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5.高校時代
2.しっかりしろ私
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「……何? 人の顔をじっと見つめて」
「何でもないよ」
いつの間にか遠野くんを見つめていたようだ。失礼だった、と思い目をそらした。
「いや、構わんよ? オレのことじっと見つめてもらっても。やっとオレの魅力に気付いた-?」
軽やかに冗談を飛ばす遠野くんは非常に高校生として魅力的なのだろう。
「そうかもね」
私がぽつりと独りごちると、遠野くんはしっかりその言葉を拾っていたようで、「それなら良かった」とはにかんだ。
「オレ、ずーっと気持ち変わってないから」
唐突な遠野くんの告白に、私は動揺する。
「いや、何を言うてん……。今は百合子ちゃんの話……」
「うん、分かってるよ。さりげなく便乗した」
嫌味じゃないのが憎らしい。
「私には彼氏が……」
「分かってるけど、別に結婚したわけでもないし」
「何、その理屈」
ああ、こうやって重たくなりそうな話に軽さを加えて、相手の心をほぐさせる天才なのだろうな。
だから魅力的なのだろう。
大人になって、結婚したらどうなるんだろう。
前の人生では考えもしなかったことを考えるのは、意味があるに違いないが……。
「彼氏に悪いけど……オレ、奪う気でいるから」
別に賢太くんは彼氏でもなんでもないが、そうストレートに言われるとグッとくるものがある。
「なんで私なの?」
素朴な疑問だった。
「塾にいた時にさ、先生とかに対してもめっちゃ気を遣ってたじゃん。覚えてる? 担当の先生が具合悪そうにしてたの。他の人は気付かないか、面倒臭くて気付かないふりか、スルーしてたかじゃん。でも会田さんはまっすぐに心配してたでしょ」
確か中学受験のすごく大事な冬休みに先生がストレスで胃をやられていたのを覚えている。
あの時は顔面蒼白で痛みで顔を一瞬だけゆがませても、気を取り直して平気な顔を繕っていた。
でも身体が小刻みに震えていた。
受験直前に穴を空けるわけにはいかないのだ――。
そんな先生に、休むよう促したんだった。
「よく覚えているね」
「うん、好きになったきっかけだもん」
「さらっと恥ずかしいこと言わないで」
遠野くんはまっすぐな人だ。
好きになった理由もまた、私をときめかせる。
顔じゃないんだな、と分かる。
「顔で好きになったんじゃないんだ?」
「顔は……、確かに綺麗だけど、そこまでじゃないかな……あ、語弊あるな。そこまでっていうか、それだけで一目惚れとかはしないかなって意味ね」
ああ、あちぃ、とシャツをぱたぱたさせた時に垣間見えた遠野くんの胸板。
しっかりと筋肉が盛り上がっていて、若い肉体が強調されている。
――ダメだ、ガン見するんじゃねえ! ヤバい。
遠野くんに性的な魅力を感じてどうするんだ。
その引き締まった身体と精悍な顔に、ガッツリ抱かれたい欲望をかき立てられてしまう。
「……大丈夫? 顔赤いよ。照れてる?」
「照れてる」
素直に認めた方が言い逃れしなくていい、と思った。
「そっか、すっげ嬉しい」
爽やかに笑うその顔も、色気があるのだ。
遠野くんって色気あるんだ。
賢太くんほど整った顔ではないが、妙な色気があって私を困惑させる。
15、16歳のボーイに欲情……というか、私ってば若い男……いやまだ考えてみれば子供な年齢の少年たちに欲情してないか?
――うわあ、なんかやだ。そこまで落ちぶれてないッ! しっかりしろ、私!
「どうした、今度は苦しそうだな。ははっ、会田さん面白いなあ。コロコロと表情を変えるんだもんな」
「へへ……百合子ちゃんにも言われる」
最近身体がムズムズしてしまう。
性欲なのだろう。
この強い性欲のせいで人生終わってしまったのだから。
今回の人生では決して自分の性欲に振り回されまい、と決めたけれど、早くも揺らいでしまいそうで怖い。
「また、こうやって会おうよ。サッカーない日とか……」
「友達とも遊びたいんじゃないの?」
「まあそうだけど、大概同じサッカーだから。会田さんと二人きりで過ごしたいな」
「遠野くん、モテるでしょ? いっぱい可愛い子寄ってくるじゃん?」
「いや、オレにも選ぶ権利あるでしょ」
それもそうだ。
「オレは会田さんとデートすることを選んでるの」
「私にも選ぶ権利はある……よね?」
「勿論。断ってくれてもいいよ? それで友達じゃなくなるってことはないから。というか、前から振られ続けてるし」
それは確かにそうだ。
遠野くんはあれ以来全くアプローチしなかったわけではない。
ことある毎に何かと誘ってきた。
文化祭で一緒に回らないかという誘いも、修学旅行で一緒の斑にならないか、とか色々アプローチしてきた。
けれど私はそそくさと彼氏がいるから、という理由のみで断ってきた。
彼にとって断られるのは今に始まったことではない。
「……ちょっと考えるわ」
「え、断るんじゃなくて?」
「うん、考える」
「やった。マジで嬉しいんだけど」
ほんと、しっかりしないと……私。
遠野くんの熱いアプローチに負けてしまうようなことがあってはならないのに――。
男に振り回されたくないとずっと思い続けてきたのに。
「何でもないよ」
いつの間にか遠野くんを見つめていたようだ。失礼だった、と思い目をそらした。
「いや、構わんよ? オレのことじっと見つめてもらっても。やっとオレの魅力に気付いた-?」
軽やかに冗談を飛ばす遠野くんは非常に高校生として魅力的なのだろう。
「そうかもね」
私がぽつりと独りごちると、遠野くんはしっかりその言葉を拾っていたようで、「それなら良かった」とはにかんだ。
「オレ、ずーっと気持ち変わってないから」
唐突な遠野くんの告白に、私は動揺する。
「いや、何を言うてん……。今は百合子ちゃんの話……」
「うん、分かってるよ。さりげなく便乗した」
嫌味じゃないのが憎らしい。
「私には彼氏が……」
「分かってるけど、別に結婚したわけでもないし」
「何、その理屈」
ああ、こうやって重たくなりそうな話に軽さを加えて、相手の心をほぐさせる天才なのだろうな。
だから魅力的なのだろう。
大人になって、結婚したらどうなるんだろう。
前の人生では考えもしなかったことを考えるのは、意味があるに違いないが……。
「彼氏に悪いけど……オレ、奪う気でいるから」
別に賢太くんは彼氏でもなんでもないが、そうストレートに言われるとグッとくるものがある。
「なんで私なの?」
素朴な疑問だった。
「塾にいた時にさ、先生とかに対してもめっちゃ気を遣ってたじゃん。覚えてる? 担当の先生が具合悪そうにしてたの。他の人は気付かないか、面倒臭くて気付かないふりか、スルーしてたかじゃん。でも会田さんはまっすぐに心配してたでしょ」
確か中学受験のすごく大事な冬休みに先生がストレスで胃をやられていたのを覚えている。
あの時は顔面蒼白で痛みで顔を一瞬だけゆがませても、気を取り直して平気な顔を繕っていた。
でも身体が小刻みに震えていた。
受験直前に穴を空けるわけにはいかないのだ――。
そんな先生に、休むよう促したんだった。
「よく覚えているね」
「うん、好きになったきっかけだもん」
「さらっと恥ずかしいこと言わないで」
遠野くんはまっすぐな人だ。
好きになった理由もまた、私をときめかせる。
顔じゃないんだな、と分かる。
「顔で好きになったんじゃないんだ?」
「顔は……、確かに綺麗だけど、そこまでじゃないかな……あ、語弊あるな。そこまでっていうか、それだけで一目惚れとかはしないかなって意味ね」
ああ、あちぃ、とシャツをぱたぱたさせた時に垣間見えた遠野くんの胸板。
しっかりと筋肉が盛り上がっていて、若い肉体が強調されている。
――ダメだ、ガン見するんじゃねえ! ヤバい。
遠野くんに性的な魅力を感じてどうするんだ。
その引き締まった身体と精悍な顔に、ガッツリ抱かれたい欲望をかき立てられてしまう。
「……大丈夫? 顔赤いよ。照れてる?」
「照れてる」
素直に認めた方が言い逃れしなくていい、と思った。
「そっか、すっげ嬉しい」
爽やかに笑うその顔も、色気があるのだ。
遠野くんって色気あるんだ。
賢太くんほど整った顔ではないが、妙な色気があって私を困惑させる。
15、16歳のボーイに欲情……というか、私ってば若い男……いやまだ考えてみれば子供な年齢の少年たちに欲情してないか?
――うわあ、なんかやだ。そこまで落ちぶれてないッ! しっかりしろ、私!
「どうした、今度は苦しそうだな。ははっ、会田さん面白いなあ。コロコロと表情を変えるんだもんな」
「へへ……百合子ちゃんにも言われる」
最近身体がムズムズしてしまう。
性欲なのだろう。
この強い性欲のせいで人生終わってしまったのだから。
今回の人生では決して自分の性欲に振り回されまい、と決めたけれど、早くも揺らいでしまいそうで怖い。
「また、こうやって会おうよ。サッカーない日とか……」
「友達とも遊びたいんじゃないの?」
「まあそうだけど、大概同じサッカーだから。会田さんと二人きりで過ごしたいな」
「遠野くん、モテるでしょ? いっぱい可愛い子寄ってくるじゃん?」
「いや、オレにも選ぶ権利あるでしょ」
それもそうだ。
「オレは会田さんとデートすることを選んでるの」
「私にも選ぶ権利はある……よね?」
「勿論。断ってくれてもいいよ? それで友達じゃなくなるってことはないから。というか、前から振られ続けてるし」
それは確かにそうだ。
遠野くんはあれ以来全くアプローチしなかったわけではない。
ことある毎に何かと誘ってきた。
文化祭で一緒に回らないかという誘いも、修学旅行で一緒の斑にならないか、とか色々アプローチしてきた。
けれど私はそそくさと彼氏がいるから、という理由のみで断ってきた。
彼にとって断られるのは今に始まったことではない。
「……ちょっと考えるわ」
「え、断るんじゃなくて?」
「うん、考える」
「やった。マジで嬉しいんだけど」
ほんと、しっかりしないと……私。
遠野くんの熱いアプローチに負けてしまうようなことがあってはならないのに――。
男に振り回されたくないとずっと思い続けてきたのに。
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