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君の誕生に祝福を 3

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 因みにベアトリクスにも先程プレゼントを渡してきた。

 今日のドレスは以前言っていたアイリーンが見立てた大人っぽいモノ。
 夜のお姉さん風を危惧していたが、流石にセンスはよくベアトリクスにも似合いそうなものだった。ウチの子は何着ても可愛いけど。

 色は紫でVネックのネックラインと大きく開いた背中の編み上げが大人っぽい。
 全体的にシンプルでセクシーな印象だが、カラーの紫は上品な色合いでミカドシルクを使用した高級感あふれる光沢と共にエレガントな仕上がりを見せていた。
 デコルテが大きく開いてるからダイアからのプレゼントのダイアモンドのネックレスも映えそう。

 俺が渡したプレゼントは髪飾り。
 アイリーンが見立てたドレスは事前に見せられたし、ダイアのネックレスの存在も知っていたから。邪魔にならず、かつ似合いそうな装飾品にしてみた。

 紫を主とした蝶の形の髪飾りだ。
 翅の部分は蒼から紫にかけてのグラデーション。細い金の鎖が幾筋か連なり、その先端に煌めくダイアモンドが動くたびにしゃらりと揺れる。
 大喜びで受け取って髪に沿えて見せてくれたし、気に入ってくれたようだ。


 華やかな宴が始まった。

 プレゼントした品を身に着け、堂々と客人たちの前に立つガーネストは立派な当主そのものだ。兄の欲目とか抜きにして素直にそう思う。
 綺麗に結い上げた髪にしゃらりと揺れる蝶の髪飾りをつけたベアトリクスも立派なレディーだ。赤い顔で固まったダイアに彼が幼い頃ベアトリクスに一目ぼれした瞬間を思い出した。


「良かったのか?」

「勿論」

 問いかけるティハルトには簡潔に答えてグラスのシャンパンを傾ける。

「これから、お前はどうするつもりだ?」

「んー、秘密」

 ワザとらしく視線を流して、軽く答える。

 取り敢えず、ゲームのエンディングまでベアトリクスを悪役令嬢にはさせず、かつ平和な結末を迎えさせるよう頑張る!
 ……とか言えないし。

 そしてその後は隠居してスローライフもいいな!
 ……とかはもっと言えない。

 言ったらこの場で普通に頭叩かれそうな気がする。お口チャック。

 やりたいこと…、前世の知識を生かして新たな商売とかも考えてるんだけどね。
 まだ未定だし。

 取り敢えず、

「ガーネストの誕生を祝って乾杯」

 グラスを差し出せば、やれやれといった雰囲気でグラスを合わせてくれる親友。


 色々気を遣われてますけど、俺的には何も問題ナッシングでーす!!
 ビバッ!脱公爵家当主代理!!
 これで晴れて自由の身だ!!


 晴れ晴れとした気持ちで俺はシャンパンを呷った。

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