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第4章 天空からの贈り物
52話 365日【いちねん】
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季節はすっかり春を過ぎ、桜も見納めが近づいてくるころ。レグルスとミラはとあるショッピングモールに来ていた。今日は週末というだけあって家族連れや、若い高校生ぐらいのカップルたちが多く見られた。
こうやってミラと2人っきりになるのも久しぶりだ。出会って当初の頃は2人でいることが多かったが、今では凛の自宅にミラとカンナ、レグルスが居候しているので2人になることがめっきり減ったのだ。そのため懐かしさと新鮮さがレグルスの心の中で芽生えていた。
「ねぇ、今日は何の日かわかる?」
ミラが唐突にそんなことを聞いてきた。
『何の日』と言われても特に思い当たる節がない。いや、1つあるにはあるけど、ちょっと意地悪してやろう。
「ミラの誕生日とかじゃないし、エイプリルフールもついこの間だし…。何の日だっけ?わかってるわかってる覚えてるからな。ただ今出てこないだけで…。」
「それを覚えてないって言うんじゃない?はぁ、まぁ悠貴が覚えてないのも無理ないかな。期待した私がバカだったわ。」
「俺たちが出会って1年記念日だろ?」
「ちゃ、ちゃんと覚えてるじゃん!!」
そんな他愛ない会話を繰り返しながら俺たちは特に用もないのにショッピングモール内を散策していた。この1年で彼女たちもかなり変わったと思う。普通に近所付き合いもできるようになったし、カンナだって友達ができたし、凛やカンナの夢は7割ぐらいは叶ったのではないだろうか。あとはこのミラの夢だけ。『魔王軍や聖龍軍といった区別をなくして、みんなが仲良く平和で暮らせる世界の実現』。これがミラの夢だ。そしてその夢を叶えるためには直接亜人界に行く以外の方法がない。そのためにはかなり頑張って強くならなければならない。今まで嫌というほもわ知らしめられてきた亜人の理不尽なまでの力。そしてタチの悪さ。それに抗うためには強くならなければ。
レグルスとミラが並行してあるいていると、急にミラが足を止めた。そのことに気づいたレグルスは振り返り、ミラの方へ目線を向ける。すると、ミラが、
「私と付き合ってくれませんか?」
「何に付き合えばいいんだ?」
「そっ、そうじゃなくて。その、交際の申し込みを…。」
ミラが今までに見たことないぐらいに顔を赤くして告白してきた。この『出会って1年記念』の日に。
そりゃあレグルスにとってもミラに告白されるのはとても嬉しいし、レグルス自身ミラたちのことが好きだ。もちろん異性として。いつまでも一緒にいたいと思うし、そうやって共に酸いも甘いも噛み分けていきたいと思っている。だけど、だけれども、
「ごめん、それはできない。すげー嬉しいし、すぐにでも『はい』って言いたい。でも、」
レグルスの予想外の反応にミラが硬直する。しかし、レグルスはさらに言葉を続ける。
「今その言葉に『はい』って答えるのは、俺が許さねぇんだ。俺は弱くてちっぽけで、脆くて情けなくて。お前たちみたいなすごいやつと対等に付き合うだなんてできない。俺の器は小さくて、お前たちが入るとほとんど零れ落ちてしまう。だから、もう少し待ってくれ。精神的にも肉体的にもちゃんと強くなって、お前たちを支えられるぐらいの大きい器になってやるから。その時まで返事を待ってくれないか。」
ミラの口には笑みが浮かんでいた。
必死にミラたちのことを考えてくれているのが嬉しかったのだ。
レグルスの弱さや脆さ、愚かさ、情けなさ。それを誰よりも知っているのはレグルス自身で、誰よりも変えたいと思っているのもレグルス自身だ。
「わかったわ、その言葉忘れないからね。『ちゃんと強くなること』忘れないでよ。」
「あぁ、当たり前だ。ミラこそ忘れんなよ。」
ミラは止まっていた足を再び動かして、レグルスの横へ駆けていき、歩幅をレグルスに合わせる。これは別にフラれたわけではない。ただ、返事が延期になっただけである。というか『強くなる』の期限がわからない。聞いておかなければ。
「ねぇ…。」
ミラが話かけようとしたのとほぼ同時にレグルスが駆け足で前へ出た。タイミングの悪さにミラが呆気にとられていると、レグルスが振り返り、
「俺、この1年間必死に特訓して強くなるから!そんで俺の方から交際を申し込むから!だからさ、その時まで、」
まだだ、まだ泣いちゃダメだ。
ミラの目には涙が溢れていた。
なぜ、こんなに涙が出てくるのかわからなかった。けど、やっぱりミラたちのために精一杯強くなろうとしてくれているのが嬉しいのだ。嬉しいから涙が溢れてくるのだ。
ミラは涙を精一杯堪えながら言葉の続きを待つ。
レグルスの言葉は少し間を開けて放たれた。
「俺に恋していてくれるか?」
こうやってミラと2人っきりになるのも久しぶりだ。出会って当初の頃は2人でいることが多かったが、今では凛の自宅にミラとカンナ、レグルスが居候しているので2人になることがめっきり減ったのだ。そのため懐かしさと新鮮さがレグルスの心の中で芽生えていた。
「ねぇ、今日は何の日かわかる?」
ミラが唐突にそんなことを聞いてきた。
『何の日』と言われても特に思い当たる節がない。いや、1つあるにはあるけど、ちょっと意地悪してやろう。
「ミラの誕生日とかじゃないし、エイプリルフールもついこの間だし…。何の日だっけ?わかってるわかってる覚えてるからな。ただ今出てこないだけで…。」
「それを覚えてないって言うんじゃない?はぁ、まぁ悠貴が覚えてないのも無理ないかな。期待した私がバカだったわ。」
「俺たちが出会って1年記念日だろ?」
「ちゃ、ちゃんと覚えてるじゃん!!」
そんな他愛ない会話を繰り返しながら俺たちは特に用もないのにショッピングモール内を散策していた。この1年で彼女たちもかなり変わったと思う。普通に近所付き合いもできるようになったし、カンナだって友達ができたし、凛やカンナの夢は7割ぐらいは叶ったのではないだろうか。あとはこのミラの夢だけ。『魔王軍や聖龍軍といった区別をなくして、みんなが仲良く平和で暮らせる世界の実現』。これがミラの夢だ。そしてその夢を叶えるためには直接亜人界に行く以外の方法がない。そのためにはかなり頑張って強くならなければならない。今まで嫌というほもわ知らしめられてきた亜人の理不尽なまでの力。そしてタチの悪さ。それに抗うためには強くならなければ。
レグルスとミラが並行してあるいていると、急にミラが足を止めた。そのことに気づいたレグルスは振り返り、ミラの方へ目線を向ける。すると、ミラが、
「私と付き合ってくれませんか?」
「何に付き合えばいいんだ?」
「そっ、そうじゃなくて。その、交際の申し込みを…。」
ミラが今までに見たことないぐらいに顔を赤くして告白してきた。この『出会って1年記念』の日に。
そりゃあレグルスにとってもミラに告白されるのはとても嬉しいし、レグルス自身ミラたちのことが好きだ。もちろん異性として。いつまでも一緒にいたいと思うし、そうやって共に酸いも甘いも噛み分けていきたいと思っている。だけど、だけれども、
「ごめん、それはできない。すげー嬉しいし、すぐにでも『はい』って言いたい。でも、」
レグルスの予想外の反応にミラが硬直する。しかし、レグルスはさらに言葉を続ける。
「今その言葉に『はい』って答えるのは、俺が許さねぇんだ。俺は弱くてちっぽけで、脆くて情けなくて。お前たちみたいなすごいやつと対等に付き合うだなんてできない。俺の器は小さくて、お前たちが入るとほとんど零れ落ちてしまう。だから、もう少し待ってくれ。精神的にも肉体的にもちゃんと強くなって、お前たちを支えられるぐらいの大きい器になってやるから。その時まで返事を待ってくれないか。」
ミラの口には笑みが浮かんでいた。
必死にミラたちのことを考えてくれているのが嬉しかったのだ。
レグルスの弱さや脆さ、愚かさ、情けなさ。それを誰よりも知っているのはレグルス自身で、誰よりも変えたいと思っているのもレグルス自身だ。
「わかったわ、その言葉忘れないからね。『ちゃんと強くなること』忘れないでよ。」
「あぁ、当たり前だ。ミラこそ忘れんなよ。」
ミラは止まっていた足を再び動かして、レグルスの横へ駆けていき、歩幅をレグルスに合わせる。これは別にフラれたわけではない。ただ、返事が延期になっただけである。というか『強くなる』の期限がわからない。聞いておかなければ。
「ねぇ…。」
ミラが話かけようとしたのとほぼ同時にレグルスが駆け足で前へ出た。タイミングの悪さにミラが呆気にとられていると、レグルスが振り返り、
「俺、この1年間必死に特訓して強くなるから!そんで俺の方から交際を申し込むから!だからさ、その時まで、」
まだだ、まだ泣いちゃダメだ。
ミラの目には涙が溢れていた。
なぜ、こんなに涙が出てくるのかわからなかった。けど、やっぱりミラたちのために精一杯強くなろうとしてくれているのが嬉しいのだ。嬉しいから涙が溢れてくるのだ。
ミラは涙を精一杯堪えながら言葉の続きを待つ。
レグルスの言葉は少し間を開けて放たれた。
「俺に恋していてくれるか?」
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