ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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法律違反で捕まったりしないだろうか? 2

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 そうでした。
 まるで子持ちの親のような会話を重ねつつ実際は23歳・独身・彼女なしの俺。

 リフだって俺と同じ年だけど婚約者居ないじゃんっ!!とか言いたいけど……。
 や、リフなら本気出せばすぐにでも結婚できそうな気がして俺は口を噤んだ。

「……別に結婚しなくても構わないんだけどな」

「それならば私も。カイザー様のお世話をするのに必要はありませんし。ですが、もしいいお相手が見つかられたらすぐさまお教え下さいね。全力で見極めと協力をさせて頂きますし、お子が出来るようなら私もお相手を見つけなければいけません」

 ………。
 それはひょっとして、俺の子にもリフの子がついてくれるというお話でしょうか?

 えっ?!俺の為に結婚相手見つける気ですか???
 献身は嬉しいんですけど、何か色々間違ってませんかリフさーーん!!?

 そんな心の中の大混乱が収まるのを待って。


「リフ」

 表情を改めた俺は重々しくリフの名を呼んだ。

「……その、…すまない…」

 真っすぐに視線を逸らしたくないのに、後ろめたさにどうしても視線が揺れる。
 謝るのが狡いと知りながら、それでもリフには精一杯の誠意を尽くしたくて頭を下げた。

 何が、とリフは聞かない。

 謝罪の理由は勿論、ガーネストに爵位を譲る件。
 元々リフにはかつてから話してあった。それこそ玉座の前で宣言する前から。

 だけど本来なら爵位を継ぐのは嫡男である俺で。
 そんな俺に仕えるリフは公爵の従者となる筈だった。
 同じ従者でも誰に仕えるかによって立場は異なる。リフ本人も、リフの実家だって当然それを想定していた筈だ。なのに俺の我儘わがままでリフの人生を変えてしまった。

「頭をお上げください」

 本来なら土下座したっていいくらいだけど、そんなことをしても困らせるだけなのは知っているから大人しく頭を上げる。

「貴方様の為に出来る事がある、それが私の歓びです」

 綺麗に背筋を伸ばして胸に手を当てるリフの手袋越しの指が触れる交差した剣。


「カイザー・フォン・ルクセンブルク様」

 厳かに紡がれる名。


「それが、私が仕えるべき たった一人の主の名です」

 穏やかな琥珀の瞳は、だけど強い意志を持って俺だけを映す。

「命を懸けるべき相手に巡り合えた。
 私は誰よりも倖せです」

 それは_______遠い昔の言葉。

 懐かしいその言葉に俺が眼を見開いたその前で、リフが音もなく跪いた。
 跪いて尚、その顔は伏せられることなく琥珀の瞳は真っすぐに俺を見据える。


「我が命、忠誠は唯一人の為に。
 貴方様が何を選ぼうと、何を望もうと私はカイザー様の傍に在り続けます。
 貴方様の手となり、足となり。全てからお守りする“絶対の盾”となりましょう」

 無意識に名を紡ごうとする刹那。


「ならば俺は全てを蹴散らす刃となります」

 跪いたリフの横に出現した黒い影。

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