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転生メイドVS転生ヒロイン、一人実況に忙しい俺を添えて 2

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(前半のみリリー視点)


 そして花に夢中になってるナディアちゃんは兎も角、何で他の使用人の誰もあのメイドの異様な様子をスルーなの?!

 ちょっと恐怖を感じつつ見つめていると不意に瞳があった。

 ミルクティーベージュのセミロングの髪に黙っていれば一見清楚な美少女風のメイドはデレデレに崩れていた表情を引き締めると、パッチリとした茶色い瞳を尖らせて鋭く私を睨みつけた。

 ……そして他のメイドに強制連行されていった。


「丁度もうすぐカイザーお兄様も一息つかれる頃だと思うし、折角だからお茶にお呼びしても良いかしら?」

 庭園や珍しい異国の植物も揃った温室を案内してもらい、そろそろお茶にしましょうと言ったベアトリクスちゃんの提案に私は前のめりに喰いついた。

「是非っ!!」

 因みにガーネスト様は外出中らしい…。残念。



「我が邸へようこそ、お嬢様方」

 可愛い妹に招待された俺が断るわけもなく、緊張しきってる二人の手を恭しく掬い上げ、手の甲へ唇を寄せ気障キザったらしく挨拶をしたのはちょっとした出来心だ。

 唇は寸止めだし、淑女への挨拶としては別段可笑しなところはない。
 俺を攻略対象者と思ってるリリー嬢への本当にちょっとした悪戯心だっただけだから……。

 だからリリアそんな鬼の形相で見ないでっ!?
 ごめんって!!

 中庭の一角で席についてからもリリアの粘着質な視線は俺から離れず、流石にナディア嬢が訝しがり始めた。

 何なら、俺も不思議に思ってた。

 もっとも俺の場合はリリアの視線の意味でなく、何故リリアが強制退場させられないのかをだけど。(実は既に一回されてる)

「あ、あの?」

 ちらちらとリリアを気にするナディア嬢に「ああ」とベアトリクスがリリアを手招いた。

「こちらは私のメイドのリリアですわ。先日お話ししたメイドです。リリー様が興味がおありだったようなので今日は同席させましたの」

「リリアと申します」

 たおやかに腰を折るリリア。

 うん、でも前後の表情が全然取り繕えてないからね?



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