9 / 66
8.責任
しおりを挟む なんだか悔しくて涙目になりながら食事を進める。
はぁ……なんでこんなことに……。
溜め息が出る。
「優希? どうしたんだ?」
手を止めて溜め息をつく俺に気がついたのか、藤條が心配そうな顔で覗き込んできた。
いや、原因はお前だから。
藤條を見て、再び溜め息が出る。
「?……さて、そろそろ行かないとな。ちょっと今日は遅くなった」
首を傾げる藤條だったが、急に立ち上がるとそう言って俺に手を差し出す。
遅くなったのもお前のせいだろがーっ!
頭にきて、俺は藤條を無視して席を立つ。
「あ……ごちそう様でした……」
席を立ってから思い出して、橘さんに声をかける。
あれ? そういえば、他にメイドとか――コイツの家族は?
ふと気になって周りを見たが、俺達3人しかいない。
なんだろう……この感じ。
「優希、ほら、用意しなきゃ」
ぼんやりしている俺に藤條が話し掛けてくる。
「あ……うん」
生返事をしながら俺は藤條の後に続いた。
☆☆☆
「どうぞ」
橘さんが車のドアを開け、にこやかに俺を見ている。
「…………」
なんだこれ。
いや、なんとなく想像はしたけど……これなんだっけ? ベンツ?
車で送り迎えかー!
この坊ちゃんがっ!
目の前の、シルバーの高級車に俺はなんだか腹が立っていた。
いや、車で送ってもらえるなんて体験したことないし、ちょっとした感動でもあるんだけどさ。
なんとなく、ムカつく。
「優希」
俺がむくれていると、藤條が俺の手を掴んで車に乗り込む。
俺は歩いてく……って言おうかとも思ったけど、コイツの家から学校までどれだけあるか分からない。
まぁ、今日は乗ってやろうじゃねぇか。
ゆっくりと車は進む。
ここどこなんだろう。
俺は車の窓からじっと外を眺めていた。
あまり見たことないような景色。
いや、知ってるかもしれない。
不思議な感覚だ。
車に乗って10分。
俺はずっと外を眺めていた。
藤條も特に話し掛けてもこなかった。
「優希」
しかし、ぼんやりと外を眺めていたら、急に声を掛けられて横を見る。
「んんっ!?」
ぬわーっ!
バカーっ!
横を見た瞬間にキスされた。
ちょっと待てーっ!
バシバシと藤條の胸を叩く。
「いたっ、痛いって、優希っ」
数秒間ほどくっついていた藤條の唇がやっと離れて、顔をしかめながら声を上げる。
「うるせぇっ! 何すんだっ! このっ、変態っ!」
俺は涙目になりながら思い切り睨み付けた。
「……変態って……」
藤條はがっくりとうな垂れていた。
当たり前だ。お前なんか変態以外の何者でもないわっ。
落ち込んでいる藤條を無視して再び窓の外を眺めた。
「あっ!」
気が付くと、もう学校の校門近くまで来ていた。
校門の100メートルくらい手前に車は止まる。
そして、橘さんは車から降りると後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
俺はすぐに車外へと降りる。
「橘さんっ、ありがとうっ」
橘さんにお礼を言うと、藤條が降りてくる前に俺は走り出した。
コイツと一緒に登校だなんてごめんだっ。
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえたけど、無視だ無視。
あんな変態野郎。
必死に校門まで走り続ける。
「はぁ……はぁ……」
大した距離じゃなかったけど、妙に息切れした。
目の前の見慣れた学校。
ここは俺の知ってる学校なんだろうか……。
はぁ……なんでこんなことに……。
溜め息が出る。
「優希? どうしたんだ?」
手を止めて溜め息をつく俺に気がついたのか、藤條が心配そうな顔で覗き込んできた。
いや、原因はお前だから。
藤條を見て、再び溜め息が出る。
「?……さて、そろそろ行かないとな。ちょっと今日は遅くなった」
首を傾げる藤條だったが、急に立ち上がるとそう言って俺に手を差し出す。
遅くなったのもお前のせいだろがーっ!
頭にきて、俺は藤條を無視して席を立つ。
「あ……ごちそう様でした……」
席を立ってから思い出して、橘さんに声をかける。
あれ? そういえば、他にメイドとか――コイツの家族は?
ふと気になって周りを見たが、俺達3人しかいない。
なんだろう……この感じ。
「優希、ほら、用意しなきゃ」
ぼんやりしている俺に藤條が話し掛けてくる。
「あ……うん」
生返事をしながら俺は藤條の後に続いた。
☆☆☆
「どうぞ」
橘さんが車のドアを開け、にこやかに俺を見ている。
「…………」
なんだこれ。
いや、なんとなく想像はしたけど……これなんだっけ? ベンツ?
車で送り迎えかー!
この坊ちゃんがっ!
目の前の、シルバーの高級車に俺はなんだか腹が立っていた。
いや、車で送ってもらえるなんて体験したことないし、ちょっとした感動でもあるんだけどさ。
なんとなく、ムカつく。
「優希」
俺がむくれていると、藤條が俺の手を掴んで車に乗り込む。
俺は歩いてく……って言おうかとも思ったけど、コイツの家から学校までどれだけあるか分からない。
まぁ、今日は乗ってやろうじゃねぇか。
ゆっくりと車は進む。
ここどこなんだろう。
俺は車の窓からじっと外を眺めていた。
あまり見たことないような景色。
いや、知ってるかもしれない。
不思議な感覚だ。
車に乗って10分。
俺はずっと外を眺めていた。
藤條も特に話し掛けてもこなかった。
「優希」
しかし、ぼんやりと外を眺めていたら、急に声を掛けられて横を見る。
「んんっ!?」
ぬわーっ!
バカーっ!
横を見た瞬間にキスされた。
ちょっと待てーっ!
バシバシと藤條の胸を叩く。
「いたっ、痛いって、優希っ」
数秒間ほどくっついていた藤條の唇がやっと離れて、顔をしかめながら声を上げる。
「うるせぇっ! 何すんだっ! このっ、変態っ!」
俺は涙目になりながら思い切り睨み付けた。
「……変態って……」
藤條はがっくりとうな垂れていた。
当たり前だ。お前なんか変態以外の何者でもないわっ。
落ち込んでいる藤條を無視して再び窓の外を眺めた。
「あっ!」
気が付くと、もう学校の校門近くまで来ていた。
校門の100メートルくらい手前に車は止まる。
そして、橘さんは車から降りると後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
俺はすぐに車外へと降りる。
「橘さんっ、ありがとうっ」
橘さんにお礼を言うと、藤條が降りてくる前に俺は走り出した。
コイツと一緒に登校だなんてごめんだっ。
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえたけど、無視だ無視。
あんな変態野郎。
必死に校門まで走り続ける。
「はぁ……はぁ……」
大した距離じゃなかったけど、妙に息切れした。
目の前の見慣れた学校。
ここは俺の知ってる学校なんだろうか……。
1,266
お気に入りに追加
2,586
あなたにおすすめの小説

王弟様の溺愛が重すぎるんですが、未来では捨てられるらしい
めがねあざらし
BL
王国の誇りとされる王弟レオナード・グレイシアは優れた軍事司令官であり、その威厳ある姿から臣下の誰もが畏敬の念を抱いていた。
しかし、そんな彼が唯一心を許し、深い愛情を注ぐ相手が王宮文官を務めるエリアス・フィンレイだった。地位も立場も異なる二人だったが、レオは執拗なまでに「お前は私のものだ」と愛を囁く。
だが、ある日エリアスは親友の内査官カーティスから奇妙な言葉を告げられる。「近く“御子”が現れる。そしてレオナード様はその御子を愛しお前は捨てられる」と。
レオナードの変わらぬ愛を信じたいと願うエリアスだったが、心の奥底には不安が拭えない。
そしてついに、辺境の村で御子が発見されたとの報せが王宮に届いたのだった──。
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?

僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる