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7.夢から醒めて【R18含む】
3.思いがけない展開
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「えっ? 私が?」
私は今、非常に驚いて口をパクパクさせている。
というのも、私に部署異動命令が下されたのである。
非正規から正社員に昇格するだけでなく、マーケティング部に異動されることになったのだ。
きっかけは会社の商品プロモーション活動におけるイベント開催の時である。
久しぶりの新商品発売のため、社運をかけてのイベントであったため、非正規の経理担当の私までもがかり出されたのであった。
そんなときに私が気付いたことを厚かましく提案すると採用されたのだ。
おかげでイベントは無事に終わり、大成功を収めた。
売れ行きも好調である。
社内の誰かが推薦したのだろうか。
私を正社員にするだけでなく、マーケティングに向いているのではないかという理由で異動された。
ビル内の階が変わるので、見慣れない風景に私は戸惑う。
正直痩せておいてよかった、と思うほど、マーケティング部の人は皆それぞれにファッションにこだわりがあり、おしゃれだ。
しかも若くて優秀な人ばかりだ。
こんな私が……という考えもやめたばかりなのに、復活しそうだ。
マーケティング部の部長も私より若く、30代後半だ。
「会田さんですね。上垣と言います。宜しくお願い致します」
ハキハキとした物言いに、私は少し気後れした。
「あっ、会田です。宜しくお願い致します」
上垣さんは背が少し低いが、スマートな体型をした爽やかな人だ。彼もモテるだろう。
マーケティング部の人数は少なく、少数精鋭なのだろう。
女性が私を含めて二人、男性が上垣さんを含めて三人しかいない。
五人しかいないチームで関西支部の命運を握る……といっても過言ではないかもしれない。
上垣さんが付け加えて言う。
「いやあ、マーケターなんてものすごく貴重な人材ですからね。だからあなたが来てくれて本当に助かります。WEB系の方は経験されたことはないんでしたっけ」
「ああ、はい。ここで非正規として経理担当するまではただの主婦でしたので……あっ、今はバツイチで一人暮らしですが」
「はは、スキルはいくらでも身につけられるから大丈夫ですよ。主婦目線のマーケティングもやっぱり必要ですから」
そうなのだ。
その当該イベントに主婦目線がなかったので、取り入れてはどうかという提案のもとでやったら成功したのだ。スーパーで働いた感覚がいつの間にか身についていたようだ。
デスクを案内され、唯一一人の女性の隣に配置された。
「はじめまして、田部と申します」
田部と名乗った女性は二十代後半で、とてもキラキラしている。ばっちりネイルもしており、私には眩しいほどだ。
「会田と申します。だいぶ年はいってますが、後輩として何卒ご指導下さい。宜しくお願い致します」
「ふふっ、私もまだまだなのでお互い頑張りましょうねっ」
朗らかで親しみやすい人だ。素敵な女性と働けるのは嬉しいなあとほのぼのとしていたところ、向かいのデスクに座っていた若い男性が立ち上がり、「河野といいます」と小さくお辞儀をした。
河野はまだ入ったばかりの新入社員のようだ。肌の弾力が明らかに違い、若々しさが醸し出されている。
二カッと笑うその笑みは年上女性の心を鷲掴みにするに違いない。
そしてもう一人も立ち上がり、「小山といいます」と穏やかな笑みを浮かべた。
メガネを掛けていて、どこか少し熊野先生と似ている。
年は三十になったばかりだそう。
このメンバーでこれから仕事するとなるとワクワクしてきた。
「また次のイベントに向けて準備もありますので、各々宜しくお願い致します」
上垣さんが次回イベントについての概要をプリントした紙を配られた。
せめて役に立てればいいのだが、と私は少し不安を覚える。
「あ、このイベントには社長も来ます」
「えっ?」
河野が素っ頓狂な声を上げた。
そういえば社長のこと知らなかったな。あとで調べておこう、と私は考えた。
イベント開催まであと半年。
大がかりなので、別の部署とミーティングを重ねながら進めていく。
マーケティング部は市場調査、イベント開催場の地域調査、客層を調べた上でのターゲット層の絞りなどを行っていく。
ターゲット層を絞らなければ、イベント開催するにあたってのアプローチ法がかなり変わるのだ。
子持ち世帯をターゲットにするなら、子どもが遊べるスペースも必要だろうし、女性向けならそれなりのアプローチ法が違う。
そういうことを調べ上げて準備を別の部署に促すのがマーケティングの仕事だ。
「よしっ、頑張るぞ!」
私は軽く頬を叩いて、仕事に取り掛かり始めた。
私は今、非常に驚いて口をパクパクさせている。
というのも、私に部署異動命令が下されたのである。
非正規から正社員に昇格するだけでなく、マーケティング部に異動されることになったのだ。
きっかけは会社の商品プロモーション活動におけるイベント開催の時である。
久しぶりの新商品発売のため、社運をかけてのイベントであったため、非正規の経理担当の私までもがかり出されたのであった。
そんなときに私が気付いたことを厚かましく提案すると採用されたのだ。
おかげでイベントは無事に終わり、大成功を収めた。
売れ行きも好調である。
社内の誰かが推薦したのだろうか。
私を正社員にするだけでなく、マーケティングに向いているのではないかという理由で異動された。
ビル内の階が変わるので、見慣れない風景に私は戸惑う。
正直痩せておいてよかった、と思うほど、マーケティング部の人は皆それぞれにファッションにこだわりがあり、おしゃれだ。
しかも若くて優秀な人ばかりだ。
こんな私が……という考えもやめたばかりなのに、復活しそうだ。
マーケティング部の部長も私より若く、30代後半だ。
「会田さんですね。上垣と言います。宜しくお願い致します」
ハキハキとした物言いに、私は少し気後れした。
「あっ、会田です。宜しくお願い致します」
上垣さんは背が少し低いが、スマートな体型をした爽やかな人だ。彼もモテるだろう。
マーケティング部の人数は少なく、少数精鋭なのだろう。
女性が私を含めて二人、男性が上垣さんを含めて三人しかいない。
五人しかいないチームで関西支部の命運を握る……といっても過言ではないかもしれない。
上垣さんが付け加えて言う。
「いやあ、マーケターなんてものすごく貴重な人材ですからね。だからあなたが来てくれて本当に助かります。WEB系の方は経験されたことはないんでしたっけ」
「ああ、はい。ここで非正規として経理担当するまではただの主婦でしたので……あっ、今はバツイチで一人暮らしですが」
「はは、スキルはいくらでも身につけられるから大丈夫ですよ。主婦目線のマーケティングもやっぱり必要ですから」
そうなのだ。
その当該イベントに主婦目線がなかったので、取り入れてはどうかという提案のもとでやったら成功したのだ。スーパーで働いた感覚がいつの間にか身についていたようだ。
デスクを案内され、唯一一人の女性の隣に配置された。
「はじめまして、田部と申します」
田部と名乗った女性は二十代後半で、とてもキラキラしている。ばっちりネイルもしており、私には眩しいほどだ。
「会田と申します。だいぶ年はいってますが、後輩として何卒ご指導下さい。宜しくお願い致します」
「ふふっ、私もまだまだなのでお互い頑張りましょうねっ」
朗らかで親しみやすい人だ。素敵な女性と働けるのは嬉しいなあとほのぼのとしていたところ、向かいのデスクに座っていた若い男性が立ち上がり、「河野といいます」と小さくお辞儀をした。
河野はまだ入ったばかりの新入社員のようだ。肌の弾力が明らかに違い、若々しさが醸し出されている。
二カッと笑うその笑みは年上女性の心を鷲掴みにするに違いない。
そしてもう一人も立ち上がり、「小山といいます」と穏やかな笑みを浮かべた。
メガネを掛けていて、どこか少し熊野先生と似ている。
年は三十になったばかりだそう。
このメンバーでこれから仕事するとなるとワクワクしてきた。
「また次のイベントに向けて準備もありますので、各々宜しくお願い致します」
上垣さんが次回イベントについての概要をプリントした紙を配られた。
せめて役に立てればいいのだが、と私は少し不安を覚える。
「あ、このイベントには社長も来ます」
「えっ?」
河野が素っ頓狂な声を上げた。
そういえば社長のこと知らなかったな。あとで調べておこう、と私は考えた。
イベント開催まであと半年。
大がかりなので、別の部署とミーティングを重ねながら進めていく。
マーケティング部は市場調査、イベント開催場の地域調査、客層を調べた上でのターゲット層の絞りなどを行っていく。
ターゲット層を絞らなければ、イベント開催するにあたってのアプローチ法がかなり変わるのだ。
子持ち世帯をターゲットにするなら、子どもが遊べるスペースも必要だろうし、女性向けならそれなりのアプローチ法が違う。
そういうことを調べ上げて準備を別の部署に促すのがマーケティングの仕事だ。
「よしっ、頑張るぞ!」
私は軽く頬を叩いて、仕事に取り掛かり始めた。
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