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2.幼少時代
3.幼児時代
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赤ん坊時代を経て、幼児に成長したことで動ける範囲が拡がった。
だが、頭身のバランスが非常に悪く、相当に気をつけないと転んでしまう。
そう、頭が重たいのだ。それだけでバランスを崩しやすい、危なっかしい。
そりゃ思うように動けないのは当たり前だし、手先のコントロールもなかなか上手くいかないのは至極当然のことだった。
だが母はそれがイライラするらしく、うまく出来ない私に対して「何してんの! 早く!」と急かしてくる。
私も子供に対してそうやって急かした。
改めて、我が子にひどいことをしたのだと今になって理解するとは……。
母はいつも余裕がない。
父がほとんど帰ってこないし(だが浮気しているとかそういうのではない。本当に仕事人間なのだ)、家事のことや子供のことはほったらかし。
家にどんなにお金があっても、家族が繋がっていなかった。
兄は兄で色々思うところがあり、幼い身体で一生懸命親を見て、気を遣っている。
健気な兄。
妹がいるから、兄としてずっと我慢してきたのだと思うと、涙が出てきた。
――お兄ちゃん、ごめんね。ずっと誤解してきた。
前の人生の兄は、私に対して邪険にしていた。
何かをする度に文句を言い、「母さんは妹に甘すぎる」と叱っていた。
兄の視点からしたら、母は私を甘やかしていたように見えたのだろう。
でもそれもとんでもない誤解だと、今の私なら言える。
兄もまた、毒親の被害者だったのだ――。
私は兄に抱きつき、「お兄ちゃん、大好き」とにっこりと笑いかけた。
兄はそんな妹が可愛くて、抱き返してくれる。
「大好きだよ、宣子」
私の頭を優しく撫でてくれる。
せめて、親が愛してくれないのなら、私が兄を愛そう。
にこにこと笑いかけてくる兄を見上げながら、前の人生の冷たい目をした兄を想った。
「宣子? どっか痛いの?」
兄に心配されて、我に返った。
どうやら涙を流していたようだ。
「ううん……なんでもない……」
「大丈夫? 痛かったら痛いって言っていいんだよ」
そうだ。
兄も最初から冷たい目をしていたわけじゃなかったんだ。
小さい時の兄は本当に優しかったし、思いやりに溢れた子だった。
妹の私をとても大切にしてくれた。
止め処なく溢れ出てくる涙。
止まれ。
止まってってば。
冷たい目をした兄の顔が脳裏にこびりついていて、なかなか離れてくれない。
何が彼をそんな目にさせたのだろう。
目の前にいる優しい目をした兄を見ると、たまらなく悲しくなってくる。
-----------------
その夜、私は色々考えた。
兄をああさせたのは、少なくとも私にも原因があるのだろう、と。
適当に生きている危なっかしい妹に対して嫌悪感を抱いていたのは事実だろう。
だが、それはあくまでも表面的なものでしかない。
現に私の子供二人をとても可愛がってくれた。
兄もまた稼いでいたから、生まれた時からお年玉は一万円をくれた。どういう気持ちで子供たちに接していたのだろうか。
本当の兄の姿を見ていない私は、もう知る由もない。
だが、頭身のバランスが非常に悪く、相当に気をつけないと転んでしまう。
そう、頭が重たいのだ。それだけでバランスを崩しやすい、危なっかしい。
そりゃ思うように動けないのは当たり前だし、手先のコントロールもなかなか上手くいかないのは至極当然のことだった。
だが母はそれがイライラするらしく、うまく出来ない私に対して「何してんの! 早く!」と急かしてくる。
私も子供に対してそうやって急かした。
改めて、我が子にひどいことをしたのだと今になって理解するとは……。
母はいつも余裕がない。
父がほとんど帰ってこないし(だが浮気しているとかそういうのではない。本当に仕事人間なのだ)、家事のことや子供のことはほったらかし。
家にどんなにお金があっても、家族が繋がっていなかった。
兄は兄で色々思うところがあり、幼い身体で一生懸命親を見て、気を遣っている。
健気な兄。
妹がいるから、兄としてずっと我慢してきたのだと思うと、涙が出てきた。
――お兄ちゃん、ごめんね。ずっと誤解してきた。
前の人生の兄は、私に対して邪険にしていた。
何かをする度に文句を言い、「母さんは妹に甘すぎる」と叱っていた。
兄の視点からしたら、母は私を甘やかしていたように見えたのだろう。
でもそれもとんでもない誤解だと、今の私なら言える。
兄もまた、毒親の被害者だったのだ――。
私は兄に抱きつき、「お兄ちゃん、大好き」とにっこりと笑いかけた。
兄はそんな妹が可愛くて、抱き返してくれる。
「大好きだよ、宣子」
私の頭を優しく撫でてくれる。
せめて、親が愛してくれないのなら、私が兄を愛そう。
にこにこと笑いかけてくる兄を見上げながら、前の人生の冷たい目をした兄を想った。
「宣子? どっか痛いの?」
兄に心配されて、我に返った。
どうやら涙を流していたようだ。
「ううん……なんでもない……」
「大丈夫? 痛かったら痛いって言っていいんだよ」
そうだ。
兄も最初から冷たい目をしていたわけじゃなかったんだ。
小さい時の兄は本当に優しかったし、思いやりに溢れた子だった。
妹の私をとても大切にしてくれた。
止め処なく溢れ出てくる涙。
止まれ。
止まってってば。
冷たい目をした兄の顔が脳裏にこびりついていて、なかなか離れてくれない。
何が彼をそんな目にさせたのだろう。
目の前にいる優しい目をした兄を見ると、たまらなく悲しくなってくる。
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その夜、私は色々考えた。
兄をああさせたのは、少なくとも私にも原因があるのだろう、と。
適当に生きている危なっかしい妹に対して嫌悪感を抱いていたのは事実だろう。
だが、それはあくまでも表面的なものでしかない。
現に私の子供二人をとても可愛がってくれた。
兄もまた稼いでいたから、生まれた時からお年玉は一万円をくれた。どういう気持ちで子供たちに接していたのだろうか。
本当の兄の姿を見ていない私は、もう知る由もない。
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