校の時の翔を知っているからなおさらね。大学でもそう変わらなかったって聞くし、相変わらずイケメンだけど千幸ちゃんを前にするとユルガタね。邦彦くんは大変そうだけど」
「まあな。早く落ち着くところに落ち着いてほしいものだ」
「本当、なーんかここまでくるのが長かったのよね」
「ああ、全くだ。あれは、ひどかった……」
轟は考えるだけで芋づる式にゲンナリするあれこれを思い出し、ひどく疲れたように桜田弥生の言葉に共感する。
────どうしてどうなったらあんなことになるんだ?
いまだに謎だ。わからない。
弥生も思い出したのか視線が絡むと、同時に「はあぁぁぁ」と盛大に溜め息をついた。魂魄がほわっと抜け出すほど重いものだ。
轟は大学時代の友人、桜田は高校時代の友人として、小野寺を通して最近知り合ったが、弥生曰く『なーんか長い』のを経たことで変な仲間意識ができた。
「傍目には楽しいっちゃ楽しいし、翔の見たことない行動と千幸ちゃんのツレなさぶり笑えるけど。健くんは爆笑してたわよ。トラック借りて準備万端ってさすがキングって」
「彼には世話になり助かったが、やたらノリノリだったな。高校の時あんたらはどんなんだったんだ? ……あと、そのあだ名は生きてるのか?」
「大学時代の翔のあだ名がキングなんでしょ? 健くんの友達が同じ大学で有名だって言ってたの聞いたの。高校の時はプリンスだったから、格上げされてるって盛り上がっちゃって」
轟は続く言葉を予想して顔を歪めた。
弥生は楽しそうに続ける。
「邦彦くんは参謀だったかしら。キングに参謀、何それ? 国家築くの? って聞いたらほかにもろもろいたって言うじゃない。しばらく笑いが止まらなかったわ。まあ、高校時代も似たようなものかも。個性強いのが生き残って最後はわちゃめちゃだったし」
「……とても楽しそうだな」
「そうね。だから今も楽しいわ。今までと違った旨みっていうの? 千幸ちゃんはちょっとお気の毒さまぁって感じだけど、まあハイスペックの好物件だから諦めて? って感じよね」
「…………」
轟は懸命にも黙した。
人の恋路に口を出したくないが、手は貸している。だから、せめて二人が関わりだしたら口だけは出さないでおこうと決めていた。
正直、あれだけ付き合わされたのだから、ぜひとも藤宮千幸にはこっち側にきてもらわないと困るとは思っている。口には出さないが。
だが、見込みがあるのかないのか見ていてよくわからない。
嫌われてはいないようだが、小野寺の押しが強すぎるのか、藤宮千幸の性格からか、会話が一方通行気味に見える。
あの色気だだ漏れのしかも限定で緩んだ顔を見せられても、なびかない女性というのは稀有だ。
たまに、あのシレッとした感じでばしっと言ってやってくれと思うことすらある。それも、ぜひともこちら側にきてほしい理由の一つだ。
まあ、小野寺が言うように、今日はターニングポイントといえばそうだなっと、山積みの仕事を思い出し溜め息をつく。
仕事は乗りに乗って順調だ。その分、忙しいがやり甲斐があり轟的にはオプションを除いてあまり不満はない。
だが、そのオプションが小野寺的に大事だと言われれば、彼がトップなので従うしかない。
小野寺のモチベーションを調整するのも、轟の仕事だ。関係がもともと友人であったためその仕事との境目があやふやだが、ここまでくれば仕方ない。
小野寺とは友人というよりは彼を囲んで仲間が増えて付き合いが増えている感じだが、もう今さらなのだろう。
あれこれ考えていると小野寺が出てきた。
その表情はすでに仕事モードである。
轟は時計を確認する。ぴったり五分で気持ちも切り替えてきた、友人兼上司に無言で行くぞとその場から移動した。
✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.
1 ネジここで終わりです。
ネジごとに甘さとネジの緩み具合も加味されていくかと思います。
お付き合い、本棚登録、ハートをありがとうございます。とっても嬉しいです(*´∀人)♪
数年ぶりに読み返し現在も改稿中なのですが、タグにもあるように本当に変で甘いです。じわじわくる変甘です!
小野寺のネジはやっぱり緩んでいました笑
その辺りも含め楽しんでいただけたら幸いです。
88
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
【続】18禁の乙女ゲームから現実へ~常に義兄弟にエッチな事されてる私。
KUMA
恋愛
※続けて書こうと思ったのですが、ゲームと分けた方が面白いと思って続編です。※
前回までの話
18禁の乙女エロゲームの悪役令嬢のローズマリアは知らないうち新しいルート義兄弟からの監禁調教ルートへ突入途中王子の監禁調教もあったが義兄弟の頭脳勝ちで…ローズマリアは快楽淫乱ENDにと思った。
だが事故に遭ってずっと眠っていて、それは転生ではなく夢世界だった。
ある意味良かったのか悪かったのか分からないが…
万李唖は本当の自分の体に、戻れたがローズマリアの淫乱な体の感覚が忘れられずにBLゲーム最中1人でエッチな事を…
それが元で同居中の義兄弟からエッチな事をされついに……
新婚旅行中の姉夫婦は後1週間も帰って来ない…
おまけに学校は夏休みで…ほぼ毎日攻められ万李唖は現実でも義兄弟から……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる