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粒マスタードは大概一瓶使いきれない 4

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 さて、燻製はベーコンとウィンナーどっちにしよう?

 両手にそれぞれを持って眺める。

「ナディア嬢、ベーコンかウィンナーどっちがいいと思います?」

「んー、個人的にはベーコンですかね。でもウィンナーの方がポピュラーな気もしますし」

「あ、わかります」

「迷いますね」

「いっそ両方入れちゃいましょうか?シリウス様たちよく食べそうですし」

「いいですねっ!そうしましょう」

 同じ作業をしているためか、会話が弾む。

 楽し気な笑顔。薄っすらとあった壁のようなものの取り払われた自然な笑顔が新鮮で眼を奪われていると、不意にがっつり視線があってしまった。き、気まずい。

「あっ、あの先生…!」

 作業の手を止め、ナディア嬢が躰ごと俺へと向き直る。

「先日は失礼な発言をして本当にすみませんでしたっ!!あと、助けて下さって有難うございます」

 がばりと勢いよく頭を下げる姿は潔い。ゲームと同じで真っすぐな子だ。
 手伝いを買って出てくれたのも、本当はこれを伝えたかったからだったりするんだろうか。

「いいえ、気にしてないので大丈夫ですよ。それに可愛い生徒たちを助けるのは当然です」

 ……実は地味に凹んでカマルに懐いてたけど。
 大人として体面を保って答えた。

 だけど先日のように俺へ向けられた瞳にあの激情はなく、真っすぐ向き合ってくれる亜麻色の瞳が嬉しくて自然と笑みが浮かんだ。
 やっぱ嫌われてるのは凹むしな。


「貴女が無事で良かった」

「…っ」

 思ったことを告げただけなのに何故か息を呑まれる。

 あれ?そんなに意外?
 教師だしどうせ口先だけだろうとか思われてた??

「料理、仕上げてしまいましょうか」

「…はい」

 手元へと顔を向けた彼女の耳が僅かに赤い。
 夜風で風邪ひいた?


 熱した鍋にオリーブオイルを入れ、厚切りベーコンとウィンナーに焼き目をつける。別になくてもいい工程だけど、個人的にただ煮込むより肉は焼き目がついて香ばしい方が好きなので。

 野菜も入れて水とコンソメを入れたらあとはコトコト煮込むだけ。

 手が空いたリフにパンを焼いてもらって、そのまま盛り付けも彼が引き受けてくれる。

 そして素朴ながらもちゃんとした夕食が完成した。


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