ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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A notre amitié! 4

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「わたくしの国でもアンジェスの皇子や姫を名乗る者は居たし、珍しくもないのだろうけど。確かカイザー様のご生母の実家やハワード公のご先祖もアンジェスと関わりが在られたのよね?」

「お爺様とお婆様が亡くなられてからは母上のご実家とは没交渉だから詳しいことは知らないのだけどね。ご実家は国境の近くだから」

 因みにハワード公っていうのはカトリーナ嬢の家名。

 アンジェスは様々の国の真ん中に位置していた大国だから、自然と各国の国境近くの国は距離的にも付き合いが深かった地が多い。
 イメージとしては中央にドーンとアンジェスという大国があって、その周囲を様々な国が取り囲んでる感じ。

 勿論、持ち主の居なくなった領地を廻って侵略に乗り出す国もあるが、各国の睨みあいで均衡が保たれている。あと、原因不明の滅び過ぎて各国がその地に踏み出すのを躊躇ためらってることもある。

 そんな地理的側面もあり、各国の国境脇にはアンジェスと商売等で関係の在った者・他国を訪れていた生き残りなんかも割といる。
 だから先祖が何らかの関係が在ったというのは実は何ら珍しくもない。

 そこに王家が絡まないのなら。

「ハワード公と言えば、カトリーナ様とガーネスト様の仲はどうなのかしら?」

「何それ、詳しくっ!」

 面白そうな瞳で思わせぶりに首を傾げるアイリーンに思わず喰いつく俺。

 やべ、思わず一瞬素出た。

「お前はいい加減弟妹離れしろ」

「ティハルトには言われたくないよ」

 それからも幾つかのボトルを開け、「全く、人をダシに使って」とぼやくティハルトにリクエストされて先程の曲を演奏したり。
 時間帯も気にせずピアノを掻き鳴らした俺は演奏を終え、グラスを掲げた。


「親愛なる親友我が友にして敬愛なる王と聡明にして麗しき王妃に」

 淡い気泡を煌めかせるグラスを差し出せば、

「戦友にして伴侶たるわたくしの半身と愛しき友に」

「我が最愛と永久とわ親友ともに」

 伸ばされた腕に、グラスが集う。

「王国の未来に」


「「「乾杯」」」


 カラン、と軽やかな音を立て、何度目かの乾杯を重ねた。
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