ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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その褒め言葉は素直に喜んでよいものか… 4

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「ワンコです!!似合いますか?」

 全員頷いた。

 似合う、めっちゃ似合う。
 むしろ似合いすぎて走ってくるとき幻覚かと思った。

 キミ普段も時々犬耳と尻尾見えるしね。

 メラルドの恰好。私服っぽさのあるラフな服にクリーム色に近い大きな耳ともふもふの尻尾。そして赤い首輪。

 似合うっていうか、逆に違和感が仕事しない。

「あ、コレあげます」

 手にした大荷物の中から焼き菓子をくれるメラルドに「随分買われましたのね」とベアトリクスが驚けば、きょとんとしつつ「一つも買ってないですよ?全部貰いました、高等部の人たちって優しいですよね」にこにこと告げる仔犬強い。


「そういえば、カイザー様は午後からの模擬戦出ますか?」

「出ないよ、メラルドは出るんだろう?」

 この反応から絶対出るんだろうなと問いかければ大きく頷いて「出ましょうよー」と袖を引っ張られる。
 駄々っ子か。

「アレクサンドラ様と闘う予定です。魔術とか初めてで凄く楽しみです」

「あら?でも模擬戦は出場者が決まっているわけじゃないですわよね?」

 首を傾げるカトリーナ嬢ににぱぁとした笑顔でメラルドが答える。

「リリー様が頼んでくれるんです!リリー様からアレクサンドラ様が凄く強かったって聞いていいなーって言ってたら模擬戦に出てくれるよう頼んでくれるって!!」

 ご機嫌で応えるメラルドに成程、と思う。

 ジストの登場条件だと思われる魔術の気配。
 設定を知ってるリリー嬢はメラルドとアレクサンドラを模擬戦で対戦させることでアレクサンドラの出場を確実にしたのか。
 確かに女性に頼まれればアレクサンドラは断らないだろう。

「見に来て下さいねー!」

 ぶんぶんと手を振りながら友達の元へと去って行くワンコを見送った。


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