上 下
334 / 348

いつか紡がれる新たな絆に 2

しおりを挟む


 パーティーに於いて飲食は正に避難スポットだ。

 何故なら食事中にむやみやたらに話しかけるのはマナー違反だから。
 声を掛けてくるとしたら親しい相手か、そんなことなど気にしない連中かのほぼ二択。

 なのである意味最終手段。
 とはいえ、貴族に於いてパーティーは単なる道楽ではなくお仕事だ。重要な社交の場で必要不可欠。悠々と食事をしている暇なんぞなく故に最終手段。

「随分とお疲れだね。君が隙を見せるなんて珍しい」

「引く手数多だったんだもの。ちょうど断りにくい方々が続いてね。こっちは女性なんだから紳士として気遣って欲しいものだわ」

 全くもう、と憤る彼女は今日もお色気ムンムンだ。

「カイザー様だって相変わらずモテモテじゃない。でもいつもよりマシかしら?」

「例の噂のお蔭でね」

 思わず苦笑いが漏れた。

 例の噂…つまりは俺が黒竜ジストに剣を向けたアレだ。

 それのお蔭で最近は女性のお声掛けも絡んでくる野郎も減ってはいる。特に後者。

「ダンスは得意じゃないからいいのやら悪いのやら」

 俺の言葉にアイリーンは「よく言うわ」と瞳を眇める。

 いや、マジで。
 ダンス自体は別に苦手じゃないけど、密着すると高確率で相手の心の声が聴こえちゃうんでとは言いたいけど言えない。

 小休憩をとった俺らは名残惜しくも人混みへと戻り、そして出会ったティハルトから「お前らだけ狡いぞ」という視線を向けられた。

 国王陛下におかれましては俺らの比でないぐらいにあらゆるお声掛けがひっきりなしだったらしい。
 そして半ば八つ当たりも兼ねてか捕まった。
 陛下に一言でも挨拶をしたい面々との遣り取りに巻き込まれる俺。ダンスからは逃れられたがこれはこれで面倒臭い。

「あの噂、役に立つな。いっそ積極的に魔王説を押し出すか」

「…やめて」

 狸ジジィ共を相手にしつつ、例の噂のお蔭で飛んでくる嫌味やなんかがいつもより少なく、かつ若干引き気味で引き上げが早いことに気を良くしたティハルトが物騒なことを呟いた。

 便利だからと親友を魔王に仕立てようとすんな。

 あと実際の魔王は恐怖の存在なんかじゃなくて激カワだからな!

 今は夢の中だろう真紅の髪のプリティー魔王を思い浮かべた。

 最近マオは寝る前に俺に絵本を呼んで貰うのがお気に入りだから、今日はご機嫌斜めだったのだが素直に寝てくれただろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

気が付けば悪役令嬢

karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。 あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

【完結】妃が毒を盛っている。

ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。 王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。 側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。 いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。 貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった―― 見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。 「エルメンヒルデか……。」 「はい。お側に寄っても?」 「ああ、おいで。」 彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。 この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……? ※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!! ※妖精王チートですので細かいことは気にしない。 ※隣国の王子はテンプレですよね。 ※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り ※最後のほうにざまぁがあるようなないような ※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい) ※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中 ※完結保証……保障と保証がわからない! 2022.11.26 18:30 完結しました。 お付き合いいただきありがとうございました!

処理中です...