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四次元ポケット疑惑…… 3
しおりを挟む本日は晴天なり。
そして訪れた合宿初日。
薬草採取に生体調査、そんな幾つかの課題を与えられた生徒たちはそれぞれの班に分かれ森を散策してる。
「…日差しが強いな」
差し込む日差しの強さに腕を掲げて空を見上げれば、晴れ渡る青空。
「日傘をご用意しましょうか?」
「いや、いい」
心配そうに零された声音に、間髪入れず否定を返した。
持ってんの?
日傘、お持ちですか?
そしてどこに隠し持ってらっしゃるんですか?
だって手ぶら……。
仮にも授業中に従者に日傘差される教師ってどうなの、何処のご令嬢だよ?!
断固拒否する!!
だからリフさん、「カイザー様の白い肌が……」とか憂い気な顔しないで。
俺は見回りも兼ね、時々生徒に声を掛けながら森を歩く。
本来なら引率の教師に俺は入ってなかったんですけどね。担任受け持ちないし、養護教諭とかでもなく音楽の非常勤だし。
危険があると知っていて参加しない選択肢はなかったので参加したのだが、公爵家に雑用をさせるのは他の教師の皆さんも気が引けるのか俺は若干手持無沙汰だ。
この上、日傘差されて優雅に佇んでたら完璧あの人何しに来たの?だから。
ふと見覚えのある金髪を見つけ、自然と足がそちらへ向かう。
金髪とかこの世界に溢れてるって?
俺が可愛い可愛いマイエンジェルたちを見間違う訳ないじゃないか。
背格好は勿論、旋毛の形や髪の艶だけでも判断出来るに決まってる。
「どうしたんだい?」
「カイザー兄上」
大きな樹の根元、愛しい弟へと近づけば彼らが取り囲むようにして一人の少女が蹲っていた。
「どうやら足を痛めてしまったようです」
そう告げるダイアの言葉通り、靴を脱がされた少女のかかと部分には赤い血が滲んでいた。
「靴擦れ、だね」
傍らにはほんの少しヒールの高い靴。
「ごめんなさいっ…ごめんなさい…」
怪我をした少女は哀れな程に縮こまって泣きそうになっている。
きっと怪我の痛みより自分の所為で足を引っ張ってしまったことを気に病んでいるのだろう。相手が憧れの王子や生徒会長たちとなれば尚更か。
山歩きには適さない可愛らしい靴。
憧れの上級生たちと同じ班になれてお洒落を捨てきれなかった結果、慣れない山歩きで靴擦れを起こしてしまった、というところだろうか。
「黴菌が入っては大変だから、取り敢えず消毒をしようか」
怖がらせないように膝をついて目線の高さを合わせ出来るだけ優しい声で告げれば、逆効果だったようで「ふぇっ!?」と真っ赤な顔で涙目になられてしまった。
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