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4.中学校時代
11.夏休み
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中学生の夏休みって、どんな感じだったのかすっかり忘れていた。
前の人生ではどんな風に過ごしていたのだろう。
記憶がすっぽりと落ちていて、思い出そうとしても思い出せない。
母親に殴られまいと機嫌を伺い、ビクビクして暮らしていたことはいつまでも覚えている。
――どうしてたっけ。
目の前に賢太くんがいる。
ここでは静かにしないといけない図書館。
賢太くんはデートしようと言ったものの、宿題が多すぎて勉強しないといけないらしい。
でも私に会いたいらしく、ほぼ毎日宿題を一緒にするために図書館の自習室に来ている。
図書館がデートの場所、ということになったのだが。
一向に話し掛けてこない賢太くんにしびれを切らして訊ねる。
「ねえ、いつまで勉強するの?」
賢太くんが顔を上げて、私をじっと見つめる。
「……何?」
「何でもない。これ終わったらどっか行こう」
すぐに目を伏せて問題集に取り掛かる賢太くんを見て、私も諦めてやれるところまで問題を解いていく。
カリカリとシャープペンシルでノートを走らせる音が聞こえてくるばかりだった。
もうちょっと甘い展開を期待していたのだろうか、自分は。
やっぱり男に言い寄られて気持ち良くなりたいのかな……。
自己肯定感が高まったような錯覚があるから。
愛されてるんだ、と実感が湧きやすいから。
今回の人生でもそれを求めてしまうのか――そんな危うい自分が嫌だ。
男に期待通りの展開をしてくれないと失望してしまう自分が嫌だ。
どうしたらいいんだろう。
どうすれば、健全な愛に満たされることが出来るのだろうか――。
親に愛されるのは絶望的に近い。
だからといって代理の愛を求めちゃいけないって前の人生で嫌というほど思い知らされたのに、学べていないのか。
「どうした? 難しい顔して」
気が付いたら賢太くんがじっとこちらの顔を覗き込んでいた。
「ううん」
「なんか嫌なことでもあった? お母さんに」
「うん……それはいつも通り」
「いつも通りって?」
「いつも通りだよ。いつも通り……」
「そっか。辛い思いをしてるんだな」
やめて。
涙腺が崩壊する。
「前も言ったけどさ、オレがいるから。一人で抱えるんじゃねえぞ」
「賢太くん……」
「さ、どっか行こうぜ。どこ行きたい?」
「うん」
こうして私は賢太くんと二人でほとんどの夏休みを過ごした。
のどかな夏休みだったように思う。
今振り返ってみれば、賢太くんはなるべく家にいる時間を減らしてくれたのかな、と考えた。
家にいれば、母親と過ごすことになり、緊張感で私がどうにかなりそうだと考えたのだろうか。
実際、前の人生では精神を少しずつ破壊されていったからだ。
男狂いになったのも――その不安定からによるもの。
前の人生の精神がやり直し人生においてもだいぶ影響を来している。
それぐらい、私は親に心を破壊された。
あれから、賢太くんはキスをしてこなかった。
どういうつもりだったのだろうか、あのファーストキスは。
訊きたいけど訊けない。
気になるけれど、賢太くんが口を開かない限り、そっとしておくべきなのだろうか――。
夏休み中に神田先輩と会うことがなかった。
次に会う約束をしていなかったせいだろう。
それでいいような気がした、何となく。
こうして私の中学一年生の夏休みは終わった。
前の人生ではどんな風に過ごしていたのだろう。
記憶がすっぽりと落ちていて、思い出そうとしても思い出せない。
母親に殴られまいと機嫌を伺い、ビクビクして暮らしていたことはいつまでも覚えている。
――どうしてたっけ。
目の前に賢太くんがいる。
ここでは静かにしないといけない図書館。
賢太くんはデートしようと言ったものの、宿題が多すぎて勉強しないといけないらしい。
でも私に会いたいらしく、ほぼ毎日宿題を一緒にするために図書館の自習室に来ている。
図書館がデートの場所、ということになったのだが。
一向に話し掛けてこない賢太くんにしびれを切らして訊ねる。
「ねえ、いつまで勉強するの?」
賢太くんが顔を上げて、私をじっと見つめる。
「……何?」
「何でもない。これ終わったらどっか行こう」
すぐに目を伏せて問題集に取り掛かる賢太くんを見て、私も諦めてやれるところまで問題を解いていく。
カリカリとシャープペンシルでノートを走らせる音が聞こえてくるばかりだった。
もうちょっと甘い展開を期待していたのだろうか、自分は。
やっぱり男に言い寄られて気持ち良くなりたいのかな……。
自己肯定感が高まったような錯覚があるから。
愛されてるんだ、と実感が湧きやすいから。
今回の人生でもそれを求めてしまうのか――そんな危うい自分が嫌だ。
男に期待通りの展開をしてくれないと失望してしまう自分が嫌だ。
どうしたらいいんだろう。
どうすれば、健全な愛に満たされることが出来るのだろうか――。
親に愛されるのは絶望的に近い。
だからといって代理の愛を求めちゃいけないって前の人生で嫌というほど思い知らされたのに、学べていないのか。
「どうした? 難しい顔して」
気が付いたら賢太くんがじっとこちらの顔を覗き込んでいた。
「ううん」
「なんか嫌なことでもあった? お母さんに」
「うん……それはいつも通り」
「いつも通りって?」
「いつも通りだよ。いつも通り……」
「そっか。辛い思いをしてるんだな」
やめて。
涙腺が崩壊する。
「前も言ったけどさ、オレがいるから。一人で抱えるんじゃねえぞ」
「賢太くん……」
「さ、どっか行こうぜ。どこ行きたい?」
「うん」
こうして私は賢太くんと二人でほとんどの夏休みを過ごした。
のどかな夏休みだったように思う。
今振り返ってみれば、賢太くんはなるべく家にいる時間を減らしてくれたのかな、と考えた。
家にいれば、母親と過ごすことになり、緊張感で私がどうにかなりそうだと考えたのだろうか。
実際、前の人生では精神を少しずつ破壊されていったからだ。
男狂いになったのも――その不安定からによるもの。
前の人生の精神がやり直し人生においてもだいぶ影響を来している。
それぐらい、私は親に心を破壊された。
あれから、賢太くんはキスをしてこなかった。
どういうつもりだったのだろうか、あのファーストキスは。
訊きたいけど訊けない。
気になるけれど、賢太くんが口を開かない限り、そっとしておくべきなのだろうか――。
夏休み中に神田先輩と会うことがなかった。
次に会う約束をしていなかったせいだろう。
それでいいような気がした、何となく。
こうして私の中学一年生の夏休みは終わった。
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