ブラック・スワン ～『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る～

そんな眼で見ないで ４

「いえ、あの…そのですね…。捕らえられた女子生徒を助ける為と、奴らを油断させたかったこともあって」

「そういう問題ではありません！！」

「そういう問題ではないですわ！！」

　しどろもどろな俺の言い訳は一刀両断された。

「や、危険性はなかったし。影の皆が潜んでるのも知っていたしね」

　じぃぃと見つめてくる視線の圧が辛い。
　俺は言葉を重ねる。

「ハンゾー達もリフも居たんだよ？本当に危険がある状態なら彼らがそんなことを私に許すと思うかい？」

　自害させたくなかったし、情報を得たいから油断させるためにあんな手段をとったけど。
　もし本当に俺に危険があるぐらい奴らが手練れだったら、情報だの何だのお構いなしに問答無用でハンゾー達は奴らをサクッと殺してただろう。

「「確かに」」

　納得された……。
　ハンゾーやリフの俺の扱いに対する信頼感がエベレスト並みに高い……。


「そういえば、お戻りになるまで碌にお食事を口にされて居ないのでは？」

　ルームサービスでも頼みますか？そう気にかけてくれたのはサフィアで。

「「「「……」」」」

　思わず無言になった四対の視線が俺を見た。

「いや、普通に美味な食事を口にしていた」

「遭難中とは思えないまさかの充実した食生活でした…」

「カイザー様、すっごい料理お上手なんですよ。ナディア様とリフ様も。ポトフにコールスロー、デザートに焼き林檎まで作って下さって。今朝もガッツリ頂きましたし」

「私はそんな…。ほぼ先生達が作って下さいましたし」

「満点の星空も素敵でしたよね！」

「あれは素晴らしかったな。其方たちに勝るとも劣らない美しさだった」

「あんな星空初めて見ました」


「「「「……」」」」