ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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◇閑話◇それだけは伝えたい 1

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 それは女性陣を部屋へと送り届けた後のこと。

 男性陣の使う部屋へと戻ろうとした俺はリリー嬢に呼び止められた。

「あの、先程の部下の方達。忍…ハンゾーさんにお会いすることって出来ますか?」

「リリー嬢はハンゾーみたいな男性が好みなんですか?」

 薄暗い廊下、スカートの前で組んだ指をせわしなく組み替える姿に悪戯っぽく問い返したのはただの出来心だ。

「えっ?!ち、違いますっ!確かにチラッとしか見えなかったけど凄い男前だった気もするけど…って、そうじゃなくてっ!!あのっ、そのお礼っ!そう、助けて頂いたしお礼が言いたくてですね!」

 うーん。
 演技力はリリアより断然ましだけどアドリブに弱いな。

「そうですか、伝えてみますけどどうでしょう?彼らはあまり表に出たがらないので」

 多分普通に「不要です」って却下される。
 命令だったら絶対聞いてくれるけど。

「そうですか…」

『あの忍者絶対転生者よね?!恰好もそうだしあの名前!』

 ごめんな、名前は服部半蔵からとってるけどハンゾーは転生者じゃないんだ。

「変わった響きの名前ですよね。他国のご出身だったりするんですか?」

「詳しくはあまり。怪我をしてた彼をベアトリクスが見つけてその後、雇うことになったんですが、以前のことは良く知らなくて。ですがあの名前はメイドのリリアがつけたものですよ」

「リリアさんが…」

『なら彼自身は転生者じゃないのかしら?でも…確実に忍者なんですけど!』

 だよね。
 万人が思い描く忍者そのものだよね!

「あの恰好とかもリリアさんが?」

「黒を好むのは元からですね。職業柄でしょうか。確か額当てはリリアが贈ったものですよ」

 俺の答えにリリー嬢の口元がひくりと引き攣った。

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