12 / 93
第1章 タチの悪い亜人がやって来たんだが。
番外編 縁日の約束
しおりを挟む
この話は本編とは関係ない番外編です。
1章はこの話でおしまいです。
──────────────────────
1学期が終わり、夏休みが始まって3日が経った。今日は悠貴の住んでる街で縁日が開かれている。「人間を信用できない」と言っていたカンナも、すっかり悠貴を信用してくれている。
「私縁日に来たの初めて!こんなにいっぱい人があつまるんだ~!」
ミラが楽しそうにそう言った。
亜人界にはこういうのないのだろうか?
「亜人界にもこういうのはあるけど、これ程賑わっているのは初めて。」
凛も楽しそうにそう言った。
亜人界にもこういうのあるんだな。
「殺されたり…しないですよね…」
「ねぇよ!怖がりすぎだ!」
カンナは少し怯えているようだ。最近、悠貴には懐いてくれたカンナだが、まだほかの人間は無理らしい。
「まぁ、俺がいるから安心しろ。じゃあジュースでも買ってくるからみんなちょっと待ってて。」
「えっー!?今俺がいるからって言ったのに!?」
言ったそばからジュースを買いに行った悠貴に驚くカンナ
「まぁ私たちも一緒にいるから。安心して」
「みんながいてくれるなら安心です。が、殺されないように…」
「それはないかな…。」
--------------------------------------------------------
悠貴が帰って来るのをベンチで待っているミラと凛とカンナ。
大勢の人が辺りを覆っているこの光景を見て、ミラは過去のことを思い出した。ずっと忘れていた記憶を。
「私、さっき縁日初めてって言ったけど、前にここに来ている…」
「───っえ?」
「前に私悠貴にあっている…今はっきり思い出した!確か私、あの時………」
--------------------------------------------------------
当時私は魔王軍の生まれにして異質な性格を持っていた。破壊と混沌を望む魔王軍の生まれなのに、昔から花を愛でるのが好きだった。動物の世話をするのが好きだった。そのため周りからは浮いていた。親からさえも見放されていた。でも自分の信念を貫き通すために私は生きていた。
私は大魔王サタンにも直接会って話した。でも、
「お前1人の存在のためにこの戦いに負けろと、お前はそういうのか?」
「戦う理由などもうありません。今からは…」
「ふざけるなッ!!!家来ども!!こいつをここから追放しろ!!」
私は魔王軍から追放され、聖龍軍にも受け入れられず、人間界にやって来た。
辺りは『縁日』とやらで大盛り上がりだった。闇に染まった夜が縁日のオレンジ色の輝きで照らされていた。
親子でいる人間を見ると、勝手に涙が頬を伝ってきた。
--------------------------------------------------------
私は1人草陰に隠れて泣いていた。
寂しかった。怖かった。仲間が欲しかった。ただそれだけだった。
すると足音が近づいてきた。私は息を殺して、嗚咽を堪えて、ただ足音が遠ざかるのを待っていた。しかし、
「君?こんな所で、何で泣いているんだ?」
「─────ッ!」
私は思わず平手打ちをしてしまった。
------------------------------------------------------
「大丈夫?少しは落ち着いた?」
「あっ…うん…あの…さっきはごめんね…」
「いいよ。気にするな。こっちこそ急にごめんな。俺の名前は橋中悠貴だ。よろしく。」
「私はの名前はミラ…ミラ・シリウスっていうの。」
「ミラか、いい名前だな。」
爽やかな笑顔で私の名前を褒めてくれた6歳ぐらいの男の子は、橋中悠貴というらしい。
「何で泣いてたのか聞いてもいい?嫌だったら別にいいけど…」
「いえ、全部話すわ…」
私は全て悠貴に話した。すると
「なんか分かんねぇけど要するに1人なんだな?お前は」
「うん…」
「そんな湿気た顔してねぇで一緒に縁日行こうぜ!」
「えっ!?私縁日なんて…」
強引に腕を引っ張られ縁日を悠貴と一緒に回った。『たこ焼き』とやらを買って食べたり、『金魚』という魚をすくったり、とにかく楽しかった。人間と亜人は共有できるんだって思った。だって初めて会った亜人の私にこんなに仲良くしてくれるそんな優しい種族なのだから。
しばらく縁日を回ってから少し離れた公園でしゃべっていた。星が美しく輝いていた。
「なぁミラ!約束しよう!」
「フェっ?」
びっくりしすぎて変な声が出てしまった。悠貴は「その声どうやって出したんだよw」と笑ってくれた。
「約束って何の?」
「俺はお前の夢を叶えさせてやりたい。ついさっき会ったばかりの人に言うのもあれだけど…」
「──────ッ」
「でも!お前の行動がすごいって思った。全力で応援しようって思った。だから、もしお前がつまづいて、夢を諦めたくなったらまた俺の前に来てくれ。俺が励ましてやる。そのための約束だ。」
というと悠貴は手を差し出してきた。
「約束ってもっと仲良くなってからするものなんだよ。」
と私は言った。そう言って私たちはお互いの右手の小指を絡ませて約束をした。忘れていた絶対に忘れてはいけない約束。
縁日の約束を…
-------------------------------------------------------
「そんなことがあったんだねぇ。」
「そう。だから私が悠貴の前に再び現れたのも必然だったんだって思ってる。」
少し俯いて笑みを浮かべながらミラはそう言った。
「みんな~!お待たせ~!」
右手にラムネを4本持って悠貴が手を振って帰ってきた。
ミラは恥ずかしさからか頬を赤らめながらそっぽを向いていた。
完
1章はこの話でおしまいです。
──────────────────────
1学期が終わり、夏休みが始まって3日が経った。今日は悠貴の住んでる街で縁日が開かれている。「人間を信用できない」と言っていたカンナも、すっかり悠貴を信用してくれている。
「私縁日に来たの初めて!こんなにいっぱい人があつまるんだ~!」
ミラが楽しそうにそう言った。
亜人界にはこういうのないのだろうか?
「亜人界にもこういうのはあるけど、これ程賑わっているのは初めて。」
凛も楽しそうにそう言った。
亜人界にもこういうのあるんだな。
「殺されたり…しないですよね…」
「ねぇよ!怖がりすぎだ!」
カンナは少し怯えているようだ。最近、悠貴には懐いてくれたカンナだが、まだほかの人間は無理らしい。
「まぁ、俺がいるから安心しろ。じゃあジュースでも買ってくるからみんなちょっと待ってて。」
「えっー!?今俺がいるからって言ったのに!?」
言ったそばからジュースを買いに行った悠貴に驚くカンナ
「まぁ私たちも一緒にいるから。安心して」
「みんながいてくれるなら安心です。が、殺されないように…」
「それはないかな…。」
--------------------------------------------------------
悠貴が帰って来るのをベンチで待っているミラと凛とカンナ。
大勢の人が辺りを覆っているこの光景を見て、ミラは過去のことを思い出した。ずっと忘れていた記憶を。
「私、さっき縁日初めてって言ったけど、前にここに来ている…」
「───っえ?」
「前に私悠貴にあっている…今はっきり思い出した!確か私、あの時………」
--------------------------------------------------------
当時私は魔王軍の生まれにして異質な性格を持っていた。破壊と混沌を望む魔王軍の生まれなのに、昔から花を愛でるのが好きだった。動物の世話をするのが好きだった。そのため周りからは浮いていた。親からさえも見放されていた。でも自分の信念を貫き通すために私は生きていた。
私は大魔王サタンにも直接会って話した。でも、
「お前1人の存在のためにこの戦いに負けろと、お前はそういうのか?」
「戦う理由などもうありません。今からは…」
「ふざけるなッ!!!家来ども!!こいつをここから追放しろ!!」
私は魔王軍から追放され、聖龍軍にも受け入れられず、人間界にやって来た。
辺りは『縁日』とやらで大盛り上がりだった。闇に染まった夜が縁日のオレンジ色の輝きで照らされていた。
親子でいる人間を見ると、勝手に涙が頬を伝ってきた。
--------------------------------------------------------
私は1人草陰に隠れて泣いていた。
寂しかった。怖かった。仲間が欲しかった。ただそれだけだった。
すると足音が近づいてきた。私は息を殺して、嗚咽を堪えて、ただ足音が遠ざかるのを待っていた。しかし、
「君?こんな所で、何で泣いているんだ?」
「─────ッ!」
私は思わず平手打ちをしてしまった。
------------------------------------------------------
「大丈夫?少しは落ち着いた?」
「あっ…うん…あの…さっきはごめんね…」
「いいよ。気にするな。こっちこそ急にごめんな。俺の名前は橋中悠貴だ。よろしく。」
「私はの名前はミラ…ミラ・シリウスっていうの。」
「ミラか、いい名前だな。」
爽やかな笑顔で私の名前を褒めてくれた6歳ぐらいの男の子は、橋中悠貴というらしい。
「何で泣いてたのか聞いてもいい?嫌だったら別にいいけど…」
「いえ、全部話すわ…」
私は全て悠貴に話した。すると
「なんか分かんねぇけど要するに1人なんだな?お前は」
「うん…」
「そんな湿気た顔してねぇで一緒に縁日行こうぜ!」
「えっ!?私縁日なんて…」
強引に腕を引っ張られ縁日を悠貴と一緒に回った。『たこ焼き』とやらを買って食べたり、『金魚』という魚をすくったり、とにかく楽しかった。人間と亜人は共有できるんだって思った。だって初めて会った亜人の私にこんなに仲良くしてくれるそんな優しい種族なのだから。
しばらく縁日を回ってから少し離れた公園でしゃべっていた。星が美しく輝いていた。
「なぁミラ!約束しよう!」
「フェっ?」
びっくりしすぎて変な声が出てしまった。悠貴は「その声どうやって出したんだよw」と笑ってくれた。
「約束って何の?」
「俺はお前の夢を叶えさせてやりたい。ついさっき会ったばかりの人に言うのもあれだけど…」
「──────ッ」
「でも!お前の行動がすごいって思った。全力で応援しようって思った。だから、もしお前がつまづいて、夢を諦めたくなったらまた俺の前に来てくれ。俺が励ましてやる。そのための約束だ。」
というと悠貴は手を差し出してきた。
「約束ってもっと仲良くなってからするものなんだよ。」
と私は言った。そう言って私たちはお互いの右手の小指を絡ませて約束をした。忘れていた絶対に忘れてはいけない約束。
縁日の約束を…
-------------------------------------------------------
「そんなことがあったんだねぇ。」
「そう。だから私が悠貴の前に再び現れたのも必然だったんだって思ってる。」
少し俯いて笑みを浮かべながらミラはそう言った。
「みんな~!お待たせ~!」
右手にラムネを4本持って悠貴が手を振って帰ってきた。
ミラは恥ずかしさからか頬を赤らめながらそっぽを向いていた。
完
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
「お前は彼女(婚約者)に助けられている」という言葉を信じず不貞をして、婚約者を罵ってまで婚約解消した男の2度目は無かった話
ラララキヲ
ファンタジー
ロメロには5歳の時から3歳年上の婚約者が居た。侯爵令息嫡男の自分に子爵令嬢の年上の婚約者。そしてそんな婚約者の事を両親は
「お前は彼女の力で助けられている」
と、訳の分からない事を言ってくる。何が“彼女の力”だ。そんなもの感じた事も無い。
そう思っていたロメロは次第に婚約者が疎ましくなる。どれだけ両親に「彼女を大切にしろ」と言われてもロメロは信じなかった。
両親の言葉を信じなかったロメロは15歳で入学した学園で伯爵令嬢と恋に落ちた。
そしてロメロは両親があれだけ言い聞かせた婚約者よりも伯爵令嬢を選び婚約解消を口にした。
自分の婚約者を「詐欺師」と罵りながら……──
これは【人の言う事を信じなかった男】の話。
◇テンプレ自己中男をざまぁ
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
<!!ホットランキング&ファンタジーランキング(4位)入り!!ありがとうございます(*^^*)!![2022.8.29]>
『絶対に許さないわ』 嵌められた公爵令嬢は自らの力を使って陰湿に復讐を遂げる
黒木 鳴
ファンタジー
タイトルそのまんまです。殿下の婚約者だった公爵令嬢がありがち展開で冤罪での断罪を受けたところからお話しスタート。将来王族の一員となる者として清く正しく生きてきたのに悪役令嬢呼ばわりされ、復讐を決意して行動した結果悲劇の令嬢扱いされるお話し。
【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます
ユユ
ファンタジー
“美少女だね”
“可愛いね”
“天使みたい”
知ってる。そう言われ続けてきたから。
だけど…
“なんだコレは。
こんなモノを私は妻にしなければならないのか”
召喚(誘拐)された世界では平凡だった。
私は言われた言葉を忘れたりはしない。
* さらっとファンタジー系程度
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる