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雲みたいなふわふわわたあめ
しおりを挟むテキパキと準備は進んだ。
回転釜となる金属容器にローランが魔法で無数の細かい穴をあける。その間にルークとシンは円形の覆いを作成。クラレンスは厨房へザラメをもらいにいき、イザークはわりばし代わりの棒を用意してくれた。
「なんかいっぱい……」
気付けば周囲には多くの騎士たち。
なにやらやりはじめたクラレンスたちを見て、次々に人が集まってきたのだった。
「よっ、なにやってんだ?」
「魔法で菓子を……?ほぅ、面白い」
面白そうだと近寄ってきた顔見知りの騎士たちにとどまらず、普段はあまり関わらない魔法使いまで興味津々です。
その光景に「あ、これは材料足りないな……」と悟って追加のザラメを厨房へもらいに行ったクラレンスなのでした。
「じゃ、はじめよっか」
「はーい!」
手作りわたあめ機を囲み、魔法を発動させようとするローランにわりばし代わりの棒を持ってスタンバイしたクラレンスはうなづく。
「ザラメの量はこれくらいでいいですか?」
回転釜にザラメを投入するイザークには「たぶん」と答えた。
ぶっちゃけ、適正量がよくわからないクラレンスだった。
お家でやるときはわたあめ機の説明書や動画サイトなどの分量に従ってくださいね。
軽く瞼を伏せたローランが小さく口の中でなにかを呟くと、風切り音とともに中央の回転釜がまわりはじめた。
やがて熱された回転釜から白く細いものが噴き出る。
周囲から「おおっ!」とどよめきと歓声が響いた。
手にした棒を覆いの中でぐるりと動かしながらクラレンスはその糸状のものを巻き付けていく。
白く細い糸は何重にも重なり、やがてふわふわとした雲のようになった。
「もうちょっと……と。うん、これぐらいかな?」
満足いく大きさになったところで魔法を止めてもらい木の棒を引き抜いた。
「スゲー、本当に雲みたいじゃん!」
「だね。ふわりん、どんな感じ?」
うながされ、手でちぎってお口へパクリ。
甘い。
砂糖の塊なんだから甘くて当然なのだが……甘くてふわふわでおいしい。
思わずふにゃあと目を細めてしまう甘さなのです。
どうぞ、と差し出せばローランたちも雲のようなそれをちぎって口に入れた。
すっと溶けていく食感に驚きが次々に漏れた。
「甘くておいしい!」
「ふっわふわじゃん。でもすぐなくなる!」
「ルーク、お前は食べ過ぎだ。彼のがなくなるだろう」
「そうですよ。こどものを盗るんじゃありません。また作ればいいでしょう」
あっという間にわたあめはなくなり、ローランとルークが怒られる。
再びローランが魔法を発動してくれ、2個目のわたあめにパクパクとかぶりつくクラレンスのわきでは集まった人たちが俺も!俺も!とわたあめ機に群がった。
「もー!!僕も食べる!誰か代わってよっ!!」
自分もわたあめを作って食べたいローランが抗議の声をあげれば、興味津々で見ていた別の魔法使いが名乗りをあげ、彼もむしゃむしゃと食べる側にまわった。
甘いものが好きなローランも満足そうだ。
「もう1個食べよっと!なんかこれ、ふわりんみたいなお菓子だね。すっごいふわっふわ」
「ふわふわの雲みてたら無性に食べたくなっちゃんですよね。食べれて嬉しいです。ご協力ありがとーございます」
「いいよ。楽しかったし僕もこれ気にいったし。また作ろー」
「ぜひ!!」
また食べたいクラレンスは力強くうなづいた。
ふわふわの雲のような見た目の未知のお菓子は大反響で、わたあめ機は今後も使えるようにそのまま保管されることになりました。
父らをはじめ夜勤で参加できなかった騎士たちや、噂を聞きつけた女性騎士団の要望もあってすぐまた出番を迎えたわたあめ機でした。
ふわふわのわたあめ、おいしいしなんかテンションあがりますよね。
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