上 下
344 / 348

俺は音楽教師です。カウンセラーではない 1

しおりを挟む
 

「では、本日はここまで」

 教本を閉じれば一同が揃って礼をする。
 流石に貴族だけあって礼も無駄に綺麗。

 教材をまとめ、雑談を少し交わした後でガーネストやダイアと「また昼休み」にと手を振り別れ、数歩先の音楽準備室ベストプレイスへ。


「何か飲みますか?」

「いや、結構だ」

 社交辞令的に問いかければ、アレクサンドラは軽く首を振った。
 ソファにかけて貰い、俺は机を探る。

 何故彼がここに居るかといえば、彼のお母上への贈り物を渡すため。

 手渡したリボンのかかった小箱の中身はマカロンとショコラ。

 マオの育児のママ友でもあるお母上とはすっかり仲良し。
 こうして文通&贈り物をしあう仲だ。

 自分で送ってもいいのだが、今回は食べ物なので「自分も送る物があるからよければ一緒に送るが?」と申し出てくれたアレクサンドラのお言葉に甘えた。
 なんせ王族。贈り物のチェックは時間がかかる。

 ガーネストは生徒会の用事があるから先戻ったし、シリウスはさっきの授業で使った楽器の片づけを数人の生徒としてくれてる。
 何気にアレクサンドラと二人になるのは初めてだ。

 と、いうことで。

「興味本位なんですが、聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「アレクサンドラ様は…」

 そして俺が口を開いたその時、トントンとドアをノックする音。

 シリウス片付け早っや!!

 別に思い付きで聞こうと思っただけだからいいけどタイミング悪ー。なんてことはおくびにも出さずドアを開けて片付けの礼を告げる。

「それで?何を聞こうとされていたのだ?」

「いえ…、大したことではないので。お母上にどうぞ宜しくお伝えください」

 苦笑いを少しだけ浮かべ、彼の手元の箱を見遣ってそう告げる。

 何か邪魔してしまっただろうか?と俺とアレクサンドラを見比べるシリウスに小さく笑みを浮かべて大丈夫だと首を横に振った。

「別にシリウスの前で聞かれてまずいことなどない」

 いやーそうはいってもなー…。

「気になるから逆に聞いて欲しいのだが」

 まぁ、確かに中途半端は気になるよな。
 でも話題が話題だし。

「カイザー殿」

 むぅ、相当気になるようだ。
 若干むくれてやがる。

 シリウスが気を遣って「外に出てましょうか?」と問うもアレクサンドラは「構わん」と首を振った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

今日も聖女は拳をふるう

こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。 その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。 そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。 女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。 これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

気が付けば悪役令嬢

karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。 あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

処理中です...