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覚悟と決意と、記憶に焼き付いた声 4
しおりを挟む「意外?」
問いかければ、彼はこくりと頷く。
「正直、かなり」
素直な返答に曖昧に笑う。
「俺も自信ないけどね。いざって時に尻込みするかも知れないし。だけど、覚悟だけはしとかなきゃって思ってるよ。迷って、間違って、全部失ってしわまわないように」
「取り敢えず、だ」気合を入れるように俺は拳を握った。
「俺が今できることは子育てを失敗しないことだ!!」
力強く宣言した俺をカマルくんが不思議そうに見てます。あと多分隣の彼も。
「子育て…」
「そう!要はマオが魔術や感情を暴走させない術を見につけて、あの子が人間を嫌いにならないように愛情をもって素直な良い子に育てればいいわけだろう」
「良い子な魔王…」
首をこてんと傾けたカマルと彼が見つめあう。
「大丈夫、多分出来る!!」
何せ俺は、悪役令嬢と俺様攻略対象者をあんな天使に育てあげた男!!
勿論、二人の元々のポテンシャルと天使属性を活かしたに過ぎないが、マオだってあんないい子だし。
うん、いける。
「着地点、そこでいいの?」
胡乱気に突っ込まれたが、問題が起きないのが一番平和じゃんか。
「まぁ、魔族の方が人間よりよっぽど素直でわかりやすいし。貴方に育てられたらほわほわした子に育つかもね」
「それ褒めてる?貶してる?」
「どっちでもない」
「でも魔族って不思議だよなー。自然発生とか成長速度とか」
「そうだね。でも不思議なのは人間の方かもよ?自然界じゃ自立が早くなきゃ生き残れないし、必要とされて生まれる王、本能に従った生き方、人間よりもずっとシンプルで合理的じゃない?」
「ある意味そうかも」
「人も国やら王やら、柵に縛られず自由に生きれればいいのにね」
「や、それはそれで大混乱が起きそうな気も」
統制がなくなった人間を思い浮かべてそう返すも彼は小首を傾げた。
「でも、愚かだと思わない?血だの係累だのに拘ることを。現に貴方の知り合いの女の子たちだってその所為で沢山の人たちに狙われ、利用されそうになってる。魔族みたいに相応しい者が王になればいいのに」
珍しくも饒舌に語る彼を不思議に思った。
「幸いにもこの国の王は優秀みたいだけど。王たる資格を持つ者が王たる資質を持つとは限らないのにね。それでも奴らが尊ぶのはその血筋だ」
この時の声を。
「それなら」
紡がれた彼の言葉を、俺はずっと覚えていた。
「その血がそんなに尊いなら、玉座に鮮血でもぶちまけておけばいい。
それか瓶詰にした血液でも空の玉座に転がしておけばいいのにね」
何故か鮮明に記憶に残ったその言葉を、俺はありありと思い出すことになる。
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