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第1章 タチの悪い亜人がやって来たんだが。

番外編 縁日の約束

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この話は本編とは関係ない番外編です。
1章はこの話でおしまいです。
──────────────────────

1学期が終わり、夏休みが始まって3日が経った。今日は悠貴の住んでる街で縁日が開かれている。「人間を信用できない」と言っていたカンナも、すっかり悠貴を信用してくれている。

「私縁日に来たの初めて!こんなにいっぱい人があつまるんだ~!」

ミラが楽しそうにそう言った。
亜人界にはこういうのないのだろうか?

「亜人界にもこういうのはあるけど、これ程賑わっているのは初めて。」

凛も楽しそうにそう言った。
亜人界にもこういうのあるんだな。

「殺されたり…しないですよね…」

「ねぇよ!怖がりすぎだ!」

カンナは少し怯えているようだ。最近、悠貴には懐いてくれたカンナだが、まだほかの人間は無理らしい。

「まぁ、俺がいるから安心しろ。じゃあジュースでも買ってくるからみんなちょっと待ってて。」

「えっー!?今俺がいるからって言ったのに!?」

言ったそばからジュースを買いに行った悠貴に驚くカンナ

「まぁ私たちも一緒にいるから。安心して」

「みんながいてくれるなら安心です。が、殺されないように…」

「それはないかな…。」

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悠貴が帰って来るのをベンチで待っているミラと凛とカンナ。
大勢の人が辺りを覆っているこの光景を見て、ミラは過去のことを思い出した。ずっと忘れていた記憶を。

「私、さっき縁日初めてって言ったけど、前にここに来ている…」

「───っえ?」

「前に私悠貴にあっている…今はっきり思い出した!確か私、あの時………」


--------------------------------------------------------

当時私は魔王軍の生まれにして異質な性格を持っていた。破壊と混沌を望む魔王軍の生まれなのに、昔から花を愛でるのが好きだった。動物の世話をするのが好きだった。そのため周りからは浮いていた。親からさえも見放されていた。でも自分の信念を貫き通すために私は生きていた。
私は大魔王サタンにも直接会って話した。でも、

「お前1人の存在のためにこの戦いに負けろと、お前はそういうのか?」

「戦う理由などもうありません。今からは…」

「ふざけるなッ!!!家来ども!!こいつをここから追放しろ!!」

私は魔王軍から追放され、聖龍軍にも受け入れられず、人間界にやって来た。
辺りは『縁日』とやらで大盛り上がりだった。闇に染まった夜が縁日のオレンジ色の輝きで照らされていた。
親子でいる人間を見ると、勝手に涙が頬を伝ってきた。

--------------------------------------------------------

私は1人草陰に隠れて泣いていた。
寂しかった。怖かった。仲間が欲しかった。ただそれだけだった。

すると足音が近づいてきた。私は息を殺して、嗚咽を堪えて、ただ足音が遠ざかるのを待っていた。しかし、

「君?こんな所で、何で泣いているんだ?」

「─────ッ!」

私は思わず平手打ちをしてしまった。

------------------------------------------------------

「大丈夫?少しは落ち着いた?」

「あっ…うん…あの…さっきはごめんね…」

「いいよ。気にするな。こっちこそ急にごめんな。俺の名前は橋中悠貴だ。よろしく。」

「私はの名前はミラ…ミラ・シリウスっていうの。」

「ミラか、いい名前だな。」

爽やかな笑顔で私の名前を褒めてくれた6歳ぐらいの男の子は、橋中悠貴というらしい。

「何で泣いてたのか聞いてもいい?嫌だったら別にいいけど…」

「いえ、全部話すわ…」

私は全て悠貴に話した。すると

「なんか分かんねぇけど要するに1人なんだな?お前は」

「うん…」

「そんな湿気た顔してねぇで一緒に縁日行こうぜ!」

「えっ!?私縁日なんて…」

強引に腕を引っ張られ縁日を悠貴と一緒に回った。『たこ焼き』とやらを買って食べたり、『金魚』という魚をすくったり、とにかく楽しかった。人間と亜人は共有できるんだって思った。だって初めて会った亜人の私にこんなに仲良くしてくれるそんな優しい種族なのだから。


しばらく縁日を回ってから少し離れた公園でしゃべっていた。星が美しく輝いていた。

「なぁミラ!約束しよう!」

「フェっ?」

びっくりしすぎて変な声が出てしまった。悠貴は「その声どうやって出したんだよw」と笑ってくれた。

「約束って何の?」

「俺はお前の夢を叶えさせてやりたい。ついさっき会ったばかりの人に言うのもあれだけど…」

「──────ッ」

「でも!お前の行動がすごいって思った。全力で応援しようって思った。だから、もしお前がつまづいて、夢を諦めたくなったらまた俺の前に来てくれ。俺が励ましてやる。そのための約束だ。」

というと悠貴は手を差し出してきた。

「約束ってもっと仲良くなってからするものなんだよ。」

と私は言った。そう言って私たちはお互いの右手の小指を絡ませて約束をした。忘れていた絶対に忘れてはいけない約束。


縁日の約束を…


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「そんなことがあったんだねぇ。」

「そう。だから私が悠貴の前に再び現れたのも必然だったんだって思ってる。」

少し俯いて笑みを浮かべながらミラはそう言った。

「みんな~!お待たせ~!」

右手にラムネを4本持って悠貴が手を振って帰ってきた。
ミラは恥ずかしさからか頬を赤らめながらそっぽを向いていた。


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