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1.プロローグ

プロローグ

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 目の前に、30にも満たない若い男が頬を赤らめながら、呼吸を荒くしている。
 彼の目の前に二つの豊満な丘があり、その突起を口に含もうと口を開けた。
 ゆっくりと近づいてくる彼の顔。

 その突起を舌でちょんと舐めた瞬間、私は身体をビクつかせた。

「感じやすいんですね」

 もう一つの突起を彼の指で弄くり始める。

「ああっ……!」

 まさかまさかまさか!

 こんなことになるなんて――。

 ちゅうっ、と彼の口が私の乳首を吸い始めた。

「いやっ、ああっ、だめぇ」

 強い快感の波が押し寄せてきて、私は何も考えられなくなる。

「だめっ、ああっ」

 やめて、と口では懇願していても、身体は正直だ。
 しっかりと彼の頭に手を添えて、もっともっと、と促している有様だ。

 もう私の秘部はぐっしょりと濡れているのが分かるくらい、感じていた。

 ――いや、もうそれよりずっと前に私は彼を見る度に濡れていたことを認めなければいけない。

「すごいですね……もうこんなに濡れて……」

 いつの間にか彼の手が私の秘部に伸ばして、指の腹で優しくまさぐっている。

「ねえ……これは何かの間違い……」
「間違いじゃないですよ。なるべくしてなったんですよ」

 きらり、と彼のメガネの縁が照明に反射して光った。
 その奥にある瞳は、うっとりと私を見つめている。

「一目見た時から好きだったんですから」

 彼はそう言いながら、ベルトを外してズボンを脱いだ。
 隆起した男性器が露わになる。

「すみません……まさかこんな早くあなたを抱けるとは思わなかったものですから……コンドーム持って無くて」
「ダメ……今なら間に合うわ……。ね?」

 制止する私の手を優しくどけて、私の中に挿れていく。
「んううっ!」
 硬くて太いものが入っていき、強い圧迫を感じた。

「できちゃったら絶対ちゃんと責任取りますから。てか、もともと付き合う前から結婚したいと思ってましたけどね」
「どさくさ紛れてプロポーズしないでよ」
「すみません、改めてしますから」

 数回ゆっくり優しく突かれて、私の中が彼の物に慣れてきた頃に、彼が私の上に覆い被さってキスをしてきた。

「好きです」
 そう言った途端、今度は激しく腰を動かし始めた。
「ああっ! あッ……」

 腰を振る度に響く淫靡な水音が私を興奮させる。

「大丈夫ですか? 痛くないですか」
 ゆとりを失った彼の顔もまた恍惚に満ちていた。
 私は黙ったまま頷く。

「ありすさんの中、すっごく気持ちいいです……」
 強い摩擦に私は喘ぐしか出来ない。
 こんなに硬くて太いもので突かれたらひとたまりもない。

 乳房を上下に揺らしてよがるしか出来ない私を、彼は見下ろしながら突き続けた。

 もうすぐ40になろうとしているおばさんを、30にもなっていない若い男が抱いているなんて。
 夢物語のようだが、これは現実に起きていること――。

 -------------

 遡ること三ヶ月ほど。

「えっ、本当ですか?」
「ああ、本当だ。新規プロジェクトのリーダーは鷲尾わしおさんに任せようと思ってたんだ」
「嬉しいです、部長! 鷲尾ありす、頑張らせていただきます!」

 今度うちの会社が新規プロジェクトを立ち上げることが決まった時に、リーダーを任されるとは思わなかっただけに喜びが倍以上だった。

 社長筋金入りのプロジェクトらしく、企業イメージアップにも繋がるようなSDGsプロジェクトだ。

 発展途上国に開発協力をするというものだが、普段はそういうことはやらないただの商社だ。
 だが社長が何かに目覚めたのか、営業利益も円安影響で好調なのか「何かいいことをしたい」衝動にかられたらしい。
 とはいえ、商社として仕事もきっちりとやらせていただくというもので、ちゃっかりしているといえばそうなのだが。

 うきうきしながらプロジェクトの概要に目を通す。

 協力団体がNGO団体か、と私は唸った。

 非営利団体とバリバリの営利目的の会社が連携する――上手くいくのだろうか?

「うーん」

 ちょっと不安を覚えた私は、そのNGO団体がどんな団体なのかを改めて公式サイトを見ようと思って検索する。

「何……フューチャーロード……」
 団体名だ。
 直訳すると未来の道。
 まあいかにもって感じかな。

 公式サイトを見つけたので、アクセスしてみた。
 いかにも無料サイトで作ったようなページだった。そこまで予算をかけられないのだろう。
 私はまず会計報告書を見る。

 借金もない、ただの団体のようだ。健全すぎるほどの健全っぷりにちょっと笑ってしまう。
 少なくとも横領や不自然なお金の動きはないようだ。

「まあ、大丈夫か」

 活動報告を開いた。
 色んな写真が羅列しており、主な被写体は子供たちだった。

 カンボジアの貧困家庭にある子供たちだろう。
 水道を引いたり学校を建てたりするのが彼らのメインとなる活動らしい。

「ふーん……」

 私の人生に「ボランティア」とかに全く縁がない。
 機会もなければしようとも思ったことがない。

 自分とは真逆タイプの人間だろうか。
 私が利益第一優先とする人間であり、彼らはその真逆を追求しているかのように見える。

 ――愛、ね。

「何見てるんですか?」

 後輩の小塚がひょっこりと顔を出したので、不意打ちを食らった私は小さく悲鳴を上げた。

「ありすさん、そんな可愛い声出るんですね」

 面白そうに笑う小塚に「失礼ね」と悪態つく。
「プロジェクトリーダーおめでとうございます。で、例の連携団体のサイトを見てたんすか?」

 小塚は私より5つ下だ。

「そう。怪しいのがないかどうかを探っただけ」
「そんなの、連携決定前から散々リサーチしてるでしょうよ」
「そうだけど。あ、あなたには私の下についてもらうわよ」
「えーっ! 忙しくなるなあ」

 そう言いつつもまんざらでもないようだ。

 会社では唯一気が合う男性だ。
 隠しているが、小塚に対して憎からず思っている。

 しょっちゅう二人で飲みに行くし、週末に出掛けたりする。
 そんなときめきをくれるのは小塚ぐらいだった。

「ふふっ、忙しくなるよ~?」
「望むところだぜ~」

 二人して笑うと、上司がこちらを見てきたので、口をつぐんだ。

「頑張ろう、小塚」
「はい、ありすさん」

 このプロジェクトをきっかけに小塚と距離を一気に縮めたいところだ、なんて考えていた。
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