ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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他人の振りをさせてください 3

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 問題は、誰が仮面舞踏会に潜入するか。

 それについては一悶着あった。
 そうして決まった人選。

 ゲームの登場人物としてはリリー嬢、サフィア、メラルドの三人だ。

 見知らぬ世界への恐怖もあるのだろう。女の子たちは気が引けがちだった。
 俺だってそんな如何いかがわしい場に純情な女の子連れて行きたくないし。

 そして手を挙げたのがヒロインとしての使命を燃やすリリー嬢。
 友好関係は築けれど、未だに誰とも恋愛面に発展出来ていないヒロイン彼女は割と必死。

 もう友情エンドでもいいんじゃねぇ?

 逆に男性陣は尻込みはしてなかったんだけど、能力面で選んだ。

 何せ会場は人が多い。
 荒事が予想されるし、炎の異能のガーネストや同じく炎の魔術を多用するアレクサンドラでは相性が悪い。
 衣装に火が燃え移って死傷者が出たシャルル6世のような惨劇は御免だ。

 ジストなんて問題外!
 手加減なくぶっぱなしそうなアイツは裏方決定。
 ダイアは攻撃系の異能じゃないし。

 よって、消去法でサフィアとメラルドに決定。

 別にシリウスでも良かったんだけどね、どうせなら攻略対象者の方が良いかと思って。

 そして三枚の招待状の内、男性枠のもう一人。

 俺!!

 ………ではありませーーん!!

 最後の一人はソラでしたー。

 見取り図や商品リストも手に入れて(これはライ経由じゃなく影達ね)、念入りに計画を立て、いざ当日。




 眼が痛く成る程の煌びやかな装飾も、悪趣味な程に毒々しい人々も、噎せかえる程の芳香を放つ花々も見えない暗闇がそこにはあった。

 騒めきに揺れる空気。混じる不安と焦燥。
 アクシデントか演出か、暗闇に惑う人々の中にその声は高らかに響いた。

「誰が呼んだか、呼ばれたか」

 澄んだ高い声音。
 暗闇に支配された空間に突如光を纏って現れた一人の女。


「美少女仮面、ここに見参!!!」


 ○ーラームーン的な決めポーズを作って高らかに声を張り上げたその人物を見ながら、俺は痛む頭を抱えた。

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