4 / 46
四
しおりを挟むあれは確か八歳の春。
麗らかな春の日差しの中、私は剣を手に仮想敵を華麗に倒し、跳躍からの空中回転の後、見事な着地を決めながら剣を仕舞ってふっとニヒルに微笑むべく空を舞った。
……が。
まさかの着地点の小石に躓き、頭からの大転倒。
一切の記憶を失った。
記憶喪失になった私はそれまでの人格さえ失い、自分が誰かもわからない不安を抱えて酷く気弱で臆病な少女へと様変わり。
そして翌年、皇女の立場に復帰するも性格はそのまま。
恨みを買い過ぎた前皇帝が刺されてその傷が元でお陀仏になり、現皇帝が後を継いでからは健気にそれを支える日々。
頭脳も優秀だった私は執務に励み、幼いながらに立派なワーカーホリックだった。
休日って何だっけ?って状態のブラック企業も真っ青な社畜っぷり。
給料?そんなモノはない。
立場上、贅を尽した食事もお付きの侍女も、高価な衣装や豪華な部屋もあったけれどそれだって何一つ自分で望んだことじゃない。
働いて、働いて、働いて。
そうして頑張る程に、皇帝も正妃も周りも優秀な私に何もかも任せて堕落するばかり。
あれだ、典型的な尽す女とダメ男みたいな関係だった。
何故もっと早くに見切りをつけなかった、かつての自分?!
んでもって、気弱で臆病だった割に律儀で真っすぐだった私は皇帝や正妃たちにもことあるごとに苦言を呈していたから疎ましがられたっていうね……。
正妃に至っては嫉妬も大きいかな?
何せ私美人だし。可愛いし。しかも優秀だし?
クソビッチはそんなところも気に喰わなかったらしく何かと私を目の敵にした。
唯一あのビッチが勝っていた所と言えばお色気ぐらいだけど、
私まだ15歳だし!!ピッチピチの少女だし!!
伸びしろはぐぐーんとある筈!!
よく胸には「夢と希望がつまってる」とかいうけどあの女のデカ乳より年齢の割に可愛らしい私のお胸の方がよっぽど夢と希望がつまってるから!!
これから大っきくなる夢と希望に満ち溢れてるから!!
まぁ、そんなこんなで疎ましがられた挙句、断罪された、と。
本気で追放する気なんてなかったんだろうけどね…。
大人しくさせるのに丁度いい、ぐらいの心づもりだったんだろうけど。
お生憎様!!
再び前世を思い出したお蔭で晴れて自由の身です。
ぴっ、ぴぴぴぴぴ。
タイマーが鳴ったのでパックをぺりっと引き剥がす。
つるつるのお肌に触れつつとどめの保湿。
“いつまでも あると思うな 艶とハリ”
そんな言葉が浮かんでくる自分はやっぱり前世はそれなりの年いってたんだろうなーと思いながらおざなりにリモコンを弄る。CMウザーとか思いつつ適当にチャンネルを切り替えてると。
“お取り寄せ絶品スィーツ特集!”
まじでっ?!!
ちょっ、急遽やること出来たから徒然話はまた今度っ!
私はお取り寄せ絶品スィーツチェックしなきゃだから!
31
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
婚約破棄された令嬢の翌日
夢草 蝶
恋愛
浮気相手に本気になってしまったからという、理不尽な理由で婚約を破棄された令嬢のイルカ。
どんなに嫌なことがあっても、次の日は来てしまう。
あまりにも眩しい朝陽を眺め、初等部の時から皆勤賞を続けてきたイルカは、その日、初めて学校をサボった。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる