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第4章 天空からの贈り物

67話 誰にも譲れない意思

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Twitterの方では報告しましたが、一応。
先週の小説投稿、お休みしてすいませんでした。
夏休みに入ってから僕自身結構忙しくて休んでしまいました。
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「追い詰めたぞ!ミラを返せ!」

ホムラを追いかけてやってきたレグルスは息を切らしながらそう言った。
レグルスの目線の先にはホムラしかいない。囚われているはずのミラもいるはずはのに。

「おい、ミラはどこだ!早く返せ!」

「人のものを勝手に奪っておいて返せはないだろう。元々ミラは俺の義妹いもうとなんだ。俺が所有しているのが正しいのだ。前にも言っただろう。ミラは我々魔王軍の勝利に絶対必要な人材なのだ。わかってくれ。」

「俺の質問に対する返答になってねぇし、またそうやってお前らはミラを道具みたいな扱いしやがって…。いいか!ミラは道具じゃねぇ!!お前らみたいなクズに囚われていいはずねぇんだ!!ミラにも1人の女性として生きていく権利がある!!それを奪おうってんなら俺はお前らを殺してまでも守ってみせる!!」

レグルスはそう吠えるとホムラの方へ突っ込んでいく。ホムラは余裕を浮かべ、ただ立ち尽くしている。

「お前は変わってないな。悪い意味で。いいか、弱い者にに守れるものなんてないんだよ!」

そう言うとホムラは膨大なマナを使い、巨大な火の鳥を出現させ、レグルスの方へ放った。
このホムラの行動にレグルスはニヤリと笑みを浮かべ、尚も突っ走る。レグルスと火の鳥の距離はみるみる縮まり、ついにレグルスは火の鳥に直撃した。

「2000℃の業火に突っ込んで行くとは、2年前よりも弱くなったのでは。」

「悠貴!」

「黙れと言ってるのがわからないのか!俺の言う通りにすればなにも危害は加えない。」

「嘘言わないで!なにも危害を加えないのならば、私を捕まえる必要なんてないじゃない!悠貴が言ってたように私にも女性として生きる権利があるの!」

大きな鳥かごに入れられているミラがホムラに歯向かう。目の前でレグルスが殺られたのだ。黙ってはいないだろう。

「へぇ~2000℃か~。200℃の間違いじゃないか?お前の業火ってのも大したことねぇんだな。」

爆煙の中から額に白く輝く角を生やし、体に炎を纏った男が現れた。
男はどんどんホムラと距離を詰めていく。

「俺の火の鳥を直撃して生きているなんて!」

「悠貴!?どうしたのその姿!?」

「ミラか、そんな所にいたのか。直ぐに出してやるからな。」

そう言うと男、角を生やしたレグルスが掌をミラが囚われている鳥かごの方に向けて炎を放った。鉄でできた鳥かごはレグルスの炎でドロドロに溶けて固まり、ミラは出ることができた。

「俺はこの2年間で、一時的に超越した力を得られる有効魔法『鬼神魔法デーモン』を習得したんだ。ちなみに俺が放てる炎の最高温度は5000℃だ。」

「なるほど、これは驚いた。だが、その力を得たところで扱えなければただの宝の持ち腐れだろう。」

「お前、散々俺たちをバカにしてきたよな。弱い者おれには何も守れねぇだぁ!?ミラは道具だぁ!?」

瞬間、レグルスの姿が消えた。否、消えたのではない。目にも止まらぬ速さでホムラの背後に回り、その熱い拳でホムラの脳天をぶん殴った。
状況の整理が追いつかないまま脳天を殴られたホムラは受身も取れずに顔から地面に叩きつけられた。

「これでわかっただろ。今の俺は弱くねぇって。この力はちゃんと扱えてる。宝の持ち腐れなんかじゃねぇ。それにミラは自分の意思を持って生きている!道具なんかじゃねぇ!!」

ホムラは体に力を入れて腕を震わせながら立ち上がる。頭からは血を流し、それでもなおレグルスたちの前に立ちはだかる。
なぜなら彼にだって誰にも譲れない強い意思があるからだ。

「俺だって意思ってもんがあるんだよ…。大魔王サタンの信頼の下こうして任務に来ているんだ…。返せって言われても返す訳にはいかねぇだろうが!!」

ホムラは吠えた。ただただ吠えた。レグルスに殴られてもう頭は働かない。口から零れる言葉に語彙力など微塵もない。ただ魔王軍大将であるサタンの仰せのままに任務を遂行しているのだというその意思だけでホムラは行動している。

「サタンが君を信頼してる?あんまり嘘はつかない方がいいよ。僕がこうして任務に来ている以上、サタンには君に対する信頼なんてないんじゃない?」

「───ッ!?」

突然、ホムラの声でもレグルスの声でもない男の声がした。
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