ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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闇の貴公子参上!! 1

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 王都を出ると風景は一気に変わる。

長閑のどかですね」

 同じことを思ったのか、景色を眺めながらガーネストが呟いた。

 視線の先には畑が広がる。青々とした緑は鮮やかで活き活きとしている。
 時折並ぶ民家も小さく可愛らしく、遠目から眺める外観はまるで造り物のおもちゃの様だ。

 もっとも、この地の住人が王都を訪れたなら、贅を尽し整然と立ち並ぶ街並みこそをよく出来た造り物の街のように感じるのだろう。

「王都は忙しないからね」

 貴族が多い王都の人間の方がゆったりと気品がある筈なのに、王都は何処か忙しない。それは流通も政治も、眼に見える動き以外の人間を取り巻く環境が慌ただしくうつろうゆえなのかも知れない。

 馬車に揺られ、向かう先は孤児院。
 所謂いわゆる、慰問と視察である。

 目的地に辿り着き、馬車から降りればすぐに聞こえる笑い声。
 出迎えのシスターに来訪を歓迎する言葉を掛けられ建物へと案内される道すがら、顔見知りの子供たちが此方へ向かって大きく手を振る。それに返すように微笑んで手を振ればはしゃぐ子供たちは今日も元気いっぱいだ。

「カイザー様だっ!!」

「従者様も居るっ!」

「闇の貴公子様だー!!」

「知らないお兄ちゃんも居るよっ!!」


 ……何か変なのがあったのは気にしないでほしい。


 意味がわからないガーネストとリアンが首を傾げ、リフは面白そうに笑ってる。
 俺やリフは何度か訪れている馴染みの孤児院だが、ガーネストとリアンは初めての訪問だ。

 大丈夫、お前も後で洗礼を受けるから。その内わかる。

 敷地内に入れば、まだそわそわしていながらも姿勢を正し、声を潜める子供たち。

「さぁ、皆さんご挨拶しなさい」

「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました!」

 練習したのだろう、声を揃えて頭を下げる。若干ズレてるのはご愛敬だ。

「久しぶりだね、元気にしてたかな?」

「はいっ!!」

「上手に挨拶出来たね。楽にして構わない。こっちのお兄さんたちも優しいから平気だよ。こちらが私の弟のガーネストで彼がその従者でリアン」

 声を掛ければ、たちまち子供たちははしゃぎだす。

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