社内恋愛禁止2

りょう

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社内恋愛禁止2

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赤堀は蒼木が好きだった。
まだ練習生だった頃からずっと惚れていた。
 
「蒼木に絶対手を出すなよ…お前の嫁にはやらんからな。メンバー同士の恋愛禁止は事務所の掟だ。手を出したらブッ殺すよ(ニッコリ)」と俺はグループのマネージャーからキツく言われていた。
 
別に蒼木はマネージャーのもんじゃねぇし…許可なんかいらねぇし、関係ねぇし…。
 
だが、見た目はともかく根が超真面目な俺は自分の色恋沙汰が原因でグループ内の秩序が乱れるのを望んでいなかったし、マネージャーに逆らってまで蒼木に対してリアクションを起こす事はしなかった。
 
俺たちは、お互いに惹かれあっていたと思う。蒼木の視線とぶつかる度に胸の深くが熱くなり切なくなったが、彼の想いに気づかぬふりをして優しく微笑み返すのが精一杯だった。
この恋が叶ったとしても幸せになれるとは限らない。見守る事が俺の愛だと言い聞かせながら、忙しさで彼への想いを誤魔化す日々が続いた。
 
 
しかし、離れていれば忘れられたかもしれないが彼と俺は同じグループメンバーだ。忘れようとしても彼に会えば愛しい気持ちが湧き上がる。
 
叶わない想いならいっそ忘れたいのに…
結局、俺の心から彼への特別な感情は消えてくれなかった。このもどかしい感情を消化する為に蒼木に似た女と付き合い、蒼木に似た女を抱いた。
性欲は発散出来たが、本当に欲しい人は手に入れられない現実は何も変わらなかった。
こんなに切ない恋は初めてだった。

 彼が他のメンバーとじゃれあうのを見るだけでも嫉妬で苛立ち、蒼木に掴みかかって押し倒して犯してやりたいと歪んだ欲望にまで変わり始めていった。

 そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、蒼木はある日を境に劇的に変貌した。彼はイメチェンだよと照れくさそうに笑ったが、ヘアスタイルと髪色を変えて大人っぽい雰囲気になった。元々目鼻立ちが整っていた容姿だが、茶髪から黒髪に戻したことでしっとりとした妖艶さを身に纏った。その美しさに目を奪われた俺は本能的に焦ったのだ。

 
誰にも取られたくない
 
しかし、だからといってどうする事も出来ずに苛立ちだけが募り、増々焦燥感と独占欲に苛まれていった。
 
グループの秩序の為に、皆を率いる立場の俺は一番欲しい人を諦め、何を手に入れようと必死に生きているのか…
日本のトップクラスのダンサーになる事は夢だった。夢と引き換えに彼を諦めるべきなのか。
自分が輝きつづける為の努力をし、日々パフォーマンスに磨きをかける。忙しく毎日を過ごす中、女と酒で誤魔化せばなんとかなると高を括っていた。だが何年経とうがどうしてもこの恋を手放すことができない。その事実を突きつけられただけだった。
 
 
そんな時だった。
蒼木と他のメンバーが付き合っているのではないかと下世話な冗談交じりの噂が流れたのは。
 
またいつものファンのお遊びだろ?何を根拠にそんな噂が?
皆の手前、笑い飛ばしたが心中穏やかではなかった。
当たり前だ。俺は蒼木に恋をしている。

何故他のメンバーと?いつからだ?
どうして仲のいい俺じゃない?
 
誰も入り込めない空気を纏った噂の二人を見た。俺が超えられなかった壁を越えたメンバーの男をじっと見た。きっと彼を恐ろしい形相で見ていたのだろう。
 
「赤堀さん…どうしたんですか? 鬼瓦みたいですよ」

 
「……いや、元々こうゆう顔なんだ…」
 
 
俺は蒼木が好きだ。でも蒼木が今も変わらず俺を好きでいる保障などどこにもなかったのに。
自分だけがこの想いに縛られて、いま彼は俺から遠くに離れていこうとしているのか…。
二度と気持ちが戻って来る事はないかも知れない。ずっと俺を好いていてくれると何故信じていたのだろう。

彼が俺に対して尊敬と感謝の気持ちをいつも言葉で表してくれていたから、蒼木の気持ちは俺に向いていると思い上がっていた。立場上我慢してただ眺めていた結果、別の男に掻っ攫われていこうとしている。今までの忍耐には一体なんの意味があったのか。
 
もう無理だ。我慢できない。
 
俺は事務所の鉄の掟に背くことにした。
 
 
 
________
 
 
ある日の夜、俺は蒼木を飲みに誘った。
 
嬉しそうに笑った顔が、俺と二人きりだと知った途端に戸惑った表情になったのは面白くなかった。
だが蒼木は俺の誘いを断らない。分かった上で彼の優しい性格を利用した。俺は汚いやり方を選んだ。
 
入手困難な日本酒を用意し、彼の好みのツマミも並べた。好きな人の喜ぶ顔がみたい。蒼木の前では俺はただの恋する男だった。
だから彼が他の男のモノになるのは耐えられなかった。
 
邪な感情に囚われていた俺は無防備に笑う蒼木の目が真っ直ぐに見れない…。
今から俺がしようとしている行為は二人の間に壊滅的な亀裂を入れてしまう事になるかもしれない。
今まで通りの関係を続けたければ。
彼に尊敬され、憧れ続けてもらいたいならば…
 この恋を手放すしかない。
 
土壇場で迷い始めた俺の心中など知る由もない蒼木は色気を含んだ潤んだ瞳で見つめてきた。

酒に酔っているのか、それともまだ俺に特別な感情を持ってくれているのか?
蒼木は俺を見て辛そうに微笑んだ。
 
「みんな赤堀が好きだ…赤堀もみんなを大事に思ってる。俺だけが…赤堀の特別じゃないよね?
でも…、赤堀は…昔から俺の一番なんだ。

ずっとずっと好き… だった… 」
 
蒼木の本音が零れ落ちてきた。
 
言いたい事を吐き出して気が抜けたのか、ソファーにうつ伏せで倒れこんで眠ってしまった。突然の彼の告白に俺は狼狽えた。だがそれ以上に心は歓喜に震えた。
 
眠り込む蒼木にゆっくり近づくと、通常では近づいてはいけない程の至近距離でその美しい顔を覗き込んだ。
 
今のは告白と捉えていいのか?
じゃあ、あの噂のメンバーとはどういう関係なんだ。俺の勘違いだとしても、もう止められない。
苦しいんだ。  もう解放したいんだ。
 
ソファーに横たわっていた彼を仰向けにし、身体を抱き抱えると寝室に運んだ。キングサイズのベッドにそのしなやかな肢体をゆっくりと落とす。
 
シーツの上で弾む妖艶な男。
 無防備にしどけなく開いた身体。
何年も想い続けた人。

 
赤堀は彼とセックスする為にその衣服を剥ぎ取っていく。愛し合う為に繋がりたかった。いつも楽屋の着替えで見ている裸も寝室のベッドで見ると卑猥なものにしか視えなかった。
 
理性はとっくに飛んでいたから、蒼木に泣かれても抵抗されても彼の奥深くに入り込む事しか頭になかった。上着を脱がし、Tシャツを捲りあげると乳首の周りに赤い鬱血。
 
赤堀はゴクリと唾を飲んだ。
 
他の男との関係を一瞬で理解し怒りが込み上げてきた。
だが、俺だって同様の行為をこれからしようとしている。
 誰かと身体の関係があったとしても、蒼木の心は俺にあるんだよな…?だったらそいつから遠慮なく奪ってやる。
 
蒼木はぼんやりと焦点の定まらない目をして赤堀を見ていた。蒼木の唇が欲しくてゆっくりと顔を近づけていく。

俺を受け入れてくれるか…?
そんな願いを込めて見つめた。
すると、彼の閉じていた唇が花開くようにほころんで俺を誘った。
許されたように感じた俺は吸い込まれるように彼の唇を優しく舐めて甘噛みした。
気持ちよさそうな吐息が漏れてきて興奮した俺は更に貪るように濃厚なキスを重ねた。
 
さらけ出された乳首を摘んでやると、一瞬ビクリと反応したが抵抗はしなかった。
ジーンズのジッパーをこじ開け、指を滑り込ませた。
ムワッとした熱い熱気が伝わって増々興奮した。遠慮なく指を潜り込ませると俺の片手に収まるくらいの彼の小振りな熱がぷるぷると震えて硬くなり始めた。
 
俺はジーンズとTシャツを脱ぐと真っ裸になり、彼に抱きついた。
そして彼のジーンズと下着も取り去ると蒼木の肌を初めて性的な意味で触った。
ジムで鍛えてる頑丈な男の身体だけれど激しく抱いてはいけないような気がした。筋肉質なはずなのに何故か蒼木の身体はむちむちして柔らかい…
俺はずっと気になっていた事を行動に起こした。
 
彼の蕾の入口を指先で擦りながら徐々に広げていった。更にその奥深くに用意していた潤滑油を垂らし、中指を潜り込ませると蒼木は驚いて脚を閉じようとしたがそれを許さず、中を探るようにゆっくりと動かした。
苦しそうに息を漏らす声は堪らなくそそったが、入口は凄くキツくて男を咥え込むのに慣れているように思えなかった。
 
まだ誰とも一線を超えてはいないのか。
ならば今夜、俺のモノにしなければ。
興奮と独占欲で赤堀の性器は硬く力強く反り返っていた。蒼木の柔らかい太ももに自身を押し当て擦りつける。
 
「赤堀の…、 大っきいね… 」
 
怯えてるのか喜んでるのかわからなかったが蒼木は赤堀を受け入れようと恥ずかしがりながらも脚を開いていく。尻のラインが露わになって尻にも股にもしゃぶりつきたくなる。
 
だが赤堀は、蒼木の中に入るのにじっくり時間をかけた。痛みや傷をつけたくなかったから大切に優しく挿入して自身が馴染むまで辛抱強く待った。
蒼木の中は熱くて赤堀の性器は溶けてしまいそうで情けなくもだらしない顔をしていたかもしれない。

今まで経験したセックスはなんだったんだ。そう思えるくらい脳に電流が走ったみたいな痺れたセックスだった。そのくらい頭が真っ白になってしまった。
蒼木も同じように気持ち良くなって欲しくて胸の先端に吸い付いた。野獣のように夢中で彼を求めた。蒼木の手が赤堀の背中に回り、抱きしめた。蒼木も赤堀を求めてるのが分かって嬉しくて身体中を舐め回した。恥ずかしがって声を抑えていたが俺の与える快感に耐えられなくなった蒼木は甘い声を上げ続けていた。
 
ギシギシとベッドを軋ませる音に蒼木の甘い喘ぎ声が同調する。彼の秘部がひくひくと動き出して赤堀を絶頂へ導いていく。
まだ蒼木の中を味わっていたかったがもう限界が近づいてきていた。
彼の中をぬるぬると行き来すると蒼木の身体がビクビクと跳ねた。
 
「蒼木… おまえ…濡れすぎだろっ… 」
 
蒼木は快感を逃がそうとして赤堀の腕を抑えてくるが、股を開かされて抗うことが出来ない為に辛そうに涙を流し続けていた。蒼木を泣かせていることに罪悪感を感じながらも赤堀は興奮していた。
彼のこんな欲望にまみれた顔は初めて見る。
蒼木の最奥に、身体の奥深くに俺の女になった証を大量に吐き出した。
 
その夜、何度も何度も抱いて蒼木の声が掠れるまで赤堀は自分の名前を呼ばせた。
 
 
 


 
 
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