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乙女たちの聖戦、或いは製菓業界の陰謀 4
しおりを挟む指さされたのは、小振りのギフト。
マカロンやショコラの詰め合わせで、内容量が控えめなもの。包装も他の華やかなバレンタイン仕様と比べると落ち着いている。
予想はしていたが、やはり指摘されたそれにうーんと悩む。
正直この案はさほど自信がない。女性であるルーシェさんの意見を是非聞きたい所だ。
「さりげなく渡せる品もありかなと思ったんですが…女性としてはどうですか?」
「いいと思います。華やかな商品は魅力的ですけど、人によっては渡す際に若干ハードルが高い場合もあるので」
「華美なのは苦手な方もいますし、あからさまに気がありますって感じがしますしね」
肯定的な意見に頷き合う。
一方でアランとリフはいまいちわからなそうな顔をしている。
「好意があるから贈るのでしょう?」
あれはとあるバレンタインデー。
高級そうなシックな包装に包まれたチョコレート。
某有名店のチョコながら、女性らしい好みの三女のイメージに似つかわしくないシックな包装に意外に思った俺に姉はおっとりと言った。
「だって、あんまり力を入れたら好きって言ってるみたいじゃない?」
その言葉に、俺はリフと同じようなことを返した。
「だって好きなんでしょ?」と。
「恋愛は駆け引きだもの。好きって先に言った方が負けなのよ?どちらが先に告白したかでその後の立ち位置が決まる場合もあるの。だから此方から示すのはさり気無い好意。主導権を譲るつもりはないし、いわばマウントの取り合いね」
にっこり笑った姉は美人だけど怖かった。
そんなおっとりマウントを取るとか言わないで欲しい。
そして俺は女性には女性の複雑な駆け引きがあることを思い知った。
そんな旨をぼやっと濁しながら言葉にすれば、
「凄くわかります」
ルーシェさんに力強く頷かれた。真顔だった。
わかるんだ……。
ちょっぴり否定して欲しかったご意見は真顔でもって肯定された。
その後、ルーシェさんを始め、接客担当のお姉さんたちの意見を取り入れ、無事商品ラインナップや包装等が決まった。
さぁ、稼ぐぞー!!
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