ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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外見詐欺は世に溢れている 2

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 ランは男だ。

 ぽよん、と。俺の胸元に感触を伝える二つの塊。
 喉仏を隠す為か、首から覆われるタイプのドレスを身に着けたまごうことなき美女。

 美女にしか見えない眼の前の美人。

 何なの?忍者って何でもありなの?
 肉体変化まで可能ですか?

 どの角度からみても美女にしか見えないランを前に俺は心の中で問いかける。

 何だ…一体何が詰められているんだ?!

 素晴らしいぽよよん触感の正体が気になって無意識に視線がいきそうになる俺でした。


 ランは我が家の忍者集団の中でも一見異質な存在だ。

 今の女装ほどではないが、普段のランも女性に間違われることはしばしば。

 先程も述べたが、色白で上品な顔立ちに、淡い薄藤の髪に藤色の瞳。長い髪は普段の俺と同じように肩のあたりでくくって前へと垂らしている。本人は俺とお揃いだと気に入っているらしい。

 因みに今の俺の髪型は雰囲気を変える為もあって後ろで緩い三つ編みです。ランはアップにしてる。

 おっとりとたおやかな印象で、派手な美人ではないが和服が似合いそうな和風美人。
 実際ランはよく白い羽織のようなものを身に着けている。

 何故なら黒が似合わないから。
 下は他の皆と同じ動き易い黒装束なんだけど、似合わないから任務とか鍛錬の時を除いてはその上に白い羽織を羽織ってる。

 寡黙で若干排他的。
 人付き合いがあまり得意でない影達の中にあって異質な性格。
 あまり人前に姿を現さない彼らと違い、使用人たちとも普通に話し、何より荒事とは無縁に見える。


 余談だが、俺は知っている。

 ウチに入ってすぐのソラが嫋やかな美人であるランに密かにときめいていたことを!!

 まぁ、無理もない。
 ランは美人だし、ハンゾーの鍛錬という鬼のしごき真っ最中だったソラが自分を気遣ってくれる美人にぐらっときても仕方がない。

 その後、性別知って打ちひしがれてたけど……。

 ドンマイ!


 そしてそんなたおやか美人なランさん。

「ご安心下さい、カイザー様」

 藤色の瞳が真っ直ぐに俺を見つめる。

「私は必ず、貴方様のお役に立ってみせます」

『貴方様の敵は全て肉塊へと変えてみせます』


「ワータノモシイナー」

 思わずカタコトになる俺。

 これです。
 ランさんの本性(?)。

 聴こえた心の声の如く、バリッバリの強硬派でいらっしゃいます。
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