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いつか紡がれる新たな絆に 1

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 貴族ってマジでパーティー多いな……。

 そんなことを思いつつも脚は軽やかにステップを踏む。意識せずとも淀みなく動く脚に我ながら大したものだと自画自賛。地獄の特訓を耐え忍んだ幼い日の俺を脳内で褒めたたえる。

 ……が。

「カイザー様、どうかなさいましたか?」

 やっべっ!!
 うわの空だったの気づかれた!

 俺の擬態もまだまだのようだ。

「いえ、いつにも増してお美しいので見惚れてしまっていました。先日のベビーピンクのドレスも可憐でしたが今日のエレガントなドレスも大人びていてよくお似合いです」

「あ、ありがとうございます…」

 褒め言葉を口にすればダンスのお相手のご令嬢は頬を色づけて俯いた。

 よし、何とか誤魔化せた!

 見掛け優雅に微笑みつつ、俺は内心でガッツポーズを決めた。そして今度こそダンスへと集中する。

 その後もそつなく数人のお相手を務め、内心のお疲れを隠しつつ避難スポットへと向かった。

 避難スポット。
 即ち、知り合いの元へと。

 今回見つけた相手はアイリーン。
 あちらもあちらで男性からのひっきりなしのお誘いに辟易して居たらしく、偶然瞳が合った途端、鮮やかな紅い唇が弧を描いた。

「ちょっと来て?」バイオレットの瞳が雄弁にそう語っている、むしろ「ちょっと顔貸せや」かも知れない。

 まぁ、誘いを逃れたいという目的は同じだからいいんだど…。

「はぁー、疲っかれた」

「アイリーン声。何か取る?」

 合流して周りの男共が散った途端地を出すアイリーンを苦笑いしつつ窘めた。そして豪華絢爛な皿の並ぶテーブルにちらりと視線をやれば頷かれる。

 どうやら本当にお疲れだったようだ。

 マカロンにショコラ、一口サイズのチーズケーキを見栄えよく皿へと盛り付けアイリーンをソファへと誘った。
 因みにマカロンは『リリアーナ』の商品だ。

「んー美味しい。カイザー様もどう?」

 木苺のマカロンを口にして生き返ったとばかりに眼を細めたアイリーンが差し出してくれた皿からビターのショコラを一粒だけ貰う。深い苦みと僅かな甘さが口内へと広がった。
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