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第22話 入学準備
しおりを挟む「私は泥団子で無双するわ! 」
足を肩幅に広げ、左手は腰に、右手を真上に掲げて、人差し指をピンとたて高らかに宣言する。
教会から帰り部屋に一人入った私は、チートを授かっていたという事実にテンションが上がり、ポージングまで決めてしまった。
やってしまった後でなんだが、アレだね、一人で良かった、うん。
「アリー様」
「ひゃっ! 」
一人だと思っていたのに、急に後ろからユズの声が聞こえて、文字通り飛び上がった。
やめて、やめてよ、嫌な予感しかないけど。
やめてよ……!?
「ユ、ユズ、いつからそこに…? 」
「アリー様が3種類のポージングを決め、その中でも絶妙にダサい、いえ、前衛的なポージングを選び、宣言されたところからですかね」
「序盤中の序盤からじゃないのぉ! 」
「えぇ、小説でいうところのプロローグから拝見できて、大変光栄です」
「やめて、1話からでも死にたくなるのに、プロローグからだなんて、もうあなたも殺して私も死ぬしかないわね」
「血迷い過ぎです、アリー様」
私はユズを捕まえようと、ユズはそれから逃げようと、両者共に一定の距離を保ちながら、部屋をグルグルとする。
前世のスポーツの1つである、カバディを思い出した。
あれ、凄い運動量なのよね。
一通りグルグルしたところで、グゥと私のお腹が鳴ったので一時休戦にして、ユズが持ってきてくれたクッキーと紅茶で共にティータイムにする。
そう言えば両親はどうかしたのだろうか?
「ねぇ、ユズ。お父様とお母様知らない? 」
「存じ上げておりますよ、リアム様とオリビア様ですよね」
「舌引っこ抜くわよ」
「王立魔法学園の入学準備の手続きに行かれております」
シュバッと口を庇いながら答えるユズ。
「あ、そっか」
父はとても多い魔力量と言っていた。
つまり、当然学園の入学規定以上の魔力量が測定された訳で。
来年には、レティとシェリーとココと一緒の学園生になる訳だ。
王立魔法学園については、レティが入学するという時に説明をされたので覚えている。
学園は、今私が住んでいる王都【エルガ】から馬車で1時間ほどの所にある学園都市【ナミヤ】の中央に位置する。
一足先に入学しているレティによると、『一日じゃ回りきれない広さ』の学園らしい。
詳しい広さは私も分からない。
そして全寮制ではあるのだが、入学するのがほとんど貴族の子女のため、従者は二人まで連れて行って良いのだそう。
私は、ユズと専属メイドのクラリッサを連れていくつもりだ。
学園では、危険を学ぶことから始めると言っていた。
学園に入学できる時点で、魔力量が多いのは確かであるため、いかに魔力暴走を起こさず安全に魔法が発動できるかということを学ぶらしい。
この魔力暴走というのは、魔力の性質が決まっていないことでも起きやすいのだが、自分の限界を超えて魔力を使ってしまっても起こるらしい。
その話を聞いて、ラノベとかでよくある特訓法ーー魔力を知覚して限界まで使い、魔力量を上げるというものーーをやってなくて良かったと心底思った。
やってたら、必ず起こした、魔力暴走。
うん、五七五に微妙に収まらないのが悔しいわね。
気を取り直して。
魔力暴走は本当に恐ろしいらしく、規模は大小あれど暴走させた本人はまず無事ではいられない。
暴走した魔力に体が中から壊される為だ。
そして、周囲に与える影響もえげつない。
私はまだ感じ取ることができないのだけれど、空気中にも魔力はある。
魔力暴走を1回起こすと、その空気中の魔力まで燃料にして周囲を破壊し尽くすのだという。
本当に怖い、魔力暴走。
NO!ダメ、絶対、魔力暴走。
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