ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

文字の大きさ
上 下
307 / 401

他人の振りをさせてください 3

しおりを挟む


 問題は、誰が仮面舞踏会に潜入するか。

 それについては一悶着あった。
 そうして決まった人選。

 ゲームの登場人物としてはリリー嬢、サフィア、メラルドの三人だ。

 見知らぬ世界への恐怖もあるのだろう。女の子たちは気が引けがちだった。
 俺だってそんな如何いかがわしい場に純情な女の子連れて行きたくないし。

 そして手を挙げたのがヒロインとしての使命を燃やすリリー嬢。
 友好関係は築けれど、未だに誰とも恋愛面に発展出来ていないヒロイン彼女は割と必死。

 もう友情エンドでもいいんじゃねぇ?

 逆に男性陣は尻込みはしてなかったんだけど、能力面で選んだ。

 何せ会場は人が多い。
 荒事が予想されるし、炎の異能のガーネストや同じく炎の魔術を多用するアレクサンドラでは相性が悪い。
 衣装に火が燃え移って死傷者が出たシャルル6世のような惨劇は御免だ。

 ジストなんて問題外!
 手加減なくぶっぱなしそうなアイツは裏方決定。
 ダイアは攻撃系の異能じゃないし。

 よって、消去法でサフィアとメラルドに決定。

 別にシリウスでも良かったんだけどね、どうせなら攻略対象者の方が良いかと思って。

 そして三枚の招待状の内、男性枠のもう一人。

 俺!!

 ………ではありませーーん!!

 最後の一人はソラでしたー。

 見取り図や商品リストも手に入れて(これはライ経由じゃなく影達ね)、念入りに計画を立て、いざ当日。




 眼が痛く成る程の煌びやかな装飾も、悪趣味な程に毒々しい人々も、噎せかえる程の芳香を放つ花々も見えない暗闇がそこにはあった。

 騒めきに揺れる空気。混じる不安と焦燥。
 アクシデントか演出か、暗闇に惑う人々の中にその声は高らかに響いた。

「誰が呼んだか、呼ばれたか」

 澄んだ高い声音。
 暗闇に支配された空間に突如光を纏って現れた一人の女。


「美少女仮面、ここに見参!!!」


 ○ーラームーン的な決めポーズを作って高らかに声を張り上げたその人物を見ながら、俺は痛む頭を抱えた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

妹ちゃんは激おこです

よもぎ
ファンタジー
頭からっぽにして読める、「可愛い男爵令嬢ちゃんに惚れ込んで婚約者を蔑ろにした兄が、妹に下剋上されて追い出されるお話」です。妹視点のトークでお話が進みます。ある意味全編ざまぁ仕様。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?

中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。 殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。 入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。 そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが…… ※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です ※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。

よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

処理中です...