ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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A notre amitié! 2

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 ちょっといじけた気持ちになりつつ空になったティハルトのグラスに冷えたシャンパンを注ぎ、アイリーンにもボトルを傾けて見せれば飲みっぷりよく飲み干したあとグラスを差し出された。

「だけど仕方がないじゃないか。心配なものは心配なんだ」

 開き直ってそう告げれば、頭が痛そうに額を抑えたティハルトが

「まぁ、気持ちはわからなくはないが」

 と重々しく溜息を吐き出し上目遣いに俺を窺う。

「何か新しい情報は入ったか?」

 問い掛けには緩く首を振る。

「何も。そちらは?」

「こちらもだ。国の諜報も、お前のところの影でも掴めないとなると今のところ大きな動きはなしか。だが例の少女たちが見つかったことで動き出す連中もいるだろうからな」

「今はまだ接触の機会は少なくても、彼女達が学園に入学すれば外部からの接触も容易くなるものね。しかも来年はジャウハラの王子様もいらっしゃるし」

 そして乙女ゲームのスタートでもあります。

 口に出すことは出来ないが、心の中でそっと呟く。

 間違っても口になんて出せない。
 この国を支える王と王妃となる彼らに向かって、この世界はゲームの産物で、ヒロインの恋の選択肢によっては国が危機に陥る、なんて。

 元がゲームだろうと何だろうと、
 この世界に生きる俺達にとっては現実だ。

 やり直しなんて効かないし、失ったものは戻らない。
 国も人も、大切なモノも、全部全部守り抜かなきゃならないんだ。


「少しでも、動ける場所に居たいんだ」

 ダイヤモンドのような瞳を真っすぐに見つめれば、はぁーとわざとらしく溜息を吐いたあとでお返しのようのグラスにシャンパンを注がれた。
 全然減っていなかったそれは溢れそうになり、慌ててグラスに口を付ける。

「まぁ、カイザーが居れば頼もしくはあるからな」

「ティハルトも結局ダイア様たちが心配なのね。ジュエラルの兄上様たちは揃いも揃って弟妹が大切で仕方がないのね」

「君の兄上は違ったのかい?」

「仲は良かったけど、カイザー様たちほど過保護ではなくってよ。最も、そうだったらこうして人妻になんてなれてないかしら?」

「別に私は…ベアトリクスの結婚を邪魔したりはしないよ」

 ちょっと声が小さくなったけど本当だよ?
 お兄ちゃんは涙を呑んで祝福するよ?

「俺だって別にシェリルの結婚を邪魔するつもりはない。第一まだ早いだろう」

 わかる!!
 その気持ち凄いわかるよティハルト!!

 うんうんと頷く俺。
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