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本物の偽物と偽物の本物 5
しおりを挟む前にも思った。
『亡国のレガリアと王国の秘宝』宝石に由来した国名に、その名を冠する登場人物たち。
美しく気高い彼らは正しく国の宝で輝かしい原石だ。
「俺の内面と外面が全然違うのはお前もよく知ってるだろ?弟たちと違って俺は取り繕って漸く輝ける偽物だから。本物になんてなれないし、偽りが剥がれ落ちればたちまち俺の価値は大暴落だ」
優雅で紳士?
穏やかで、優しくて、高貴で気高い。
ミステリアスで妖艶で儚げで浮世離れしたまるで造り物のように美しい人。
沢山の賛辞に評価。
誰だ、ソレ?!
造り物めいた?
当然だ、容姿は兎も角、俺の外面は完全なる造り物の偽物だ。
本物になんてなれないし、“完璧人間”になんてなれる筈のない。
でも________。
「それでも、こんな“俺”を選んでくれる人を知ってる。必死に造り上げた“俺”よりも情けなくて恰好悪いありのままの“俺”を愛してくれた人たちを知ってるよ。例え本物を眼の前にしても、“俺”を選んでくれるひとたちが居たことを」
イケメンが大好きだった姉さんたち。
きっと今のカイザーの姿を見れば狂喜乱舞でするだろう。造り上げたこのキャラなら尚更。
だけど、
もし完璧なカイザーが存在したとしても、姉さんたちは“弟”としての“俺”を選んでくれるって知っている。
姉さんたちだけじゃない、俺を愛してくれた家族。
完璧な “本物” よりも、 “偽物” の俺を。
懐かしくて、気恥ずかしくて、だけどくすぐったくて暖かい。
「過去形なの?」
「もう、会えないから」
少しの切なさと、寂しさを混ぜて笑う。
「貴方の弟妹たちは?」
「どうだろ?優しい良い子たちだし俺のことを邪険にはしないとは思うけど……。
無理、今更この内面見せるとか無理だから?!恥ずかしくて死ねる!!あの子たちにドン引きした眼ぇ向けられたら俺、涙の海に溺れちゃうよ?
やだよ、無理無理無理。お兄ちゃんは恰好つけたいんだよ、頼れるお兄ちゃんで居たいんだ!!」
想像したら羞恥と絶望が怒涛のように押し寄せてきて、俺は頭を抱えながら譫言のように呟いた。そんな俺を見つめる二対の瞳。
それ、それですよ。
お兄ちゃんはそんな瞳をあの子たちに向けられるのは断固拒否です!
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