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あざとさは天然モノであることが肝心 3

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(リリー視点)


 ノートを胸に抱いて話しかけた私にサフィア様はすぐ用件を察してくれて「どうぞ」って空いてる椅子を進めてくれた。
 マジ紳士。

「ここがよくわからなくて…」

 指で問題を指し示せばわかりやすい解説をしてくれるサフィア様。

 ノートを覗きこむために近くなった顔の麗しさに心臓がいっそ痛かった。
 睫毛長っ!!この距離で毛穴がわからないうえにものすっごくいい匂いがするんですけどっ!髪なんて女子の比じゃないぐらいにさらっさらだし。

「わかりましたか?」

 さらりと髪を揺らして首を傾けるサフィア様に振り子のようにこくこくと頷いた。

 正直見惚れてて何も聞いてませんでした、すみません。

「有難う御座いました。サフィア様は凄く優秀なんですね。学園のテストでもいっつも一位をキープしてらっしゃるって聞きました」

 にっこりと微笑んで褒め言葉を口にした。

「凄いです!だけど…」

 笑顔の後で一瞬だけ俯いて、長い睫毛を憂い気に伏せた。

「きっと、物凄く努力なさっているんですよね。元から頭が良いってだけじゃない見えない努力を沢山…。私、突然貴族の仲間入りをして、覚えることが沢山あって凄く大変だったし不安だったんです」

 スカートの上で組んだ指を頼りなげに彷徨わせる。

「失敗するのがいつも怖くて、だけど沢山失敗しちゃってっ。侯爵家の当主になるサフィア様なら私なんかより背負ってる重圧も期待も比べものにならないと思います。だけどっ、無理はしないで下さいねっ!何も出来ないかも知れないけど、私で力になれることならいつでも言って下さいね」

 両の手を胸の前で組んで菫色の大きな瞳をうるうるさせるのも忘れない。

 喰らえ、小動物系ヒロインの必殺あざとポーズ!!!

 画面の前で何度「あざと可愛い!」と悶えたことか。

 サフィアの設定上、過度の期待を掛けられて育った故の神経質なまでの完璧主義を受け入れ、癒すことが攻略の要だもの。
 本当はもっと時間をおいてじっくり攻略を進めたいものの、いかんせんイベントが起きないんだから仕方がない。

「有難う御座います。リリー様は優しいですね」

 ふわり、と。
 正に花開くように微笑まれた。

 女神っ!?
 正しく地上に舞い降りた女神の微笑みだった!(男だけど)

 あまりにも攻撃力の高い微笑みに思わず反射的に眼を瞑る。
 眼が潰れるかと思った。

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