ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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転生メイドVS転生ヒロイン、一人実況に忙しい俺を添えて 3

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「興味があるっていうのは?」

「何でもリリー様は“普段あまり聞かない言葉を使ったり、人と違う反応をしたりする”方を探してらっしゃるそうですわ」

「えっっ?!!ベアトリクス様っ?何でそこで私を紹介するんですかっ??私そんな言動してませんけどっ?!!」

 ぎょっとした顔でベアトリクスの肩を掴むリリア。

 いやいや、してるからね?

 そしてリリー嬢。
 恐らく転生者がベアトリクスの傍に居ると疑ったんだろうけど、もうちょっと他に聞き方なかった?

 リリー嬢の目的を悟った俺は、念のため心の声を聴く感度を上げた。うら若い乙女の心情を覗くのは若干気が咎めるが背に腹は代えられない。

 ……そしてその行動をすぐに後悔することになる。


「でもどうしてリリー様はそんな方を探してるんですか?」

 もっともなナディア嬢の質問に明らかに狼狽えるリリー嬢。

 言い訳、考えてなかったんだね?

「え、えっと…それはっ……」

『どうしようっ?何て答えればいいのっ?……ええぃ、もう当たって砕けろだわ。そうよ、このメイド以外にもカイザー様やベアトリクスちゃんがゲームを知ってるか知るいい機会だもの。反応を見てみましょう』

「あのっ、“転生者”って知ってますか?」

 両の拳を握りしめ、決死の表情で問いかけるリリー嬢。

「「「てんせいしゃ?」」」

 首を傾げる俺、ベアトリクス、ナディア嬢。

「し、……知らないですよ?」

 明らかに動揺を露わにしながらピューと口笛を吹く真似をするリリア。
 眼をきょろきょろさせて汗を滴らせながら更にはピューって口で言ってるし。

 すげぇ、こんな典型的な誤魔化し方マンガ以外で初めて見た!と俺はいっそ謎の感動を覚えた。

『まさかのヒロインが転生者っ?!ま、まずくないっ?!ゲームの粗筋を知ってるプレーヤーなら攻略対象者の攻略も断然有利だもの。それにストーリー通りに話を進める為に悪役令嬢を嵌める転生ヒロインってテンプレよねっ??』

「私、貴女と二人だけで話したいことがあって」

 席を立ってリリアへと近づくリリー嬢に、当のリリアは一歩後ずさる。

「な、何ですか?」
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