255 / 348
その褒め言葉は素直に喜んでよいものか… 1
しおりを挟む白く細い指をそっと抑えた。
訝し気に此方を見る紫に赤が混じった色合いの瞳に俺の黄金の瞳が映り込む。
最後の一枚は俺が伸ばした手によって捲られないまま。
「時間です」
告げた俺の声に、砂時計の砂が落ちきった。
ジュリア嬢の手を放すのと、「次の方どうぞー!」と小部屋から呼び出しの声がかかるのは同時だった。
消化不良気味の外野を残し、俺はジュリア嬢に礼をいって立ち上がる。
正直、占いの最後の結果が気にならないわけじゃない。
だがこれ以上妙な核心をつかれて外野に騒がれるのも面倒だ。
手渡された衣装を持ってカーテンで仕切られた空間へと足を進めた。
落ちきった砂時計を眺め、去りゆく背中を追う。
最後の一枚、捲られなかったカードを捲りその図柄を眺める。
「……」
ジュリアはカードを口元へ当て、無言で何かを考え込んだあとカードの山を集め始めた。混ぜ合わせ、まとめ、束をつくる。
引き抜いた一枚を除いて。
「次の方どうぞ」
そして次の客を迎え砂時計をひっくり返した。
「よ、よろしくお願いしますっ!!」
緊張しきった顔で頭を下げるのはマリア嬢。頭には猫耳、そして縞柄の長い尻尾。横でマリア嬢に声援を飛ばすダイアナ嬢は狐耳にふさふさの尻尾だ。
「こちらこそよろしく。二人とも良くお似合いですね」
ぽっと赤くなる彼女たちは可愛いけれど、そんなに緊張しまくって大丈夫なのかと思わないでもない。
着替えが終わり、次はメイクとヘアセット。
メイクやヘアセットは技術もいるからか手先の器用な生徒たちが専門で担当しているらしい。
俺の担当はいつも女子力の高い髪型をしてるマリア嬢。
ただ、今は緊張の為か手がぷるぷるしてるけど…。
「出来ました!!」
額の汗を拭うマリア嬢の表情は達成感に満ちていた。
偉業を成し遂げた感すらある。
106
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜
三月べに
ファンタジー
令嬢に転生してよかった〜!!!
素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。
少女漫画や小説大好き人間だった前世。
転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。
そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが?
【連載再開しました! 二章 冒険編。】
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
今日も聖女は拳をふるう
こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。
その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。
そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。
女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。
これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
気が付けば悪役令嬢
karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。
あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる