日陰に満ちたあの場所で、君が再び目覚める日

辿り着いた終点の駅は、聞いたことのない田舎町だった。

高校三年生の陽野夏向(ひの かなた)は、駅の車掌、志波道行(しば みちゆき)の提案により、三日間をその町で過ごすことになる。

人が突然眠ってしまう現象を前に町の人々は驚いた様子を見せず、さして気にも留めていない。狼狽える夏向の前に現れたのは木戸瀬千鶴(きどせ ちづる)という少女。

共に時間を過ごし、夏向は自身の家庭環境と兄に対する劣等感から抱く不安について打ち明けた。


「優秀でない自分に価値はないんだ」

「大丈夫。夏向が生きることに、価値も理由も必要無い。何かを成し遂げないといけないわけでもないよ」


それは千鶴が夏向だけに告げた、町の人々全員に告げたい言葉だった。


「価値のない人間なんて、いない。でもね……日陰に満ちたこの場所ではそうもいかないの……」


千鶴もまた、眠りにつく日がやってくる。

原因の分からないこの現象の正体を知った夏向は、ある人物に会いに向かった。
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