56 / 399
足を向けては寝られない 3
しおりを挟む「有難う御座いました。またのお越しをお待ちしております」
綺麗な笑顔を披露しつつ最後の客を見送るルーシェさん。他、数名のお姉さん。
完全にお客さんが見えなくなったところで繰り広げられるガッツポーズとハイタッチ。
「皆さん、お疲れ様です」
小部屋から出て声を掛ければ途端に上がる嬌声。但し心の中で。
おお、凄い!!
心の声は『きゃー!!』って嬌声を上げてるのに、こちらに丁寧に「お疲れ様でした」と返してくれるお姉さんたちの表情は完璧なるアルカイックスマイル。
心の内など少しも見せないアルカイックスマイルに接客スキルの高さを見た。
「今日は初日ですが、明日からも宜しくお願いしますね。それとこれを」
俺の言葉と共にお姉さんたちに配られる小さな小箱。
「これは、もしかして」
「はい。マカロンとショコラのセットです。お店の味を知って頂くためにも是非どうぞ。それと」
急なプレゼントに驚くお姉さんたちにくすりと笑う。
「『リリアーナ』の宣伝にも是非ご協力ください」
小箱にリボンと共に括りつけられているのは小振りなチャーム。
月や星、花など形は色々あるが繊細な細工に小粒ながら本物の宝石があしらわれていて、可愛すぎず可愛い大人の女性でも違和感のない仕上がりになっている。
「「「「「有難う御座います」」」」」
店の目玉はマカロンとショコラ。
可愛らしいカラフルなマカロンはこの世界にまだなかったことも相まって反響も滅茶苦茶高い。
ショコラも繊細な細工が美しく、シックなショコラと愛らしいマカロンのセットは女性のハートを無事掴みまくった。
更には包装に先程話に出たようなチャームや栞。
制服姿では髪型ぐらいしか着飾ることができない学園では、小物が注目を浴びると聞いた俺は当初の予定通りチャームを主力にした。髪飾りとかでもいいんだけど、令嬢だと髪飾りは値の張るものを身につけるだろうしあまり値段を高くしすぎると貴族以外が手を出せなくなるしな。
あともう一つ、小振りなピンブローチも主力にしようと思ってる。
ピンブローチなら制服のタイやリボンの端にさり気無く付けられるし。(アクセサリー自体は校則で禁止はされていない。あんま派手だと注意されるが)
種類は多すぎず少なすぎず。
あまり数が多いと人の心理的に選べなくなる傾向があるからな。
限定した種類で時期毎に内容を変えることで購入意識をそそることも出来る。期間限定とかの言葉に弱いのは何処の世界も一緒。それに一度集め始めれば他も集めたくなるのが人の心理。最初から種類が多いとそうはいかないが、あと三つで全部制覇とか実現可能な種類の方が手が出やすいものだ。
お店の一角では包装に使ってる小振りなチャームとは違い、もう少し華やかで大ぶりのアクセサリーのショーケース。こちらはお値段も少し高め。
お菓子の方は貴族でなく裕福な層でも手が出せる感じで、ショーケースのアクセサリーは貴族狙いでがっつりお金を落として貰おう。と、いっても貴族にとってははした金だろうけど。
初日はまさかの閉店時間を待たずに完売。
幸先も良好です。
142
お気に入りに追加
472
あなたにおすすめの小説
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?

断罪イベントの夢を見たから、逆ざまあしてみた
七地潮
ファンタジー
学園のパーティーで、断罪されている夢を見たので、登場人物になりきって【ざまぁ】してみた、よくあるお話。
真剣に考えたら負けです。
ノリと勢いで読んでください。
独自の世界観で、ゆるふわもなにもない設定です。
なろう様でもアップしています。

公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。

乙女ゲームはエンディングを迎えました。
章槻雅希
ファンタジー
卒業パーティでのジョフロワ王子の婚約破棄宣言を以って、乙女ゲームはエンディングを迎えた。
これからは王子の妻となって幸せに贅沢をして暮らすだけだと笑ったゲームヒロインのエヴリーヌ。
だが、宣言後、ゲームが終了するとなにやら可笑しい。エヴリーヌの予想とは違う展開が起こっている。
一体何がどうなっているのか、呆然とするエヴリーヌにジョフロワから衝撃的な言葉が告げられる。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様・自サイトに重複投稿。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。

悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる