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第3章 異世界からの侵略者

32話 龍王戦争

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「第二次龍王戦争!?」

「そうだ!3年前に聖龍軍が魔王軍の領地を侵略した事が原因で起こった戦争だ。」

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『龍王戦争』とは数千年前に終戦を迎えた戦争である。その戦争は約300年程続き、戦争の傷痕は今でも根強く残っている。
元々亜人族は今の様な二つの軍に分かれてなどいなかったのだ。一つの勢力として、皆平和に暮らすことを望んでいた。しかし、ある日とあるライバル関係にある2人の青年が教えを開いた。
1人は悪の教えの道を進む「邪道派」を、もう1人は正義の教えの道を進む「正道派」を開いた。
それにより亜人界には二つの宗教が生まれ、それぞれの思うがままに宗教に入り、その教えを元に生きることになった。
しかし、まだこの時の亜人界は平和なままだった。しかし、ライバル関係にあった青年2人の言い争いの末、亜人たちは「邪道派」の領地と「正道派」の領地に分けられ、分離されてしまった。
それから50年。ついに、戦争の火種となる出来事が起こる。それは後の初代大魔王サタンとなる悪魔族の亜人が軍隊を作り、魔王軍として「正道派」の領地に侵入したのだ。それに対抗すべく初代青龍となる竜人族の亜人も軍隊を作り聖龍軍として魔王軍を迎え撃った。
これが300年もの間続いた戦争、『龍王戦争』の始まりである。
そんな大きな戦争を終わらせた物。それこそが今ホムラたちが求めている力『血塗られた庭園ブラッド・ガーデン』である。
魔王軍がこの力を使ったため、辺り一面は地獄の様に紅く染まり、人々の血肉が散らばっており、鼻を突くような酷い血の匂いが充満していた。この力により、初代大魔王サタンと初代青龍が死亡し、争う理由が見いだせず、終戦に至った。
だが、知っての通り終戦から1000年経った今でも両軍は互いに牽制している。
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「そして近年新たな動きがあったんだよぉ」

ホムラが呆れた様な態度でミラたちに説明する。何故ここまで親切に教えてくれるのか凛やカンナにはわからなかったが、おそらくミラはホムラとの縁を切ったとは言っているが、2人は切っても切れない関係にあるのだろうと、そう思った。

「聖龍軍の奴らが魔王軍の領地に攻めてきたんだよ!だから魔王軍は今年この人間界を支配して領地を増やすことにした。」

ホムラが言っている事が嘘か真かわからないが、真である可能性も十分ある。ここ最近亜人との接触が多い気がする。レグルスが人間だった時に亜人なんて見たこともなかったのに今年になってミラと出会い、ことある事に亜人に出会っている。

「だからといって私とあなたが縁を切ったことに変わりはない。もし人間界を支配しようものなら立ちふさがるだけ。用が済んだなら帰って!!」

魔王軍が勝つために人間界を支配して民間の平和を奪う。そんなことレグルスだったら許さないだろうとミラは思った。もし今レグルスが起きていたら先ほどミラが言ったことと同じことを言うだろう。

「クソっ、わかったよ!!次に来た時は必ず亜人界に帰らせてやるからな!覚えてろ!!」

ホムラはそう言うと、日没直前の紅く染まる大空に時空の歪みを作り出し、亜人界へと帰っていった。

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「第二次龍王戦争ねぇ…。そんな事が起こってるなんて全然知らなかった。私。」

「ウチもずっと山にいたから知らなかった。」

「私は人間界に侵略しに行った魔王軍の亜人を探すためにこの人間界に来たから知ってはいるけど。」

凛の家へ帰る途中、3人はそんなことを話していた。レグルスは未だに目を覚まさず、凛の背中の上で眠っている。
凛は『第二次龍王戦争』のことを知っているようだが、

「どうして勃発したのかは分からないの。」

と言う。凛が言う通りこの戦争がいつ始まったのか知る亜人は数少ない。突然戦争が始まって戦っている、そんな状況なのだ。
ホムラが言っていた事が正しければ。

「聖龍軍の侵略が原因ねぇ…。」

「まぁ、悩んでても解決するわけでもないし、早く家に帰ってご飯食べよ!」

「それもそうね。」

後に大きな事件に巻き込まれることなど知らずに、3人は家に帰っていった。
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