ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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まさかの俺の所為でした 2

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「何故私も同行者に加わってるんでしょう?」

「そりゃあ、危険性を考慮してじゃねぇの?魔獣は兎も角、黒竜も居るわけだし。幾ら騎士でも竜には挑まないから。剣で竜に挑むようなぶっとんだ音楽教師サマの出番だろ」

 ……遺憾である。

 因みにこの決定は勿論、ティハルト。
 あの日、城へ連行されて今後の方針を決めた際さらっと命令された。そして周りの奴らも全面同意。

 竜との行動に引きってた騎士団や心配の声を上げる面々にティハルトが「じゃあお前も行け」と俺に顎で指示した途端、全員諸手を挙げて賛成しやがった。

 当事者の意見は無視。
 多数決という数の暴力。

 そして本来なら音楽室でピアノと向き合っている筈だった俺は、学校を休んでむさ苦しく男だらけのピクニック。
 
 わー帰りたーい。

 小枝や落ち葉を踏みしめながら歩くこと数十分。
 以前の魔獣の大量発生場所へ向かっているため、先頭には場所を知る俺。そして隣にはリフ。
 いつもの一歩後ろでなく俺とジストの間なのは有事の際には盾になって下さる気が満々ですね。

 あざーっす!!
 その静かな佇まいが頼もしすぎる。

 俺がさっき話してたのはディークね。あと二人程が俺達の傍にいて、少し距離を置いて後方には騎士団の皆様方。離れてるのはジストがぞろぞろ人間が居るの嫌がったから。鬱陶うっとうしかったみたい。

 振り返らずに視線だけでディークや後方の騎士たちを見遣ったジストが不満気な声を出した。

「大体、こんなぞろぞろと人数を連れてくる必要が何処にある?」

「危険性を考慮してだ」

 ディークの答えにフンと莫迦バカにしたように鼻を鳴らす。

「それは魔獣の群れにか?それとも俺様にか?」

「……………お前ではない、魔獣の群れにだ。俺達は王国の騎士。国民をひいては王国を守ることが役目だ。お前の話が本当で、かつお前に危害を加える意思がないのなら俺達はお前の敵ではない」

 挑発に乗ることなく真っすぐに自分を見て答える人間をジストは少し面白そうに見たあと肩を竦めた。

「ならば尚のこと無意味だな」

 ざわざわと樹々が揺れた。

「もしも俺様を恐れる故ならそこいらの人間が束になろうと無駄だし、お前の言うように魔獣への警戒故なら戦力など逆効果でしかない」

「どういうことだい?」

 逆効果という言葉が気になって問いかければ紫の瞳が俺を捉えた。

「魔獣は人間のように無意味に相手を襲わない。攻撃も威嚇も、喰らう為、もしくは自分の身を守る為だ。人間を敵と見定めたか、あるいは脅威と判断したか」

 遠く騒めいていた樹々の揺れが少しづつ近づいてくる。

「最初は強い個体から逃れた魔獣のスタンピードかとも思ったが話を聞く限りどうやら違う。偶然行き会ったのではなくそいつらは意思を持って襲いかかってきたのだろう?今もそうだ」

 聞こえる地響きは確実にこちらへ向かう。

「ならば身を守る為・敵の殲滅の為の行動だ。何者かが従えているのならその脅威が大きければ大きい程規模は増す。俺様や規格外な戦闘力を持つお前、それだけでも充分過ぎるというのに更に戦力を足して何になる?」
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