219 / 348
それは畏怖を孕んだ羨望に似た 3
しおりを挟む
(ナディア視点)
挙句の果てには私やリリー様を心配してくれた先生に八つ当たりで怒鳴り散らした。
溜め込んだ不満も鬱憤も先生に向けるべきものじゃなかった筈なのに。
合宿の初日、突如フードの男達に襲われた私たちをアレクサンドラ様もシリウス様も必死に守ってくれた。お二人があんなに強いことも吃驚したけど、何よりも吃驚したのは二人が本気で私たちを守ってくれたこと。
だってアレクサンドラ様は王子様なのに。
傷を負いながらも、皆を守ってくれた。
リリー様も必死に道を探して、危険な崖から皆を助けてくれた。
自分が酷く恥ずかしくて情けなかった。
彼らが心の底では私のことを見下していると思っていた自分が。
他でもなく、立場や身分でしか相手のことを見ていなかった自分が。
弱くて、役立たずな自分自身が。
フードの男達から逃げるうちに森の奥へと追いやられ、攻撃を避けた際にリリー様が足を縺らせてしまい、ロイ様はティーナ様を庇おうと振り払われ、ティーナ様は奴らの一人に捕まってしまった。
そんな時、先生たちが現れた。
先生はまるで状況を理解していないかのように自然体で、あろうことかティーナ様の代わりに人質を申し出た。最初は警戒していたフードたちだけど、先生を知っていたらしく奴らの口から出た『無能』の言葉。
『無能』
その言葉に胸が酷くざわついた。
そして、刃が押し当てられたその瞬間、ゾッとするような恐怖を感じた。
そこからは一瞬だった。
あっという間にフードの男を倒した先生と、闇が実体化したよう何時の間にか現れた黒衣の人影。フードの男達は全員音もなく地に打ち伏せられていて、先生と話していた口布をした男の人から突如溢れ出た威圧感に、ああ、さっきのアレは殺気と呼ばれるものだったんだと恐怖の正体を悟った。
それで終わりだと思ってたのに、魔獣の群れが現れて。
闇に底光りする赤い瞳に、恐怖を感じていた筈なのに、
「大丈夫」「怖いことは何もない」綺麗に微笑む先生の言葉に恐れは全て拭われた。
夜の森を抜けるのは危険だからコテージで一晩明かすことになって、まさかの先生が料理をしてくれることになった。
最初は不安もあって手伝いを申し出たのだけど、正直手伝いなんて不要なぐらい上手だった。
久々の料理は楽しくて、意外な作業をしてる先生からはあの浮世離れした雰囲気が薄まって、いつもより自然に話をすることが出来た。
そしてあの日の謝罪も。
挙句の果てには私やリリー様を心配してくれた先生に八つ当たりで怒鳴り散らした。
溜め込んだ不満も鬱憤も先生に向けるべきものじゃなかった筈なのに。
合宿の初日、突如フードの男達に襲われた私たちをアレクサンドラ様もシリウス様も必死に守ってくれた。お二人があんなに強いことも吃驚したけど、何よりも吃驚したのは二人が本気で私たちを守ってくれたこと。
だってアレクサンドラ様は王子様なのに。
傷を負いながらも、皆を守ってくれた。
リリー様も必死に道を探して、危険な崖から皆を助けてくれた。
自分が酷く恥ずかしくて情けなかった。
彼らが心の底では私のことを見下していると思っていた自分が。
他でもなく、立場や身分でしか相手のことを見ていなかった自分が。
弱くて、役立たずな自分自身が。
フードの男達から逃げるうちに森の奥へと追いやられ、攻撃を避けた際にリリー様が足を縺らせてしまい、ロイ様はティーナ様を庇おうと振り払われ、ティーナ様は奴らの一人に捕まってしまった。
そんな時、先生たちが現れた。
先生はまるで状況を理解していないかのように自然体で、あろうことかティーナ様の代わりに人質を申し出た。最初は警戒していたフードたちだけど、先生を知っていたらしく奴らの口から出た『無能』の言葉。
『無能』
その言葉に胸が酷くざわついた。
そして、刃が押し当てられたその瞬間、ゾッとするような恐怖を感じた。
そこからは一瞬だった。
あっという間にフードの男を倒した先生と、闇が実体化したよう何時の間にか現れた黒衣の人影。フードの男達は全員音もなく地に打ち伏せられていて、先生と話していた口布をした男の人から突如溢れ出た威圧感に、ああ、さっきのアレは殺気と呼ばれるものだったんだと恐怖の正体を悟った。
それで終わりだと思ってたのに、魔獣の群れが現れて。
闇に底光りする赤い瞳に、恐怖を感じていた筈なのに、
「大丈夫」「怖いことは何もない」綺麗に微笑む先生の言葉に恐れは全て拭われた。
夜の森を抜けるのは危険だからコテージで一晩明かすことになって、まさかの先生が料理をしてくれることになった。
最初は不安もあって手伝いを申し出たのだけど、正直手伝いなんて不要なぐらい上手だった。
久々の料理は楽しくて、意外な作業をしてる先生からはあの浮世離れした雰囲気が薄まって、いつもより自然に話をすることが出来た。
そしてあの日の謝罪も。
131
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜
三月べに
ファンタジー
令嬢に転生してよかった〜!!!
素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。
少女漫画や小説大好き人間だった前世。
転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。
そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが?
【連載再開しました! 二章 冒険編。】
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
気が付けば悪役令嬢
karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。
あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる