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第2章 商店街魚人闘争

21話 初めての魔法とマナ欠乏症

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水術拳法とは、魚人ならば誰もが使えると言っていいほど有名な拳法である。魚人たちは生まれながらにして水の恩恵を受けている。その恩恵みずを具現化し攻防の手段として利用する。それが水術拳法だ。特にこのジャック・シャークは魚人の中でもトップクラスの水術拳法の使い手として知られている。

「魔王軍幹部というだけあってそれ相応の力を持っているわ。気をつけないと私たちなんて一瞬でやられてしまうわ。」

「おぉ。ミラやないか。何でお前がこいつらと一緒におるんや。裏切り者が。」

「私は私の意志でここにいるの。誰に何と言われようと私の意志は変わらない!」

「愚かな!まだそんなくだらない夢を見ているのか!そんな夢叶うわけわけねぇんだよ!諦めろ!!」

ミラの夢。それは、魔王軍や聖龍軍といった区別を無くして、みんなが仲良く平和な世界を築くこと。しかし、魔王軍にも、聖龍軍にも馬鹿された。そして今もこの魚人ジャック・シャークにも…

「何がくだらない夢だ!!なにも知らねぇで人の夢を馬鹿にするな!!何が叶うわけねぇ夢だ!!やってみないとわかんねぇだろうが!!ミラがどんなにこの夢を叶えたいと思っているか知らねぇだろ!!人の夢を馬鹿にするやつを俺は許さねぇ!!」

ミラの夢を叶えさせる。それがレグルスの夢であり、レグルスの決意である。ミラの夢だけじゃない。凛の夢も、カンナの夢も叶えさせる。そのためにレグルスは命を懸けてでも彼女たちを守ると、そう決意した。それを全く事情も知らない人に馬鹿された事がどうしても許せなかった。

「いいか!力がある者こそが正義だ!力がある者だけが夢を語ることを、夢を叶えることを許される!お前らみたいな雑魚が夢を語るんじゃねぇ!!」

「だったら、俺たちはお前を倒して夢を叶えてみせる!!」

レグルスは自分の右手をジャックの方に出し、意識を集中させる。あの女神ペルセウスが言うには魔法の詠唱は人それぞれ違うらしく、魔法を使う時にならないとわからないらしい。その魔法を使う時が今なのだが、

「水術拳法『鮫槍』!」

ジャックが水の恩恵ちからを使い、水の槍を辺りに出現させて、それらをレグルスに向かって放った。
レグルスは今も意識を集中させて、魔法を使おうとしている。ジャックが放った槍がレグルスに直撃しようとした瞬間、

「キタ!!『火焔フレイム』!!」

レグルスが出している右手から火の弾が放たれる。その火の弾で水の槍を防ぐと、

超火焔ギガフレイム!!」

巨大な火の球体を作り出し、ジャックの方に放つ。ジャックも水術拳法で防ごうとするも、あっけなく球体に呑まれる。辺りは焼け野原となり、レグルスはその場に倒れ込んだ。

「クソッ…力が…」

体に力が入らない。さっきまであんなに元気だったのに。魔法を使ったからだろうか、それにしてもこんなに体力がなくなるものか?転生した際に体力を増やしてもらったはずなのに。
ミラたちが近寄ってきて、

「悠貴、動かないで。これはマナ欠乏症よ。これ以上無茶すると、また死んでしまうことになるかもしれないわ。」

そう告げられた。
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